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……まずい状態?
彼の元へ連れて行って。
『いいだろう。……それにしても、お前は不思議な力を持っているな』
不思議な力?
私は彼女の言葉が紋章のことだということを理解するのに少し時間がかかった。
『リックの末柄か。……あいつは面白い男だった』
初代国王の名が出て、私はビクッとしてしまう。
千年もの月日を生きているという。リック王のことを知っていて決して不思議ではない。
……ただ私はリック王がここに来たことがあるということと彼女の記憶力に驚いた。
『お主、名は?』
ミジュ。セバン国第二王女のミジュよ。
『ミジュ、か。良い名だ。妾の名はジュジュという』
ジュジュ、なんだか可愛らしい名前。
もっと、古くさい名前が出てくるのかと勝手に思っていた。
ザイジュのジュジュ。なんだか言いにくいけれど、覚えやすい。なによりも、私の名前に似ている。なんだか少しだけ親近感を湧いてしまう。
『妾の背中に乗れ』
背中に?
海の主の背中になど乗ってもいいのだろうか。だが、私ももう体力の限界だ。運動せずに生きてきた人間がいきなりここまで必死に潜ったのだ。
相当力尽きている。
『これからもっと深い所へと行く。お前の力では無理だ』
これ以上、深くって……。
体への負担が半端じゃないだろう。
『安心しろ、死にはせん。人間が耐えれない水圧だが、お主にもあの男にも妾の力を貸している』
圧倒的な海の主の力に完敗だ。
彼らを本気で怒らせてしまえば、この世界などいとも簡単に滅びてしまうだろう。
もしかしたら、彼らのような存在を人は「神」というのかもしれない。
『そう言えば、はるか昔、人類が妾たちのことを神だと崇めた時代もあったのう』
私は色んな時代の移り変わりを見ているジュジュを羨ましく思った。
人間の愚かさをどれだけ目の当たりにしてきたのだろうか。同じ過ちを繰り返す歴史を見て、呆れてしまったのではないだろうか。
だから、人間の目の届かぬところでこうして過ごしているのかもしれない。
私は勝手に色々なことを推測しながら、ジュジュの背中に乗った。




