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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
旗揚げの章

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第二十二話 アルゴ砦通商友好条約

「なんだ……また私闘(フェーデ)とか言い出すんじゃないだろうな」


商隊長に呼ばれ、苦虫を噛み潰したようなマクスウェルがジュナイブの門にやって来た。


「一番隊、出ろ」


ズザッと音を立て、荷馬車から銃装ゴブリン二十五匹がジュナイブ門前に並ぶ。


「ちょ……なにをする気だ!」


門衛らがその姿をみて警戒体制に入る。


「アムズフェルト家の兵団だ。スカウト、旗を掲げろ」


「キィ!」


小さな小鬼が赤鷲の軍旗を抱えて前に出る。


「な、なんだ!?」


「やっぱり私闘か! いい加減にしろ!」


響き渡るマクスウェルの大声。警戒体制に入る門衛と兵士達。


「違う、友好的な話し合いだ」


「だったら一人で市議会に来い!」


「市内で犯罪者扱いされて拘束されても困る。こいつらはただの護衛だ」


「銃を持ったゴブリンなんか入れられるか!」


「弾は入っていない。門衛に確認させろ。オレ達は商隊を保護し、護衛任務を請け負って来ただけだ」


「マクスウェルさん……彼の言うことは本当です。彼に従うゴブリンらはアルガス山道で襲われた我々を救助してくれました。」


穏便に穏便にと促す商隊長、眉をひそめるマクスウェル。


「別にここで話してもいい。市議会に行くなら護衛をつけさせろ」


「……こんな所で商談なんてできるか、五匹までだ。弾が無かろうと、銃は門衛に預けろ」


「良いだろう。一班だけついてこい、ほかは待機だ」


「キキィー!」


――


大通りに旗を掲げて歩くヴィクトル一行。周囲はざわめき、あちこちの窓から人々が顔を出してその光景を眺めた。


警備の者たちは慎重に周りを囲い、人混みを分けて道を進んだ。


「ゴブリン程度で、ずいぶん騒ぎになるな」


「当たり前だ……前回どれだけ騒ぎになったことか」


市議会に入り、二人と一行は交渉の席に着いた。


「それで、通商条約とのことだが内容は?」


「アルゴ砦一帯の安全保証と通行料の定め、交易税と傭兵の提案だ」


「……山ゴブリンの被害を聞いて売り込みか」


「そういう事だ」


「言っておくが、我々の認識ではお前たちはアルゴ砦に住み着く山賊だ。取引に足る信用がない」


「否定はしない。だがアムズフェルト家の旗を掲げた以上、我々は独立勢力として秩序ある商いをしたい」


「……アルゴ砦は帝国領だろう。反乱分子と取引はしない」


「いいや、あそこは無主の土地(テラ・ヌリウス)だ。順序立てて説明しよう」


ヴィクトルはペンを持ち、さらさらと紙に地図を書き出す。


「まず、アルゴ砦がアムズフェルト辺境伯の領地であったのは誰もが認める所だ。そして帝国がアムズフェルトをバニシュした時点で、アムズフェルト領も帝国領から外れた」


「……道理だな」


「その後アムズフェルト領は帝国軍に占有され、帝国領となった。だが、一部地域は占有されなかった。五年以上だ」


「それが廃墟となっていたアルゴ砦か……」


「故に、今は無主の土地であり、実効支配する者がその占有権を持つ。さらに、これが無法者ならともかく、アムズフェルトは元々の所有者だ。異論はあるか?」


「……ない。だが帝国の反乱分子には違いないだろう」


「なぜだ? オレは帝国に害したことは無い」


「私闘だよ。独立勢力とはいえ、帝国平和令を犯した」


「ライラは即日引き渡されたんだ、私闘前の示談で穏便に解決しただろう?」


「そうはならんさ……私闘を持ちかけた以上、ジュナイブは帝国法に基づき、帝国領内でアムズフェルトを拘束し、訴える事ができる」


ザッと兵士が動き出しヴィクトルを囲い込んだ。唸るゴブリン兵、一触即発の空気が室内に満ちる。


「今度はそちらがオレを脅すつもりか?」


ゆらり、ヴィクトルの周囲の温度があがる。


「……そんな一銅貨にもならないことをするか。むしろ断れば、結局強盗が増える……ただし、一言でも私闘を持ち出せば話は終わりだ」


「承知した、話し合いに入ろう」


和解の合図。両者が手を挙げ、張り詰めた空気がほどけた。


――


「まずはアルゴ砦の通行権と周辺の安全保証をジュナイブに与える」


「大前提ですね。領域は?」


「占有地の外側に線は引けない、互いの視認可能距離だ」


「曖昧ですが、昔から前例ある定めです。いいでしょう」


「通行料は一人一銀、馬一銀、荷馬車10銀」


「……荷馬車が高い。6銀」


「……細かい計算は好まん、商隊は荷馬車のみで10銀だ」


5人乗ればむしろ安い。マクスウェルは頷いた。


「宿泊は通行料と同額。これは荷馬車を数えず人数毎とする」


「いいでしょう」


「それと税だ……アルゴ砦を介する交易5大金貨(リヴル)に付き銀10枚」


「……10が好きですね……辺境の関税に一割は出せません。その半分がいいとこです」


「関税ではない。アルゴ砦とアルゴ砦が仲介する取引に関してのみだ」


「それは手数料では?」


「実情として、アルゴ砦は既に200近い住民を庇護している。買うのはほとんどアムズフェルトだ。一割引き契約だと思ってくれ」


「村規模ですね……他の交易相手は?」


「冬のヤクール族、これから建立する正統派教会と開拓予定の宿場町」


「……教会擁する開拓地ですか、建築資材も売れるし、商品の一割引ならいいでしょう」


「それと、傭兵だ」


本題だと言わんばかりに、ヴィクトルが前のめりに座り直す。


「……ゴブリンですか?」


「山ゴブリンを相手にするならゴブリンの方が役に立つさ」


「……お値段は」


「一人一日二銀、食費別の銃装歩兵。一部隊は5人から25人、指揮監督に騎士または魔導師がつく」


安い、べらぼうに安い。最底辺の冒険者価格なのに銃と騎士付き。危険手当もない。


マクスウェルはこの商談ではじめて息を呑んだ。


「れ、練度は?」


「一班、傾注!」


――ズザッ


五匹のゴブリンが直立姿勢で並んだ。


「立射構え、狙え! 休め、膝立ち構え、狙え!」


――ザッザッザッ


号令に合わせ、一斉に動くゴブリン達。


「彼らは一番歴の長い、我がゴブリン兵団のエリート。スカウト、ディガー、スナイプ、ガード、ジョーカーだ」


「「キキッ」」


呼称を呼ばれ、短く鳴くゴブリンエリート。


門衛に預けた銃を指し、ヴィクトルが続ける。


「銃はアムズフェルト独自のフリントロック銃。実戦は商隊長殿が確認済み。引鉄は無く、反乱、暴発の恐れも無い。いかがかな?」


「……実戦をみる限り、帝国軍レベルかと」


マクスウェルの視線に、商隊長が答える。


「た、貸与期間と活動範囲は?」


マクスウェルは生唾をのみ尋ねた。


「アルゴ砦とジュナイブ間、アルゴ砦以北の山道一帯。ただし戦争、略奪、犯罪には関与しない。弾代は別途請求」


マクスウェルの頭にある天秤が、ガチンと音を立てた。


「十分です」


「商談成立だな」


マクスウェルから差し出される手。ヴィクトルがそれを受け、互いの手が握られた。


「……さっそく条項を正式な書面にまとめましょう。それと……」


「うん?」


「娘にサインをねだられていましてね……このハンカチに名前をもらえませんか?」


「……はい?」


ヴィクトルはその日、ジュナイブで大人気の公演『強盗騎士と聖女の逃避行』の存在を初めて知った。


――


アルゴ砦とジュナイブ市の友好通商条約


一、安全保証

アムズフェルト家が占有するアルゴ砦(旧アムズフェルト領アルゴ砦)は周辺地域(相互視認可能領域)におけるジュナイブ市民およびジュナイブ商隊の安全を保証する。


一、通行権

ジュナイブ市民およびジュナイブ商隊は、アルゴ砦およびアルガス山道を安全に通行する権利を有する。アルゴ砦は正当な通行料を支払う者の通行を妨げないものとする。


一、通行料

アルゴ砦を通過する者は通行料として

人一人につき銀貨一枚、

馬一頭につき銀貨一枚、

商隊においては荷馬車一両につき銀貨十枚、

を支払うものとする。


一、宿泊料

アルゴ砦内に宿泊する者は一日につき

人一人銀貨一枚、

馬一頭銀貨一枚、

を支払うものとする。


一、交易税

アルゴ砦およびその住民との交易を行う者は、取引額五リヴルにつき半リヴル(通称一ダリヴル)の税を支払うものとする。


一、傭兵の貸与

アルゴ砦はアルゴ砦―ジュナイブ間およびアルゴ砦以北アルガス山道において、戦争・略奪を目的としない護衛および傭兵の任を請け負う。


費用は傭兵一人につき一日銀貨二枚、食費弾薬は別とする。傭兵隊は五人から二十五人の銃装兵を一部隊とし、別途一名の騎士・魔法使い相当の指揮官を持つ。


一、私闘の禁止

本条約をもってアルゴ砦とジュナイブ市は友好通商関係を結び、相互の私闘を禁ずる。

お読みいただきありがとうございます。

次回は明日の夜、投稿予定です。


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