第3話 お嬢様、当たったら右打ちしてください
「あとはその右下ンとこのハンドル握って少し捻る」
「こう?」
「そう」
初々しい手つきでご令嬢のパチンコ実践が始まった。
……俺は何をしているんだ?
雰囲気に呑まれて金まで貸して……あとで警察呼ばないとなぁ。
「それにしても騒がしい賭場ですわねぇ」
「賭場じゃない、遊技だ遊技場」
「何かしら、虹色の文字が並んでいますわ」
「はっ⁉︎」
虹色。それは問答無用の当たりのサイン。そして『ラッキー』の声。
まだ打ち出し始めて10秒も経っていない。ビギナーズラックとでもいうのか……
「当たりだ」
「当たり……? 要はお金がもらえて?」
「誤解を招くけど厳密に言えば合ってる……右打ちだッ!」
「み、右……打ち?」
「ハンドルを全開で捻るんだよ」
「忙しない賭博ですわねぇ」
「遊技!」
しかしこれはツいてる。謎のお嬢様パワーで勝ってもらうしかない。
「なんだかよくわからないですけれど、とにかく打てばよろしくて?」
「打って打って当ててくださいお嬢様」
「そう。なら当分の生活費をここで取っておきましょう」
どう見てもゴージャスなお嬢様から発せられる言葉ではない。こちらの独白などいざ知らず、セラはドレスの袖を捲って再びハンドルを握る。
「黄金の令嬢・セラ=バートリーの力、見せて差し上げますわ!」
「……お、おう」
大事なことだからもう一回言っておくと、
この謎のお嬢様は、俺の金でパチンコをしている。