第13話 お嬢様、お嬢様のターンは終了していないそうです
とにもかくにもお嬢様の豪運は再び当たりを引き寄せた。
「おーほっほっほ! やはり数字だけ見るより視覚的な物量は気持ちが良いですわ〜!」
スマートパチンコ(箱に積まずに玉を計数するタイプ)とは異なり、パーラー『らすべがす』は古き良きドル箱(パチンコ玉を箱に入れて積むタイプ)。札束が積まれる感覚なのか、お嬢様の感性にマッチしたようです。
もう10箱は積んでる。
「ほらほら〜箱が追いついていませんわよ〜⁉︎」
「お嬢様、箱から溢れてます」
呼び出しボタンは俺が押す係と化している。
遅れてやってきた客たちが一度は振り返り、妙な光景を尻目に戦いへ向かう。
「ちょ、俺の全然当たらないんだけど?」
「貴方もスキルを使えばよろしくてよ?」
それがあったら苦労しねぇっ!
既に1万入ったというのに、回転数は70を下回る。極悪店だ、よく客が来るな。
文句を垂れていたが、新たに抽選口を通った玉が虹色の演出を見せた。
「Foo〜!」
「遅いですわよセツナ、付いてきなさいな」
当たりゃこっちのもんだ! 回転数がなんぼのもんじゃい!
…………と、思ったのだが。
隣で爆連中のお嬢様とは対照的に、3回目の当たりを過ぎて静かに通常モードに戻ってしまった。締めて4500発。昨今の早い演出のせいか、当たった実感の少ないまま俺の当たりは終わってしまった。
「あらもう終わり?」
「か、勝ちは勝ちだから……!」
まさか久々に来たパチンコ屋が激渋釘になっていたとはね。ま、これも時代かねぇ。お嬢様も大勝してるし、切り上げるか。真面目な表情で台を見つめるお嬢様へ声をかける。
「ひとまず取り返したな、さてプラスもできたし……帰るか?」
「…………何勘違いしてますの?」
「は?」
「まだ私の遊技は終了していなくてよ! 金の匂いが新たに湧いています!」
「……マジ?」
お嬢様パネェな。
絶妙にプラスの状況。釘の状態も考えれば、普通ならこの店での続行はナシだ。
だが、今は違う! ということだ。
「移動よセツナ、まだ太陽の高い時間に退く理由はありませんわ!」
お嬢様の進撃は止まらない。動くのは良いけど計数してもらってからにしろよ!
結局俺が店員さんを呼ぶのであった……