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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
旗揚げの章

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第二十話 アムズフェルトの軍事機密

ヴィクトルが高炉に炎を点火していき、ブランドルがボイラーに水を注ぐ。ランディルが触媒を握ってボイラーに熱を送り、魔導蒸気機関が起動していく。


ランディルが送風機をセットして、何段にも重なる溶鉱炉にむけて空気を送り込む。


――ブォォォォ


内部は真っ赤に燃えたぎり、ライラは離れた位置からでも感じられるその熱量に驚かされた。


やがてランディルが炉の横穴を開けると、中からドロっとした金属が流れ出していく。


「それが鉄になるんですね……」 


「あぁ、まだ鉄の元ってとこだな。ここから製鉄して、更に加工して、ようやく武器になる」


「よく一人でそんなに色々動かせますね」


ヴィクトルやブランドルも手伝いはしたが、点火と水を入れるぐらいで、作業はほとんどランディルだけだった。


「俺様は一人の方が楽だ。誰かと合わせるのが性に合わなくて、こんなとこまで来ちまったからな」


「……でも人手が欲しいと」


「正直、魔法の水だけあればいいから坊や爺でも構わないんだが、いないと蒸気機関が止まってイライラすんだよ」


ランディルが葉巻を立てて、煙をスパスパくゆらせる。


「私も水が使えればよかったんですが……」


「ライラ様は水を学んでいないので? 得意不得意があるとはいえ、魔力があれば使えますぞ」


教育係の目が光る。


「すいません……古式派は他の属性を学ばないんですよ。治癒以外に魔力を使うと、必要な時に足りなくなるので」


「なんとも徹底しておりますなぁ……」


――ペタ、ペタ


後ろから近づく、素足の足音。


「キィー、キィキィ」


「あら、トモエどうしたの? ここは危ないから入っちゃダメよ」


熱くて扉を開けていたから、トモエが入ってきてしまった。


「キィー」


つぶらな瞳で、ランディルを見つめるトモエ。


「あぁ……ホブゴブリンみたいだもんね。あの人」


「ランディ、トモエがお前のことを気に入ったみたいだぞ」


ハハハと茶化すヴィクトル。


「んじゃ、夜にでも来るように伝えな」


「キキィー!」


「ラ、ランディさん!?」


「なんだ?」


「トモエはゴブリンですよ!?」


「あん? 病気持ちでもないんだから構わねぇよ。ちゃんと宿したら庇護してやる」


エセル教徒としてはそんなこと……あれ? 庇護を与えるなら問題ないのかな?


「魔物は悪しき者とされているけど……原典にその記載はなかったはず」


「聖女派は魔物を悪しき者と定義してるけどな。ところでライラちゃん、そのメスゴブリンは悪しき者か?」


「それは……違うと思います」


「なら、問題ないだろ」


ううん……ほんとに気にしてなさそう。


「同じエセル教でも結構違いがあるんだな。とりあえずランディ、水使いは一人招集しておこう」


「おう」


「それと……今後こちらも銃に対抗する手段が欲しい」


「……大砲か?」


「いや、大砲はダメだ。弾に使う金属も、火薬も用意できないし運用も危険だ」


「そうだろうな。どちらにせよここの設備じゃ大物は無理だ」


「その大物が欲しいんだが……こう、何人か中に入れる鉄の猪みたいな乗り物で……」


「なんだそりゃあ? どうやって動くんだよ」


「こう……足部分が歯車みたいに回って……」


ヴィクトルが不思議なイメージを身振り手振りで伝えようとしている。私にはサッパリ想像がつかない。


「……鉄の猪ねぇ」


「他には、火薬を積んで回転する鉄の歯車とか……」


……なんだか、すごく危険そう。


「わーったわーった。そのうち作ってやるよ」


「ヴィクトル様は発想が豊かなのですね」


「あぁ、あんまりうまくいったことはないが、このどんぐり弾はランディも絶賛したぞ」


「形を変えただけで威力も精度も桁違いに上がったからな……これがなきゃ、ゴブリンに銃なんてとても持たせられんぜ」


「……じゃあひょっとして、そのどんぐり弾が……」


「あぁ。この弾が、アムズフェルトの軍事機密だ」


「銃じゃなくて弾に秘密があったんですね……」


――


アルゴ砦に、風の鳥便が届く。


高価な封蝋がされた、メディスン家からの手紙。


ライラはその手紙を読んで……少しだけ泣き、一枚だけを残して暖炉に焚べた。


「……どんな内容だったんだ?」


「謝罪と、言い訳ばかりでした。どんどん借金が増えて、喜捨は減って、それもこれも、民が信仰を捨てたからだって」


「……そうか」


「結納金を受け取り、正式にアムズフェルトとの結婚と教会の支援は受け入れてくれました。でも、奴隷契約は解けないと」 


「まぁ、仕方ないさ」


「ごめんなさい……せっかくの資金を無駄にしてしまって」


「無駄なんかじゃない、メディスン家が少しでも力を取り戻せば、きっとオレ達の力になる」


「……そうだといいんですが」


「ロンドミルなんて気にするな。オレは二度とライラを奪わせない。メイドもトモエも、みんなで守る」


「ヴィクトル様……私は、守られるだけのお荷物はイヤです」


「そうだな。我が家は人手不足だ! ライラにもバリバリ働いてもらうぞ!」 


「……はい!」


――ライラの帳簿


人件費 水使いの増員

新規雇用予算 月6ダリヴル(日当2ソル)

初年度契約金 60ダリヴル(休暇60日)

残金338-60=278ダリヴル

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