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「妾の力では無理だ」
ジュジュからの言葉に何も言えなくなった。……絶望という言葉はこういう時に使うのかもしれない。
「……じゃあ、ヴェルは?」
自分でも驚くぐらい弱々しい声だった。
目の前でヴェルが死ぬなど信じられない。……そんなわけがない。シュラン国の第一王子がここで命を落とすはずなどあるわけがない。
「この男を治せる者はこの世界で一人だけだ」
「誰?」
「……今ここにおるではないか」
「ジュジュはヴェルを治せないって……」
「たわけ。お主のことじゃよ」
私はジュジュが言った言葉を理解出来なかった。私を見る彼女の藍色の瞳に吸い込まれそうだった。
どうして彼女は私を見ているの……?
私がキョトンとしていると、彼女は目を見開いた。
「お主、まだ自分の能力が何か知らないのか……」
私の能力…………、少しも見当がつかない。
「本来なら自分で見つけた方がいいが……、時間がない。ついて来い」
急に歩き出した彼女を私は慌てて後を追う。
どこに行くのか分からないが、彼女についていけば自分の能力が知ることができるのだとワクワクした。
こんな状況だというのに、自分の能力を知ることができる喜びの感情が湧き出てくる。
来た道とは反対方向へと進んで行く。
この部屋はどこまで続いているのだろう。歩けば歩くほど、先が遠のいていく気がした。
暫く歩くと、目の前に幻想的な光景が広がっていた。私は思わず目を瞠り、足を止めた。
「なにここ……」
「月光を集めたところだ」
夜でしか見ることのできない光が広がっている。……こんな深海に。
眩しくて、どこか触れたくなる。私はゆっくりとその場に近付く。どこか力がみなぎってくるような気がした。
目は遥か彼方の国さえも見えるぐらいに、耳は地球の裏側の声まで聞こえそうなほど……。五感がどんどん冴えていくような……。
「なんなの、これ」
「お前の力は夜にしか発揮されない」
「夜だけ……?」
「ああ、お前はこの世に誰よりも強い人間になれる。お前のその美しい金髪は更に輝き、ピンク色の瞳は光を宿し……、我々も夜のお主には敵わないだろう」
ジュジュは嘘を言っていない。
だけど、私にそんな力あるとは思えない。今まで、何も知らずに王宮の中で過ごしてきたのだ。
「だが、力を使い過ぎると、その代償は大きい。丸一日、目を覚まさないなんてこともある」
「……力の使い方を間違えるな、リック王はこの力を上手く使えていましたか?」
「奴は己の力を過信することは決してなかった。あの男ほど、能力を上手く使っている者を見たことがない」
ジュジュは、どこか懐かしそうに、愛おしそうに初代国王のことを語った。
「妾との最後の別れの時、なんの迷いもなく走っていく奴が眩しくて仕方がなかった」




