状況整理
「ん、んん…」
俺は目を擦りながら体を起こす。どのくらい寝たのかは分からないけどサッパリしたぜ。
よし、これなら状況整理も出来そうだ。
ということで、シルヴェンナから貰った記憶を整理していこうと思う。
まずはこの世界についてだ。
言うまでもなく、この世界は地球とは違う。
この世界は5つの大陸を抱き、そのうちの1つである〝魔大陸〟に俺は住んでいる。
荒廃した赤い大地がほとんどを占める過酷な大陸らしい。
また、この世界には様々な種族の生物がいる。1番数が多いのは人間種だ。他には獣人種やドワーフ種などの亜人種がいたり、ドラゴンやオークなどの魔物もいる。
そして俺たちは魔族だ。知性のある魔物を魔族と呼ぶらしい。
魔族の中でも種族は細かく分類されていて、俺は吸血鬼である。それも上位個体だ。
そして、さらに上位個体なのが俺の姉である魔王シーリン=ヴァルクライトだ。
吸血鬼の最上位個体である〝始祖〟と呼ばれる存在らしい。魔王の名前は伊達じゃないってことだ。
そんな魔王は魔大陸を拠点に、他の大陸に攻め込んでいるらしい。
最初は順調に支配領域を広げていったけど、最近は各国の抵抗が激しくて攻めあぐねているとか。
俺は、そんな世界にやってきたのだ。
では次に俺自身について。
俺は吸血鬼なわけだが、そのせいで俺は日中に外で活動できない。その代わり、夜になると様々な能力が向上する。
その話をする際に重要なのが魔力という概念だ。
俺の世界には存在しなかった、魔法を使うために必要な力である。
魔力は全ての生命体の中に宿っている目には見えない力で、その総量には個体差がある。
それを体内で上手く循環させれば身体能力を向上させることができ、体外で使えば魔法として発現できる。
その魔力運用の効率が、俺の場合は夜になると高まるというのだ。
魔力さえあれば魔法が使える。魔力さえあればスーパーヒーローみたいな動きが出来る。
魔力についての情報が頭に流れてきたときは興奮して飛び上がりそうになっちゃったよ。
…だけど、俺には1つだけ弱点がある。
それは、吸血鬼は夜に魔力運用効率が跳ね上がる代わりに欲求が抑えられなくなるというのだ。
シルヴェンナによれば、姉の場合は食欲が抑えられなくなるらしい。そして俺は…性欲だ。
なんでこんなエロい服装なのかと疑問に思っていたけど、どうやらこの服はソレのせいらしい。
なんでも、自分の恥ずかしい姿を晒すことで興奮を覚えるシルヴェンナはこうすることで欲求を抑え込んでいたというのだ。
とんだ露出狂じゃないかと思ったが、そういう理由があるなら仕方ないな。10歳なのにエロいなぁなんて思ってはいけない。
だけど、性欲が抑えられなくなる、か。
…ふっふっふ。俺の身体なんだ。今度時間がある時に弄ってみるとしようじゃないか!
…おっと、話の筋を戻そう。
そんな吸血鬼の俺だが、この魔王城でどのような生活をしていたかということだが、一言で言えばメスガキだ。
この城には俺と姉以外にも沢山の魔族が住んでいる。
メイドや奴隷がほとんどだが、中には幹部ポジションの偉い奴もいるらしい。
そんな奴らにちょっかいをかけては「だっさ〜い」とか「え、そんなことも出来ないの〜」とか言って回っていたみたいだ。
こんな露出度マックスの幼女に煽られる幹部の気持ちを考えると心が痛む…なんてことはなかった。
俺はこのことを知った時、あることが思い浮かんだ。
そもそも、俺はこの世界でシルヴェンナとして生まれ変わったことを誰にも知られないようにしなければならない。
つまり、メスガキムーブをいきなり止めることは出来ないんだ。怪しまれてしまうから。
ならば、いっそのこと突き通してみようと思う。
メスガキを極め、姉と力を合わせて世界を支配する。
メスガキ支配者を目指して俺は生きていこうと思うんだ。
「うん、そうしよう!!」
そうと決まれば、早速姉の所へ向かうとしよう。
今頃〝玉座の間〟で会議をしているはずだ。
「転移!」