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彼はハハッと声を上げて笑った。
私が少し反抗したのがどうやら気に入ったようだった。リック王の性格が未だに掴み取れない……。
ただ、彼は優しい。それだけは分かった。
そして、今、私は初代国王に試されている。私の回答で私を見定めている……。
『お前は、心の底では花のままでいるなど嫌だと思っているのだろう』
言い返せない。
現実では「そんなことはありません」と言えるが、夢の中ぐらいは少しだけ素直になってもいいだろう。
「私が花ならば、国民は土。土なしでは生きれない。土に生かされているのだから、花は我儘など言ってはいけないのです」
『お前を育てた現国王は立派だな』
リック王は穏やかに笑みを浮かべながら、話を続けた。
『我儘というのは高慢や傲慢とは違う。我儘というのは人間に必要なものだ』
「許される我儘と許されぬ我儘というものがあります」
『では、ミジュ、許されぬ我儘をとった者が愚者だと思うか?』
私は黙り込んでしまう。
リック王がこの豊かなセバン国を築き上げた理由が彼と会話していて段々分かってきた。
今でも偉大な王だと語り継がれるのは正しい。この方は本当に偉大だ。
『私は国民を捨てろと言っているわけではない』
「でも期待を裏切ることになります」
私は今日、彼らの期待に応えたばかり……。
『期待通りなどつまらない。……ミジュ、何故私がお前の弱い点を聞いたか分かるか?』
「……自分を知るため、でしょうか」
『ああ。その通りだ。人の最も弱い部分がその人の全てだ。そして、それがお前を成長させたのだ。お前ほどの真の姫を私は見たことがない』
リック王は私の全てを認めてくれた。
私はそのことに胸が熱くなる。私が一番「姫」という存在に囚われている。
一度ぐらいは「姫」を手放しても良いのかもしれない。そんな気持ちが少しだけ過ってしまう。
『なにはともあれ、この紋章を持つ者に会えて良かった』
そう言われたのと同時に、自分の右手首へと視線を落とす。
これがどんな能力なのか未だに分からない。きっと、リック王も教えるつもりはないのだろう。
……自力で探して、見つけ出せるものなのだろうか。
『ミジュ』
名を呼ばれて、私は顔を上げる。リック王は私の目をしっかりと見て、強い口調で忠告した。
『使い方を間違えるな』




