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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
旗揚げの章

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第十九話 無くなる食料、増えないお金

「ヴィクトル様、そろそろ食料が足りなくなります」


「む……そうか。冬だとゴブリンもろくな食い物ないもんな」


芋やどんぐり、狩猟などで多少は自給自足をしてるとは言え、本格的な冬となると食料はドンドン消えていく。


冬は草原にヤクール族が来るおかげで、新鮮なミルクや肉を購入できるが、収入がない今それらの品は贅沢品だ。


「とりあえず、またノル村長の所に行こう。他の農村もあと二つぐらいは巡れるだろう」


「はい、お供いたします!」


ライラはユールから贈られたふかふかのヤクー毛皮の外套に身をつつみ、出発した。


――


荷馬車に少しだけゴブリンを連れ、ノラ村長の所へ。


「ではお約束通り、50人の一月分の食料品です。市場価格は1500ドニですが、ゴブリン退治のお礼もありますので1200ドニで」


「ヴィクトル様、100ソルなので10ダリヴルです」


「うん、わかりやすくて助かる」


「ダリヴルとは……?」


首を傾げるノラ村長。


「リヴルの半分で10銀貨だ。今後はその単位で購入させてもらいたい」


「はぁ……商人のようですね。わかりました、控えておきます」


「今日はそれだけだな。アルゴ砦に旗揚げしたから、また用があれば使いをよこしてくれ」


「おぉ……! それはおめでとうございます。以前、代官が先代様を探していましたが、大丈夫でしたか?」


「うむ、小競り合いがあった程度だ。ヤクール族が来ているので、交易したければ一度見に来るといい」


「山の治安が良くなれば交易もしやすくなります。是非お伺いさせていただきます」


ノラ村長は深々と礼をし、ヴィクトルらを見送った。


他の二つの農村を巡り、もう10ダリヴルの食料。1200ドニ相当……40人×30日分の食料を購入した。


「これでとりあえず90人分……自給自足もするゴブリンなら半分で足りますから、一月はもつと思います」


「なるほど……多少の値引きがあっても、一月で20ダリヴルもかかるのか」


「最低でも月30ダリヴルの収入が欲しいですね」


「積荷の強盗は……さすがに手仕舞いしないとな。関所の通行料を決めるとしよう」


「ユールさんは銀貨一枚って言ってましたよね」


「1人1銀、荷馬車10銀でどうだ?」


「今のところ商隊しかみてませんが……来ても週に一隊ぐらいですよ」


「月に荷馬車12台としても、12ダリヴル……だめだ、全然足りない。早めに山ゴブリン討伐に行こう」


やっぱり傭兵をしないと暮らしていけないみたい……でも――


「山ゴブリン退治したら……またゴブリン増えますよね……?」 


「う……」


コッコッと緩やかな足音が近づく。


「ライラ様がわしと同じ懸念を持っていただけたようでなによりです」


「ブランドルさん! やっぱりこれ以上はまずいですよね!?」


「当然です。ただでさえポコポコ増えて、砦内もゴブリンだらけ。いい加減ゴブリンであふれますぞ?」


「わかったわかった……今後は最小限に留める。どうせ依頼も無く退治しても金にならん。それより、いい収入案はないか?」


「そもそも強盗するから通行する商隊が減っていたのです。最も利用するジュナイブとの関税を制定し、山間の護衛を売り込むがよろしいでしょう」


「ジュナイブか……この間フェーデをかけたばかりだし、交渉し辛いな……」


「……先日、結納金を教会へ託すために行きましたが、そんなに悪い噂にはなってないようですぞ」


「そうなのか?」


「まぁ……ご自身の目で確かめるがよろしいでしょう」


意味深に片目を閉じるブランドル。


「あの……温泉は収入源になりませんか?」


「うん? 温泉か」


「通行料一銀貨、泊まりなら温泉付きで二銀貨だったら、一般の方も来られるんじゃないかなぁって」


「悪くない提案だし、相場も合ってるとは思うが……」


「ゴブリンのいる温泉で寝泊まりしたい人が、どれだけいるかですなぁ……」


……そう言えばそうだった。


「まぁ、宿施設はあっても良いでしょう。どうせ教会を作るのですから、宿場町を区画しておきましょう」


ブランドルさんはなんでもできるなぁ。


――


「と言うわけなんですが、ランディさん、何かいい考えありませんか?」


「あん? 金勘定なんか俺様に聞いてどうすんだよ。あるだけ一晩で使い切るぞ」


まぁランディさんがお金に細かくなると、財政に負担がかかるのでそのままでいてもらおう。


「ゴブリンが多くて、まともな商いができそうにないんですよ……」


「……そもそもアムズフェルトは根っからの軍閥だ。商いなんてやっても商人に負ける。そうやってどんどん貴族は衰退していったんだからな」


「じゃあどうしたら……」


「平和な今の世の中じゃ、貴族や騎士、魔法を使える連中なんてのは、魔導蒸気機関の燃料でしかねぇ。ライラちゃんがポーションの材料だったみたいにな」


「燃料と……材料ですか……」


「そうさ、水の使い手がボイラーに魔素の通りの良い水を貯める。火の使い手が触媒を通して水を沸かす。そして蒸気機関を動かすんだ。商人にとって魔法なんて、ただの燃料だぜ」


ランディルがレバーの様な棒を握り、熱を送る。奥のタンクから蒸気が溢れ……ガシャンガシャンとプレス機が動き始めた。


「そう言う仕組みの機械を、魔導蒸気機関って言うんですね」


「まぁ、ライラちゃんならそれこそポーション作って売れば良いんじゃねえの?」


「建立するのは古式派の正統教会なので……販売はしないですね」


大天使から与えられた奇跡の力は、売り物じゃない。善なる人々のための施しでなければいけない。


「……清廉なのはわかるが……古式派はそう言うとこが、お硬いんだよなぁ」


「まぁこのあたりでは欲しがる人も限られてますから……」


「そんなら、信者をたくさん集めるしかねぇな」


「信者ですか?」


「せっかく教会つくるんなら、巡礼地でも作っちまいな」


「巡礼地……温泉……それ、いいかもです!」


――ライラの帳簿


一月分の食費20ダリヴル

残金358-20=338ダリヴル


明日も三話投稿予定です。

続きが気になる方はブクマお忘れなく!


★★★★★評価・感想おまちしております。

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