第5話 お嬢様、焼肉は大丈夫ですか?
「へぇ、ここが交換所ですのね」
「隣のパチンコ屋とは無関係です」
交換所に大量の特殊景品が置かれると、顔の見えない奥の人間によって回収される。パチンカスお楽しみの交換タイム。
景品のカウント音がガタガタすること数十秒、金額表示されるデジタル部分には、30万円を超える金額、そして……
「この辺りは紙幣が一般的ですのねぇ」
「さっき貸したろ……」
大量の諭吉と栄一が現れた!
パチンカス生活の中で見たことない量だ。これはテンションも上がる。
……まぁ、ほぼお嬢様のものではあるが。
「さて、路銀も手に入れましたし次は……」
ぎゅるる〜、とお嬢様のお腹から可愛らしい(?)腹の虫が鳴る。コルセットで絞っていても鳴るものは鳴るらしい。
「身体は正直ですわね。セツナ、肉よ。肉を用意なさい!」
「金は?」
「ここにあるでしょう?」
なんでしょう……お嬢様なのにお嬢様感が薄れてきている。むしろパチンカス側のような。
その後、徒歩は嫌と言われてタクシーを呼び(お代はお嬢様持ち)、近所の焼肉屋へ向かった。
……正直お嬢様がどんな肉食いたいかなんぞ知らん。『こんな薄っぺらい肉を食えと⁉︎』と罵るかと思っていたのだが……
「かぁ〜! この世界のお酒もなかなかですわねぇっ!」
肉はどんどん食べるわ、ビールはガブガブ飲むわ、止まることを知らない。ドレスで絞ったその身体のどこに入るのかぜひ聞いてみたい。
「あらセツナ、食べませんの?」
「いや金ないし」
「まぁ失礼! お金ならここにあるでしょう?」
諭吉と栄一を扇にして、お嬢様は煽ぎそして煽る。
「元を辿ればこれはセツナのお金、さぁいただきましょう?」
「んじゃ遠慮なく!」
肉なんていつぶりだろうか。
人の金(実質俺の金ではあるが)で食う肉ほど美味いものはない。