第2話 お嬢様、お金を入れてください
「ここが何処かなんてどうでもいいわ。貴方がしているコレについて早く教えなさい」
「だからパチンコ……」
「手っ取り早くお金を稼げるなら何でも構いません」
なんという威圧感。庶民では太刀打ちできないオーラに気圧されてしまう。場違いなのは絶対このお嬢のはずなのに。
「えぇと……とりあえずお金入れてもらっていいっすか?」
「持っていませんわ」
じゃあ終わりや。帰れ。終わり!
俺は今月の家賃をBETしている、絶対に負けられない戦いの最中なのだ。
会話が終わったと思ったが、白く細い手が目の前に伸びてきた。
「なんすか?」
「後で返します」
パチンコ屋ってる奴で信用ならない言葉ランキングベスト3に入るワードである。ちなみに1位は「もうパチンコやめる」。
「なんで見ず知らずのお嬢様に金貸さなきゃいけねぇんだよ」
「民草は貴族の為に、貴族は民草の為に行動する……間違っていて?」
それで庶民に金をせびるのはどうかと思います。
「これは貴族からの頼みです……さぁ、貸しなさい」
「ぬぉ、身体が勝手に!?」
行かないでゆきっつぁん! 君が消えたらボク生きていけないよ……!
財布から抜いてしまった1万は、見事お嬢の手に渡ってしまった。
「ありがとう、心優しいセツナに感謝致しますわ」
「こうして庶民は重税に苦しめられるわけだな……」
「倍以上にして返しますわ……それで? これをどこに入れればよろしいのかしら?」
「その右上ンとこにあるほっそい穴に突っ込みな」
「1枚ずつなんて面倒ね、100枚くらいまとめて入れられないの?」
んな金を持ってたらここにはいない。
心優しい俺は敢えて言うことはなかった。