12
その言葉を聞き終えた瞬間、私は目が覚めた。
ゆっくりと体を起こして、さっきのが夢だったのかと自分の記憶を疑う。夢だったが、かなりリアルな感覚……。
ふと、右手首を見ると、ピンク色に紋章が発光していた。見つめていると、ゆっくりと光は収まっていく。
…………夢ではない。
確かに私は初代国王リック王と会話をしたのだ。
私はベッドから立ち、ゆっくりと窓の方へと向かう。窓の外を見て、これほど時間が経ったのかとびっくりした。
「もう夜だわ」
そんなに眠っていたわけではないと思ったが、日はすっかり暮れていて、夜空に多くの星と満月が輝いている。
静かな夜だ。数時間前までの国民たちの活気が嘘みたい。
一日、長いようで、あっという間だった。十六歳の誕生日を私はあと少しで終える。またいつもの日常に戻ってしまうのかと思うと少しだけ寂しく思った。
今日のような刺激的な一日はもう暫く来ないのだろう。
そんなことを思いながら、窓越しにぼんやりと夜空を眺めていた。
突然、ガタンッと乱暴に窓が開いた。
風で開いたのではない。誰かによって開けられたのだ。
そして、その「誰か」が今、私の前にいるのだ。窓の縁にしゃがみ込んでいる彼はあまりにも綺麗な顔をしていた。
私は男が来たことよりも、その綺麗な顔に驚き、見惚れてしまった。
侵入者が王宮に入ったなんて、緊急事態でしかない。それなのに、私はただぼんやりと彼を見つめていた。
「あんたがミジュ姫様か?」
どの星よりも輝いている彼の瞳に私が映っている。黄色い瞳……、初めて見た。頭に布を巻いていた布が取れたのだろう、彼はさっと顔に布を巻きなおす。
褐色肌によく映える白い歯が見えた。……布を顔で覆っていても、彼の目力は凄まじいものだった。
「ええ、そうよ」
私は笑う。どんな状況下においても王族は決して焦っているところを見られてはいけない。
感情を表情に出してはならない。それに、今の私に恐怖心などない。
「へぇ、女神様って言われるのが理解できる」
「ありがとう」
私の返事に彼は眉間に皺を寄せる。表情ははっきりと分からないが、怪訝な表情をしていることは理解出来た。
「怖くないのか?」
「どうして?」
「どうしてって……。自分の立場分かってる? 俺、今からあんたを殺すかもしれないよ?」
「そうなの」
決して怯えるな。死を恐れるな。
これが王族の教育だ。死に対しての恐怖心を捨てなければならない。
王族はいつも命を狙われているものだと思わなければならない。殺されようとも、毅然とした態度をとる。
きっとそんなことできっこない、なんて思っていたけれど、案外できるものだ。
「どうして私を殺したいの?」
どうせ死ぬのなら、自分が死ぬ理由ぐらいは聞いておきたい。




