表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
旗揚げの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/26

第二十一話 山ゴブリンの襲来

――グモー! グモーー!!


いつも大人しいヤクーが、砂煙を上げながら凄い勢いで草原を走り回っている。


「なんだ……?」


「怒ってるみたいですね……」


「スカウト! 鐘を鳴らせ、城壁に招集だ!」


「キィーー」


――


砂煙の向こう、北の山道から今度は見覚えのある商隊が降りて来る。


「先日通過したジュナイブ商隊だ……なにかあったのか?」


「ヴィクトル様! 商隊がゴブリンに追われてます!」


砂煙で数がよく見えない……赤黒い肌のゴブリン……あれが、山ゴブリン?


「大変です、ヴィクトル様! ちっちゃいランディさんが沢山います!」


「なんだと……なんて恐ろしいんだ」


本人が聞いたら怒りそうだけど、肌の色がそっくりだ。


「ヤクーが暴れてるのも、大型犬に乗ってる山ゴブリンに襲われているみたいです……」


「……ゴブリン騎手(ライダー)は厄介だな……もしかして、ヤクーを利用してるのかも知れん」


「利用ですか?」


「人間でも起きてるヤクーに手を出そうなんて思わない。襲うなら夜、寝てる時にこっそり襲うはずだ。商隊を止めるために、暴れさせたのかもしれない」


「そんな……野生のゴブリンに、そんな知能が?」


そんなのまるで、ゴブリン兵団の作戦のよう。


「いずれにせよ、落ち着くまでこちらからは手を出せん。ヤクーに踏み潰されるのがオチだ」


「せめて、すぐに砦に入れてあげましょう」


「あぁ、城門に移ろう。ライラも巴組と合流するんだ」


「はい!」


――


ゴブリン兵団が構え、砦に近づく商隊に合わせて城門を開く。


「た、助けてくれーー!」


ボロボロと積荷を落としながら逃げる商隊。何匹かの山ゴブリンが幌に飛びついたまま、荷馬車が城内に逃げ込んだ。


「今だ、一斉射撃! 騎手を狙え……!」


更に追い立てる山ゴブリンの集団に向けて、ゴブリン兵団の火砲が炸裂する。


――ドバババパンッ!


城壁ではブランドルが、城門ではヴィクトルが、熟練兵の一番隊と二番隊の集中砲火で敵を蹴散らす。


次々に銃に撃ち抜かれ、落ちるゴブリン騎手。逃げていく大型犬と他のゴブリン達。


三番隊が門を引き、ガコンと音を立て閉じる城門。砦内では、入り込んだ山ゴブリンに巴組が向かった。


「「キィーーー!」」


五人一組でブンブンと薙刀を払い、一匹ずつ壁際に追い詰め、突き刺して行く。


山ゴブリンに怯えていた商隊はポカンと口を開け、その勢いに驚愕していた。


「乱戦だと銃が使えないから……こうなると頼りになるな」


一刀のもと、最後の山ゴブリンを刃先で打ち据えるトモエの勇姿に、ヴィクトルもゴクリと息を呑んだ。


――


「汝にエセリエルの加護あらん……治癒の奇跡を今ここに」


ライラが治癒を唱え、負傷した商隊の人々を癒していく。


「ありがとうございます……本当に助かりました」


「一体、何があったんですか?」


「山ゴブリンに襲われたんです。最初は谷で石を落とされ、逃げようとした先でヤクーが暴れ出して……」


「足を止めてる間に、乗り込まれたか」


「はい……傭兵も雇っていたんですが、全員やられました」


「帰りの通行料はいい。今日はゆっくりしていけ」


「いえ……被害額が大きく、急ぎで帰らなければ。可能であればジュナイブまで護衛を雇えませんか?」


「……わかった。見ての通りゴブリンだらけだが大丈夫か?」


「そのゴブリンに命を救われたのですから……是非もありません」


「わかった、オレが率いて護衛しよう。ライラ、ヤクール族が来たら応対を頼む」


「……かしこまりました。お気をつけて」


――


砦では、ユールが傷ついた一頭のヤクーを連れてやって来た。他のヤクール族も商隊が落とした積荷を、いくつか持ってきてくれた。


「ご迷惑、おかけしました。山ゴブリン、大丈夫でしたか?」


「はい、私達は大丈夫でしたが……」


「私たちの(クル)も、たくさん壊れました。直すの大変です」


「ケガ人がいたら、こちらで治癒します」


「ありがとう……でも、ヤクー先です。まだ遠くに行ったヤクーを迎えに行かないと」


「……わかりました。ヤクーは骨を接いだら砦へ連れてきてください。それと……ブランドルさん」


「なんですかな?」


「桶に水をください。私が治癒の水(ポーション)にします」


「ホッ……了解ですじゃ」


目を丸くしたブランドルが言われるまま桶に水を用意し、ライラが水を骨の短杖でかき混ぜはじめた。


「ここに在りしは天使の涙……治癒の光よ、清らかなる水に満ちよ……」


ライラの祈りとともに、水が淡い輝きを放ちはじめる。


本当に骨は樫と比べて魔素の通りがいい。見た目が魔女っぽいのが難点だけど……。


「これをヤクールの皆さんに。半刻もせず光は失われますので急ぎでお願いします」


「これは……治癒の水ですか? こんなにあったら、クルが買えますよ」


「半刻も持たないクルなんて、住みたくないでしょう? 気にせずお使いください」


「……ありがとう、エセルの神に感謝します」


ユールは見様見真似でエセルの祈り手をかざし、感謝の言葉を送った。


――


日が落ちる頃、商隊は要塞都市の門までたどり着いた。


「無事、ジュナイブまでたどり着いたか。何事もなくて良かった」


「ありがとうございました。護衛と山ゴブリンを追い払ってくれたお代を……」


ジャラリと革袋を取り出す商隊の男。


「今はいい、被害が大きいんだろう? それより、市議会のマクスウェルに話を伝えてほしい」


「……どういったお話でしょうか?」


「ジュナイブとアルゴ砦で、通商条約を結びたいと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ