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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
出会いの章

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第十六話 追放騎士の旗揚げ

「ん……」


窓から陽射しを浴び、パチンパチンと鳴る留め金の音でライラは目を覚ました。


「起こしてしまったか。まだゆっくりしていろ」


上半身裸のヴィクトルが、肌当てから順に鎧を着込んでいく。


「今日は、どこかへお出かけですか?」


「いや……だがいつ来客がくるかもわからんからな」


来客とは敵か味方か……どちらかと言えば敵だろうと、ライラは思案した。


「待っていればメイドがくる。今後は砦でも彼女と過ごせ」


「……はい」


迂闊にも砦内で拐われた自分を心配しているのだろう。昨夜もずっとヴィクトルが側にいた。


一緒にお風呂に入り、一緒の部屋で眠り……そして――


「では行ってくる。オレが出たら鍵をかけるんだぞ」


宝物を愛でるように、ヴィクトルがライラの亜麻色の髪を撫で、頬首にキスをした。


バサリ、外套を翻しヴィクトルが行く。ライラは言われた通り部屋の内鍵をかけた。


「さて……」


メイドが来る前に、軽く部屋を片付ける。ヴィクトルはせっかちだから結構がさつだ。服もよく床に転がっている。


――コンコン


鍵を開け、招き入れる。


「おはよう、メイドさん」


「キィ?」


「今度から私もこちらで眠るわ。着替えが欲しくて、持って来てほしいの。それと、一緒にお風呂へいきましょう」


「キィー!」


メイドはニコニコしながら、着替えとお風呂に付き合ってくれた。


――


「さて、それじゃあメスゴブリンの自警団を作ります」


「「キィーー」」


子なしで元気のいいメスを20人。子を宿してる者もいるが、動けなくなるまでは本人の判断に任せる。


「ヴィクトル様がちょうどいい武器をランディさんに頼んであるらしいので、受け取りにいきましょう」


メイドが軽く通訳し、ぞろぞろと鍛冶場へ向かう。なんだかもう強そう。通り過ぎるオスもびっくりしてる。


「ランディさーん。武器を取りに来ましたー」


「おう、これだ」


木製の細い柄に、丸っこい刃先。何よりも、その長さに驚いた。大柄なランディさんよりも長い。


「こ、こんなに長いんですね」


「まぁほとんど長槍だな。だが刃先は反りがあって払いが強い、見てな」


――ブン、ブン、ブォン


ランディが片手で左右に振るだけで、速さと重さが伝わってくる。


「突いて良し、払って良し。戦うときは無理せず足下を狙うといい。正直俺様でもこれ20本には勝てないだろう」


「に、20本ないと勝てないんですか?」


「10なら飛び込める」


ダメだ、この人は参考にならない。


「残りは刃先だけだ。棒と綱はその見本を参考に自分たちで作ってくれ」


「わかりました!」


ライラはその長柄武器《巴形薙刀》を受け取り、刃先の重さにふらふらして、コケた。


――ストン


腕組したランディがのけぞり、葉巻の先が切れた。


「……お前は持つな」


「……はい」


見本はメイドが受け取り、メス達が刃先を受けとった。


――


メス達が器用に棒を削り、柄の先を割り、刃先を差し込み、綱で結んでいく。


短くするものもいるが、みな熱心に武器づくりに勤しんだ。


特に一匹のメスがサッと作り上げ。早速外でブンブン振り回している。


「彼女は確か……」


よく覚えている。産まれることができなかった子。その子を泣きながら食らった母。


暗く鋭い眼光、逞しく大きな体。武器すら持てない私より、きっとずっと強い。


「彼女に呼び名はあるのかな?」 


メイドに指差し尋ねるが、首を振った。


 「じゃあ……女戦士だから……アマゾネスとか」


「……トモエなんてどうだ?」


「ヴィクトル様! トモエとは?」


「あの武器をみていたら、なんとなく頭に浮かんだ」


「いいと思います。じゃあトモエに自警団の隊長を任せてもいいでしょうか?」


「ああ、頼りになりそうだ」


トモエと名付けられたメスゴブリンは、それをとても喜んだ。暗かった瞳に光を宿して。


――


「よし、全員傾注! 一番隊、二番隊、三番隊、三列横隊! 巴組はライラに付け!」


ヴィクトルのよく通る声が響き、広場にゴブリンが整列する。


「これを揚げれば、もう坊ちゃんとは呼べませんな」


ブランドルが装飾された布を手に感慨深く呟く。


「やれやれ……やっとか」


「本当によろしいのですな? これを掲げれば帝国も黙っておりませんぞ」


「だからこそだ。我らを消し去った者たちに、我らを見よと高く掲げよ」


頷くランディルが角笛を吹き、ブランドルとスカウトが旗を揚げて行く。


炎を背に羽ばたく鷲。アムズフェルト家を示す赤鷲の紋章旗が大きくはためく。


「ヴィクトル様は、帝国から領地を取り戻すおつもりですか?」


「いいや……そんな事をしても、誰も幸せにならない。領民はもう戦争など望んでいない。……オレはこの無主の地(テラ・ヌリウス)に国を興す。今度こそ、誰にも奪わせないために」


この若者が我欲のために戦争を起こすつもりなら、ライラは別れを告げるつもりだった。それだけは、彼女の許せることでは無かったから。


「……もう後戻りはできない。ライラ、まだオレについてくるか?」


「どこまでも、お供いたします」


ライラは真っ直ぐに応え、ヴィクトルは頷き、抱き寄せた。


――触れ合う唇は、覚悟の契約。


その日、どの国にも属さない独立勢力が、アルゴ砦で旗揚げした。


――


私闘(フェーデ)の詩だと……?」


「はい、要塞都市から恋人を助けるためフェーデを申し込む若い騎士の詩……ロマンスですわね」


「……一昔前ならありふれた詩だろうに、なにを今さら」


「剣も魔法も竜も姫も、みんなお金で買えてしまう今だからこそですわ。社交界でもこの詩の話題で持ちきりでしてよ」


「確かにな、ジュナイブが手に入るなら喜んでお前を売りに出そう」


「まぁひどい。お兄さまは騎士の風上にも置けませんわ」


「矜持で国家は成り立たん。だが、舐められるのも気に食わん。帝国法を反故したその騎士の名は?」


「確か……ヴィクトル・アムズフェルトと」


「かつての軍閥アムズフェルト家……なるほど、追放騎士(バニシュドナイト)か」

第一章完結!

次章からはいよいよ本格的な内政スタート!


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