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プロローグ 非常識な公爵子息。

てや(*'▽')ノ

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「いい加減にしろ、アルフレッド! あの者と貴様は決定的に身分が違うのだと、何度言えば分かる!? 非常識極まりないと、陛下からも苦言を呈されたばかりだろう!!」

「は……誰と一緒にいようと、俺の勝手だろうが」

「貴様……!?」



 声を荒らげる父に対して、俺は苛立ちをあえて隠さずに悪態で応えた。

 すると、その言葉は彼の逆鱗に容易く触れたらしい。声を激しく震わせた父は拳を血が滲むほどに握りしめ、怒りに満ちた瞳はいよいよ潤み始めていた。

 その姿はまるで駄々をこねる子供のそれで、しかし実際に子なのは俺の方である。

 だからといって、こちらが折れる道理などなかった。


「それだけではないぞ、アルフレッド……! あれほど言われたにもかかわらず、貴様はまた貧困街に足を運んでいるそうだな! 公爵家の人間として、恥を知るがいい!!」


 父はいよいよ俺に指を突き付け、そう叫ぶように言う。

 その仕草は貴族とか云々よりも先に、人としてどうなのか、と。そう嫌味たらしく返してやろうかとも思ったが、これだけ昂っている相手に燃料を追加する必要はないと思われた。

 とにもかくにも、俺から手を打つ必要はなさそうだ。

 そう考えているとさっそく、父は堪忍袋の緒が切れた様子でこう告げる。



「いいか、貴様はもう我が子ではない! 国王陛下にも進言し、国外追放処分としていただく!! 路頭に迷ってから、自分の過ちを深く後悔するがいい!!」――と。



 それは紛うことなき絶縁宣告。

 一般的な親子関係であれば、子供は泣いて許しを請う場面だった。

 だけど、申し訳ないが俺は普通とは少し違う。そもそもとして、こちらとしては縁を切っていただけるなら好都合であることこの上ない。


 だって俺はこの家――いいや、この国での生活に辟易としていたのだから。



「それはそれは、ありがとうございます」

「ふん。いつまでも冗談だと思っているのではないだろうな?」

「いえいえ、とんでもない。それでは――」



 だからこそ、あえて丁寧な口調で最後の挨拶を口にした。



「さようなら。……元お父様?」



 こうして俺――アルフレッドは、十五にして由緒正しき公爵家から廃嫡。

 即日、国外追放処分となったのだった。





 ――俺の生まれ育ったアルトス王国では、身分と財力がすべてだった。

 何をするにしてもまずは生まれを確認されて、そこを潜り抜けても必ず裏金を用意する必要がある。どうにか這い上がろうとする貧乏人は必死に金を集めるが、貴族が理不尽な難癖をつけてしまえば簡単に潰されてしまう。


 その者の実力や素質なんて、最初から関係なかった。

 有力な貴族の子は、たとえ耳から脳みそが流れ出ていても地位が約束される。そんな王国であるからこそ、そのトップに座す者たちの頭の中は膿だらけだった。



「さて、と。本格的に国を出る前に、アイツに会いに行くか」


 俺は自由の身となってからまず、貧困街へと足を運ぶ。

 先ほども述べたように、このような場所に貴族が立ち入れば石を投げられて当然だった。――いや、最初の頃は俺も投げられたか。


「あ、アルさん! いらっしゃい!」

「よう、ミア。親父さんの体調はどうだい?」

「お陰様で! アルさんから分けてもらった薬で、元気いっぱいよ!」


 街に入ってすぐ、俺のことを出迎えたのは一人の女性だった。

 ミアという名の彼女は笑顔を浮かべると、心の底から嬉しそうに父親のことを報告してくる。その報告を聞いて、俺は素直に喜ばしかった。

 彼女の親父さんは有名な職人だったのだが、タチの悪い感染病に。それによって職を失い、結果として貧困街に流れ着くことになった。しかし貴重な技術者を失うのは、相当な損失となる。そこで俺は少しばかりの裏ルートを使って、薬を調達したわけだ。


「今日はどんな用事? お父さんなら、庭先でカタナを打ってるけど……」

「あぁ、悪い。今日はゴードンに用があるんだよ」

「……ゴードンさんに?」


 俺がとある人物の名を口にすると、ミアは小首を傾げる。

 ゴードンというのは、この一帯を束ねている荒くれ者の長だった。


「ゴードンさんなら、今日は奥の家にいると思うけど?」

「そうか。ありがとな!」



 ミアから情報を得て、俺は感謝を口にする。

 そして、ゆっくりと件の家へと足を運ぶのだった。



「…………おう、入れ」



 三回ほどドアをノックすると、中からは低い男性の声。

 俺はゆっくりとドアを押し開けて、足を踏み入れた。すると、



「なんだ。……アルフレッドじゃねぇか」

「今日も暇そうだな、ゴードン」



 こちらを出迎えたのは、身の丈二メートル以上はある筋骨隆々とした偉丈夫。

 深い傷を負った悪人面をしており、右目は完全に潰れてしまっていた。見る者によっては視界にも入れたくないと思うであろう出で立ちのゴードンは、もう一方の目を細めて訊いてくる。

 静かに、どこか俺を試すような口ぶりで。



「それで、今日は何の用だ」――と。



 口元には意地の悪そうな笑みが浮かんでいた。

 それを見て、俺もまた口角を歪める。

 そして、応えるのだ。



「少しばかり、ゴードンに相談があってな。いや、より正確には――」



 一度、言葉を切ってから。



「ルイス・アレクセイ・ゴードンさんに、な」

「ほう……?」




 その名を口にすると、彼はまた不敵に笑う。

 俺たちの間には、かつてない緊張感が漂っていた。



 


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