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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
出会いの章

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第十一話 異国の狂戦士

――ガィィィン!


鈍い音が響き、投擲斧がリーダーの剣に弾かれる。剣を持つ手が衝撃に耐え切れず、カランと落ちる。


すかさず詰め寄る狂戦士(ベルセルク)に怯み、リーダーは鍛冶場の奥へ逃げ込んだ。


「チッ、腰抜けが」


斧を拾い上げる半裸の背中に、流れ落ちる鮮血。ライラの目に一筋の深い切傷が見えた。


「あの、背中にお怪我が……」


「あん? これぐらい舐めときゃ治る」


男は怪我もライラも気にせず、敵を追って中に入った。


「そこまでだ! 動くな!」


拾った銃を構え、警告を発する冒険者の男。


狂戦士はその警告を鼻で笑った。


「そら、撃てよ」


「この……なんだ、引鉄が、ない?」


「バカじゃねぇの? そもそも鍛冶場に火薬なんて置いてるわけねぇだろ」


狂戦士が壁掛けの銃を一挺取り出し、隠し岩の中から弾を取り出し、構える。 


「銃ってのは、こう使うんだよ」


狙いすましたまま、葉巻の先が導火線にかかる。


――パァン!


革鎧の胴体に穴が空き、男が崩れ落ちた。


銃を斧に持ち換え、半裸の男がトドメに向かう。


「待って……もう、殺さなくても……」


「ダメだ、コイツは中を見た」


――ズドン


躊躇なく、斧が男の首を断ち切った。


「お嬢ちゃんもだ。もう生かして帰せない」


半裸の男が踵を返し、冷徹な声で歩み寄る。


「私は、帰りません……今は此処に住んでいます」


一拍、男が煙をくゆらせる。


「……爺の名前は?」


「ブランドルさん……ブランド・ファイエルです」


男の眉と口角が上がった。


「あんたの名前は?」


「ライラ・メディスン……今は、ただのライラです」


「よし、俺様はランディル。ランディでいい」


ガシリと、ライラの手が握られた。


「はい! 早速ですがランディさん、背中を向けてください」


「あん?」


ライラから目を離さないまま、ランディは身を捩らせた。


「汝にエセリエルの加護あらん、治癒の奇跡を今ここに……」


ランディの傷口をなぞるように、淡く光るライラの手が滑る。


「うお! 戦乙女(ワルキューレ)の光!」


「ワルキューレ?」


「気に入ったぞ! ライラ、俺様の嫁になれ!」


「え、えぇ!?」


電光石火の求婚にライラが狼狽えている頃、外の銃声は完全に止んでいた。


――


「じゃあ……改めて紹介する。遠く北の大地ノルドの民、鍛冶師のランディルだ」


「おう」


テーブルを囲む家臣団。ヴィクトルが困り顔で狂戦士の男を紹介した。


「よろしくお願いします。戦乙女とは、そちら国の信仰ですか?」


「そうだ。だが信仰と言うより神話だ。俺様はこれでも熱心なエセル教徒だぜ」


「まぁ! それならもっと早くお会いしたかったです」


良かった。エセル教なら異国人でも安心だ。


「いやーこれはもう運命だな。ヴィー坊も人が悪いぜ。さっさと連れてこいよ」


「いや……まぁ防衛上な……」


なんだかヴィクトルの歯切れが悪い。


「ちなみに宗派はどちらですか?」


「もちろん聖女派だ」


「あ、神聖教会の方でしたか……」


神聖教会の聖女派……聖女ミラの科学治癒理念を元に信仰を再定義した革新派(プロトテスト)の一派。


「……すいません、正統教会……古式派(カトリスト)です」


「あー……お局様か」


メディスン家はその理念を受け入れず、古いやり方に固執した原典主義の古式派正統教会。


結局、信仰に固執して信仰を失い、それに伴って喜捨が減り没落した。


「まぁ気にすんなよ。聖女派はちゃんと古式派を敬ってるから」


「それが尚更キツイんですよ……」


正統教会にとって神聖教会は姉妹、聖女派は姪っ子みたいなものなのだ。ただ、出来すぎた天才の姪。


「……まぁ親睦はあとで。それより、侵入者の件すまなかったな」


ヴィクトルが話を切り替え、先に今後の対策を考える事になった。


「侵入路はだいたい予想がつくが、どうしたってこんな穴だらけの砦では入られる」


「今は少しずつ穴を塞ぐしかありますまい」


「大扉のかんぬきが鉄製なら、抜けられなかったと思います」


ライラの提案に、メイドも大きく頷いた。側仕えしてるだけあって、聞き取りがほとんど完璧だ。


「わかった、それは任せとけ」


ランディが応える。


「後は警備の増員だな。今後は巡回のゴブリンも増やしていこう」


「武器を持たせない方針はどうされますかな?」


砦内の治安を懸念するブランドル。


「そこだな……監督外で武器を持たせると、爺やライラに危険が生じる」


「わしはなんとかなりますが……」


「……では、メスゴブリンを武装させてはどうですか?」


メスも筋肉質だし、私よりはずっと戦えるだろう。


「……ふむ」


「良さそうですな。 メスは今も料理してるし基本大人しい。オスもメスからは奪わんでしょう」


「よし、女ゴブリン自警団を作ろう。リーダーはライラだ。頼んだぞ」


「え! 私ですか?」


メイドゴブリンがにっこり頷いた。彼女が協力してくれるなら、できる、かなぁ……。


「がんばります……」


「話はまとまったな。それじゃヴィー坊。ライラを俺様にくれ」


「なッ」


「……本気だったんですか」


「もちろんだ。侵入者撃退の褒美だよ。ゴブリンルールでさぁ」


「ライラをゴブリンと一緒にするな! だから嫌だったんだよお前と会わせるの!」


「なんだと!?」


「どうせライラも『戦乙女だ』とか、『なんて高貴なんだ』とか言って口説かれたんだろ?」


「戦乙女とはまぁ……高貴とは?」


「肉付きが良いってことだよ! ノルド人はみんな好きだぜ!」


「……なるほど。ヴィクトル様もそう思ってらしたんですね?」


ライラは静かに怒りを込めた。


「いや……ライラは貴族だから、高貴だって意味だよ」


「求婚はお断りします。元より、私は人を容赦なく切り捨てる人を、好きにはなれません」


「……ライラ」


ランディに言ったつもりだったけど、ヴィクトルにも刺さってしまったらしい。


「ま、古式派はそうだろうな。人を罰する事すら好まないんだろ?」


ランディは、本当にエセル教に詳しいようだ。


「……私は、必要ではあるのだと思います。古式派が忌避する罰も、ミラの治癒法も……呪殺の力も」


ライラは懐に手を伸ばし、尖った骨をグッと握りしめた。

気になる人用の宗教設定


エセル教について

治癒の力と神の教えを広めた大天使エセリエルを信仰する宗教の総称。


エセル正統教会:教皇擁するイゼル帝国の主宗教。大天使エセリエルのみが信仰の対象。古式派カトリストと革新派プロトテストが対立している。


エセル神聖教会:イゼル帝国と海峡を隔てたエセル神聖王国の主宗教。火水風の三天使と大天使エセリエルが信仰の対象。ほぼ全員が革新派だが、聖女ミラを信仰の対象に加えようとしているのが聖女派。


お読みいただきありがとうございます。

次回は夜、投稿予定です。


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