末裔の能力
次の日、俺はソンと学園長に昨日の事を報告しに行っていた。
俺とソンは学園長に事の顛末を伝えた。
「なるほど、【理を捻じ曲げる】という能力か。しかも試験で1位を取っていた者がSecretに属しているとはな。」
「それと、学園長」
「なんだ?」
「ロルドはこう言っていました。
『俺は邪神の末裔だ』
と。」
「なに?邪神の末裔だと?」
「おそらく。邪神の末裔達は創造の下位互換の能力を持っていると思います。」
俺はそう言った。
「邪神に末裔が居るなら、この学園にロルド以外にもいるんじゃないのか。」
「多分。いますね。」
「なるほど。そうか。」
学園長は少し考えた後、
「そういえば、何か一つ願いを叶えるんだったな。何がいい?」
俺とソンは顔を見合わせた。
ソンは、
「僕は今の所なにかほしいとかはないから、狂人クンの願いを叶えるといいよ。」
「わかった。」
俺は少し考えたあと
「E-1の担当だった先生について情報を教えてください。」
「………わかった」
少し間があったのは何なのだろう。
違和感を感じた。
「ソン君には退室してもらう」
「わかったー」
そういいソンは退室した。
「狂人君、君は何故それを知ろうと思ったんだい?」
「俺の勘だ。それに、あいつと初めて戦った時、とんでもない気配を感じた」
未知数な奴だった。
しかも、そいつは俺が能力を使って消し去ろうとしたのを察知してそれを人力で避けた。
「あいつは今、A-1の担当になっている。そして、他の先生達は退職した。」
「貴方が退学させたのではなくて?」
「ははは。面白いことを言うね。そんなわけがなかろう。」
まぁいいだろう。
「あいつの能力について教えてやろう。あいつの能力は【解除】だ。」
「【解除】?」
「そうだ。あいつはそういう能力を持っている。」
なるほど。
あの凄まじいパワーは自分の限界を解除?したのだろう。
それにしても厄介だな。
俺の能力と噛みあえるのだろうか。
「あいつの前歴は不明だ。名も名簿には書かれていなかった。どこに生まれて、どこで育ったのかは謎だ。」
「変な前歴ですね。」
「お前も言えたことじゃないだろう。名も知られず。どこに生まれたのか、どこで育ったのか全て知られていない。似ているな、お前と。」
「似てるのはそこだけっすよ。」
「ぁあ、そうか。」
「そんであんたはその先生とはどうやって知り合ったんだ。」
「腐れ縁だよ。それ以上でもそれ以下でもない。」
「なら知ってるんじゃないんすか。」
「ばったり出くわしただけだ。詳しくは何もしらない。何も教えてくれなかった。実力で示しをつけられただけだ」
「そうですか。」
まぁ、ある程度は理解出来た。
「これ以上はないぞ。」
「わかりました。ありがとうございます」
俺はそういい退室した。
ソンが俺の事を待っていたらしい。
「狂人クン、どうだった?」
「大丈夫だ。ちゃんとできた」
「僕は必要になるかい?」
「頼み事がある。」
「ぁあ、狂人くんの頼み事ならなんでも引き受けるよ」
「ありがとう。」
夜。
深夜、人が居るとは思えない時間帯に俺は1人で学園にいた。
その階段を登り、屋上に着く、
そして、その扉をあける。
「男からのラブレターは要らないのになー。」
そこにはE-1クラスの元担任がいた。
「じゃあなんで来たんすか。」
「女だと思ったってだけだよ」
「そうすか。」
「んで、用事はなんだ。」
俺は呼吸をした。
これは俺の目的のためだ。
「あんたは何で、Secretに属しているんだ」
先生は少し動揺した顔をした。
「俺は属していないぞ」
「なんで知ってるんですか。これは一部の人間しか知らないはずですよ。」
「……ッ。嵌めたな?」
距離を縮めて拳を突き刺す。
その拳は当たり前のように防がれる。
「なんだよ、急に殴りかかるなって。話を聞け。」
「嫌ですよ」
俺は左手を腹に押し付けようとする。
その瞬間俺は腹に蹴りをいられて距離を取られた。
「その掌、触れたらダメだな」
バレてる、なんなんだこの人は。
「まぁ、いいだろうお前がロルドを消し去っていたのは見ていたからな。ある程度お前の対処はわかっている」
「なんだと?」
「昨日のお前とソンとロルドの戦いは見ていた。お前が気絶していたのも知っている。そこで疑問が生まれるだろう。何故俺はお前をあの時に殺さなかったのか。そういう疑問ができる。その答えは至って単純だ。」
先生は1拍置いて
「俺がお前と1度きりの殺し合いをしたかったからだ」
その瞬間、先生は弾丸以上のスピードで詰めてきた。
その攻撃を俺は防ぎ右手を突き出し、炎を出した。
先生はそれを避けた。
「拡張…そんな事もできるんだな。お前は」
すかさず俺は先生を殴りかかる。
攻防が少し続き、距離を取った。
互角だ。
「さて、体も温まってきたところだ。本気を出そう」
「そうすか」
その瞬間、先生の雰囲気が変わる。
これだ、前少し手合わせした時はこの雰囲気だった。
禍々しい。
「何ぼーっとしてるんだ。隙だらけだぞ。」
俺はその瞬間、後ろからとてつもなく重い打撃を喰らい、吹き飛ばされた。
屋上の手すりに捕まり、何とか耐える。
速い。俺も能力を行使しないと負けてしまう。俺はその瞬間
世界を遅くする。
そういう能力の使い方をした。
先生の動きが遅く感じる。
俺は先生に拳を突き刺そうとする。
「っ?!」
先生は俺の拳を防いでいた。
なんだと?!今まではこの使い方をして殴りかかったら誰も反応できていなかった。
あれ?能力を解除してないはずなのに。
こいつ!まさか!
先生から軽く蹴りを見舞われ、距離を取った。
「俺は今、お前の能力を解除した。」
「そうだと思いましたよ。」
「お前、俺の能力、知っているだろ?どーせあの野郎から聞いたんだろうが。」
「あの野郎?」
「あー、そういや学園じゃそう言ったらだめなんだったか、まぁいい。俺は【解除】という能力をもっている。」
解除は物事のリミッターなどを無くせるということだろう。
「どーせお前の能力じゃ対策できないだろうから教えてやるよ。俺は【解除】の他に【制限】という能力を持っている」
「は?」
2個能力を持っているだと?
そんな事があっていいのか。
「だから、諦めな。俺は組織の方針に従ってお前を殺す。」
俺は頭を握られ、何かにロックが掛けられたような感覚がした。
俺は先生を蹴り飛ばし、距離を取った。
「何を…した?」
「お前が1番わかってるんじゃないのか?」
能力の一部が使えない。
絶望。
負け。
そんな言葉が俺の頭を埋めつくした
「俺は、邪神の封印を解く。この能力でな。その為に、まずこの学園に居る厄介な奴らを殺さないといけない。」
「まさか、この学園が出来た理由って。」
「そうだ、そのまさかだ。邪神の封印を解くために邪魔となる存在を集めさせたんだ。」
最悪だ。
学園長も末裔ってことなのか?
「俺は元々1つしか持ってなかったはずなんだがな。邪神かから2つ目の能力を貰ったんだよ。」
「くそ!」
拳と拳がぶつかり合い、鈍い音が鳴り響く。
「これ以上やっても、お前が負けることに変わりは無いぞ。」
「この世に絶対というのは存在しないんだよ」
「ッ!」
俺は先生に拳を突き刺して、少し吹き飛ばした。
フェンスにぶつかり、先生は少し体制を崩す。
その隙を見逃さず、距離を縮める!
「ハッ。」
先生はその攻撃を避け、俺の右腕を掴む。
俺は急いでそれを振り払い、距離を取った。
「…手遅れか。」
俺の右腕の感覚が無くなっていた。
制限されてしまった。
利き腕が使えなくなったことによりさらに不利になる。
「さて、お前は俺とどう戦う?」
これを解除する術はあったが生憎とその能力は使えなかった。
最悪だ。
それから俺は左腕で何とか戦っていたが、
疲労が溜まってきていた。
「ハァ、お前、どれだけしぶといんだよ。」
先生は少し疲れた声でそう言った。
「だが、お前は疲れてきている。動きもさっきより鈍くなっているしな。それじゃあ、これを使わせていただこう。」
そう言い、先生はどこからかナイフを取り出した。
まずい。俺は得物を持っていない。
生身の人間が刃物に勝てるわけが無い。
何とかしないと。
俺は膝を着いてしまった。
「隙だらけだぞ。」
目の前から先生の声が響いた。
まずい!!!
金属の甲高い音が鳴り響く。
「ッ!!!お前!!」
だ、誰だ…?
「すまないな。俺の親父が。」
親父…?
「お前はまた、俺の邪魔をするのか?二階堂。いや、仁」




