第11話 お嬢様、この台は釘がヤバいです
パチンコパーラー『らすべがす』は地元の中型店だ。パチンコ400台、スロット200台。地元で古くからある馴染みの店だ。どうやら目撃情報はそこにもあった。
「このような小さい荷車に乗せるなんて……」
「自転車と言え自転車と」
ママチャリの後部にジャージ姿のお嬢様を乗せてパチンコ屋までのんびり走っていた。側から見れば妙ちくりんなカップルか……?
「何か不敬なことを考えていますわね」
「いや全然」
できれば当てないでほしいかな、上半身を。ドレスん時は気づかなかったけど、デカい。
「私が身体を預けるのよ、光栄に思いなさい」
「へぇへぇ感謝感謝」
数分漕ぐと、ひらがなの看板が目に入った。今日も元気に営業中のようだ。
「昨日の館と比べるとこぢんまりとしてますわねぇ」
「大手とは違うからな。ほら、行きますよお嬢様」
ひっさびさに来るなぁ。近所過ぎて全然行かなくなったからな。
自動ドアをくぐると、けたたましい雑音が耳を包む。禁煙化してしばらく経つというのに、どこかヤニ臭いのは気のせいか。
「で、で、お嬢様! 金の匂いはしますかね、ね⁉︎」
「欲望まっしぐらですわねセツナ」
今まで負けた分、取り返させてもらうぜぃ!
「一宿一飯どころかしばらくは協力しますし……いいでしょう、黄金の令嬢の力をその目に焼き付けなさいな!」
瞳を輝かせてお嬢様が店内を闊歩する。悲しいかな平日の開店直後に大して客がいないせいか誰の邪魔にもならない。
「……この2つよ!」
流行りの深夜アニメ台でお嬢様ストップ。疑問に思うな、セラ=バートリーがこれと言ったらこれなのだ。
「いざいざいざ!」
データを見ることもなく、ましてや釘の並びを見ることなく即着席。
※パチンコ台には玉の通り道に釘が打たれてある。そこへ玉を打ち、電子抽選するためのチェッカーに入れるのだが……なんとこの道、店側が弄れるのである。
弄ると何があるかというと、500円あたりで抽選口に入る玉をコントロールできるのだ。
店はできればいっぱいお金が欲しいから玉を通りにくく、客はそれを逆手に釘の並びが良い台を狙う……これがパチンコ必勝法なのだ!
……まぁ、俺は見てないけどね。見れないし。
ちなみに今は公安委員会ってところの承認がないと調整したらダメになってる。
ダメ、ということになってる。
おっとこれ以上は言わせるなよ? 真相は君の目で確かめてくれっ!
「あ、あれ?」
「どうなさいました?」
打ち始めて数分、あっという間に1000円が溶けた。抽選回数は0回。大手に押された影響か、釘はとんでもない状態に調教されているッ!
「お嬢様、この台は釘がヤバいです」
当たる台が分かっても抽選できなきゃ意味ねーじゃねーか!!