第2章 白紙の地図と最初の戦い
迷宮第1層、《旧商人層》。
石と苔の混ざる湿った空間を、3人の少女たちは慎重に進んでいた。
「この先が……地図にない区画ね。記録抜けの空白」
リュナが羊皮紙の端を指でなぞる。
瓦礫の先に広がる広間は、すでに天井の大半が崩れ、隅々に暗がりが潜んでいる。
空気がどこかぬるりと重たい。
それは“いる”という気配の証。
「構えて。来る——!」
コボルト5体。
その吠え声とともに、棍棒や石斧を振りかざしながら突進してきた。
「さ、サーシャ、前! 正面止めて!」
リュナが叫ぶ。
だが、サーシャの足が一瞬、止まった。
(怖い……動けない……)
目の前に迫る1体の獣の目が、爛々と光って見える。
「——っ!」
サーシャは息を詰め、震える足に力を込めて前へ踏み出す。
地面を蹴る感触。両手に伝わる剣の重み。
咄嗟に剣を横に構え、突っ込んできた1体の腕を叩き落とした。
「やった……?」
だが別のコボルトがその背後から迫る。
「そっちはまだ——!」
リュナが回り込むように滑り込む。
斜め上から鋭い一閃、腰の剣がコボルトの肩を斬り裂く。
「まだ2体! 囲まれる!」
「……いい」
フィオナがぽつりと声を落とす。
その声はさっきまでの無口さとは違って、妙に滑らかで、抑揚があった。
「闇の帳よ 眠りへと誘え――《スリープ》」
青白い霧が広間に満ち、残る3体のコボルトが一斉に膝を崩すように倒れ込んだ。
棍棒がカラカラと転がる音だけが残る。
「……終わった、の?」
サーシャは息を切らしながら辺りを見渡した。
「確認して——」
リュナの言葉が終わる前に、倒れた1体が、うめくように棍棒を振り上げた。
「っ——!」
サーシャの前にいたフィオナが、反射的に彼女の腕を引いた。
「わ——っ!」
その瞬間、リュナの剣が再び唸った。
コボルトの動きを完全に断ち切るような一撃。
血の気が、もう一度空気に混じる。
「……動く前に殺せないと、こうなる。まだ甘いわね、私たち」
数分後。
フィオナが静かに杖を下ろし、リュナが敵の死体の横から小さな木箱を見つけた。
「……出たわね、宝箱」
剣の鞘でつついても、罠の気配はない。
「オープン。さて……っと。金貨10枚と、銀鉄の小剣」
「さっきの……私が、もらっていいの?」
サーシャが、おそるおそる問う。
「一番突っ込んだのはあんたでしょ。剣くらい持って帰りなさいよ」
「……ありがとう、ございますっ」
手に剣を受け取り、サーシャはようやく膝をついて座り込んだ。
「ちょっと、そこまで気ぃ抜かないでよ。……Dランクでも油断したら、死ぬわよ」
そう言いながらも、リュナは水筒を手渡した。
「……ん」
隣で、フィオナも無言で彼女にもうひとつの水袋を差し出す。
サーシャは戸惑った顔のまま、それを受け取って、三角に笑った。
リュナが羊皮紙を取り出す。
「……ここに×ね」
そう呟いて、ペンの先で小さく印をつける。
彼女の肩越しに、フィオナとサーシャが無言で地図を覗き込んだ。
それが、三人と迷宮の最初の“記録”となった。
——次に地図に印を刻むとき、同じ余裕で笑っていられる保証など、どこにもなかった。
イメージ用の パラメータ設定 となります。 3人ともチート級の潜在能力です
文中では使わない予定です。
リュナ LV1
HP51 MP51
STR:17
MAG:17
スキル、魔力
<剣:S><光:S><風:S><耐性:風S 光S 闇S 猛毒S 睡眠S 麻痺S 魅了S 石化S 即死S>
<剣と魔法の2回行動>
攻撃力:48 防御力:9
サーシャ LV1
HP:120
STR:40
MAG:0
スキル、魔力無し
STR:50 防御力:14
フィオナ LV1
HP45 MP57
STR:15
MAG:19
スキル、魔力
<杖:A><火:S><氷:A><風:B><土:A><光:D><闇:S><耐性:火S 氷A 風B 土A 闇S 猛毒S 睡眠A 麻痺A 魅了S 石化S 即死S><魔法の2回行動>
攻撃力:35 防御力:7
----------比較用------------
普通の冒険者 LV1
HP42 MP15
STR:14
MAG:5
スキル
<剣:C>
攻撃力:31 防御力:10
普通の冒険者 LV5
HP75 MP27
STR:25
MAG:9
スキル
<剣:C>
攻撃力:44 防御力:12
コボルト
HP50
攻撃力:20 防御力:2
<耐性:火に弱く倍ダメージ>
スキルは、S>A>B>C>Dの順に強いです