第7話 お嬢様、ジャージは大丈夫ですか?
「あのお嬢様、マジで今日ここに泊まるんすか?」
「当然。それともこんな夜更けにレディひとりで出歩けと?」
その方が警察に保護されますよ、とは言えまい。こちらの心配を他所に、お嬢様が諭吉を6枚ほど、俺に渡してきた。
「1枚では?」
「宿代諸々も含めればその方が良いでしょう?」
「なんなりとお申し付けください」
思わぬ臨時収入だ。家賃を払ってもお釣りが来るぜ! 明日もパチンコだ!
「なら湯を沸かしてくださる?」
「え?」
「え、ではありませんわ。こんな窮屈なモノ着せられたら湯でほぐす他ありません」
普通貴族のドレスってお付きの人が着せたり脱がせたりするんじゃない? と思いつつ、お嬢様はひとりで遠慮なく脱ぎ始めた……って、
「ちょちょちょちょちょ、男の前男の前!」
「……どこに?」
もしかしてMENSとして認識されていない?
「冗談ですわ。貴族ジョーク」
「笑えねぇよ」
ポリスメン待ったなしはやめていただきたい。急いで風呂のお湯を40度で溜めていくことに。
「じれったいですわねぇ、シャワーを先に浴びますわ!」
「お嬢様ーっ!」
ホントにお嬢様なのかこいつ⁉︎
仕方ないのでそのまま風呂の扉を閉める。使い方は知っているのか、すぐにシャワーの音が聞こえた。
「はぁ〜ようやく解放されましたわ〜」
「これドレスどうすんの?」
「適当に掛けて置いてくださいまし」
針金ハンガーでいけるだろうか……
というかクリーニングとかいるんじゃねえの? いや、それよりあのお嬢様の着替えどうすんの……?
彼シャツ……
やめよう、すげぇ真面目に批判されそう。
「お嬢様ぁ、着替えはジャージで大丈夫っすかね?」
「なんでも構いませんわ〜」
鼻歌混じりの返答に困り果てるしかない。
とりあえず洗ってあるもの着せればいいか……
「着替えとタオル置いとくから、着てくださいよお嬢?」
「〜♪」
聞き慣れない歌が披露されている。壁ドンが怖いところだが、お嬢様は気にしないだろう。
そして……2時間の入浴を終えて、ようやく出てきたお嬢様。
「本当に洗ってあるのかしら。なんだか汗臭いですわね」
「男のジャージなんてそんなもんだ」
なんの因果か、上下青色ジャージのお嬢様爆誕である。