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ゼロの旅路  作者: イフ
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81.海洋再戦

 澄み切った青い海を切り裂いて船は進む。海風と照りつける太陽は爽やかという言葉を体現している。だが、それを享受することはない。何故なら、今彼らが向かうべき場所は爽やかとはかけ離れた戦いの場であるからだ。



「海が更けてきたな……」

 船を漕ぎながらルセンは海面を訝しげに見つめた。


 澄み切っていたはずの海は汚染されたように濃い群青色に変わりつつあった。


 ルセン以外の三人はこの色を知っていた。


「止まれ」

 その言葉にルセンは手を止め、振り返る。


「もう、奴の流域に入っている」

 メイの言葉を聞き、ルセンは完全にオールから手を離した。


「さあ、でてきてもらうか? 水の魔力オーゼさんよぉ……リベンジマッチをさせてもらおうじゃないか!」

 メイが声高く叫ぶ。それが波紋になって海に溶けていく。


 実体を持たないメイの声は精神に直接作用する念話のようなものだ。故に彼女の声は空気を震撼させたり、反響したりしない。では何故、波紋が生まれたのか。それは彼女の魔力に呼応したからだ。

 つまり、この海はただの海ではなく生きている。


 色濃い群青がさらに濃くなり、水柱が立った。それは段々と意味のある形に変わっていく。


 一行の前に再び女性を模った"あれ"が現れた。

 そう。水の魔力オーゼが。


「ふははははっ! また逢えて嬉しいぞ、愚かな敗者どもよ」

 オーゼは顔の部分に水流を生み出し、器用にも笑顔を作って見せた。


「ふふふ……」

 その笑みにメイが笑みで返す。


「……ふん、笑うか。おおよそ、土の魔力を倒して自信がついたのだろう。だからこそ我はお前たちを挑発し呼び寄せたのだが……まさかもう勝った気分でもいるのか?」

 オーゼはメイの態度に気分を害したのか、体の波が少し荒れ始めた。


「そうだな。お前はもう負けているよ」

「どういう意味だ……!?」

「これはめでたい。どうやら本当にあれはお前の凡ミスだったようだな。水の魔力オーゼ……いや、海洋スライム!」

 メイの言葉に激震が走ったようだ。オーゼの体が嵐の海のように崩れた。


「はははははっ! わかりやすいなお前。その体だとまともに嘘もつけないのか。お前の前では間抜けも褒め言葉になるなあ……」

 ここぞとばかりに口撃し、メイは朝の苛立ちなど吹き飛んだように楽しそうだ。


「ど、どこで知った!?」

「どこでも何も、お前が教えてくれたんだろう。懇切丁寧にな」

 メイは何故、オーゼの正体を暴けたのか語り始めた。


「……そんな、我のミス……!?」

「身から出た錆……いや、スライムだな。お前が海ではなくスライムに憑依しているなら。お前が無限の身ではなく、有限ならば……私たちに勝利が見えてくる。行くぞッ! お前を我が物にするための戦いを始める」

 メイは宣言し、ゼナの身体の中に重鎮と腰を据えた。


「……っ……まあ、いいだろう。我を理解したとて! この海の上で、人間など無力でしかないと思い知れ!」

 オーゼは叫ぶ。その次の瞬間、一行を乗せた船が宙に打ち上がった。


 オーゼの一撃が舟下からアッパーのように決まった。特筆するほどの剛性など持ち合わせていない船は簡単に砕け散り、ゼナたちは宙に投げ出される。


「作戦開始だ……! ルセンッ!」

 ゼナは空に浮かびながら叫んだ。


「おうよっ!」

 ルセンは応え、ゴレムの本体である魔石を海面に向かって投げつけた。


「出番だぜ、ゴッちゃん!!」


 魔石が海に沈む。と同時に眩い光を放った。


「……な、なんだ……!?」

 オーゼは無い目を見開いた。ただの海面だったはずなのにそこには島が現れ、その上にゼナたちが着地していた。


「ありがとな、ゴッちゃん! これで俺たちは戦える」

 ルセンは膝をつき地面を撫でた。するとそこに二つの空洞が現れ、白い光を灯す。見覚えのある瞳。それはゴレムであった。



「上手くいったみたいね!」

「うん、でも戦いはこれからだ。」

 ゼナは一安心して息を吐きながら、砂浜での作戦会議を思い出す。



「――よく聞いて、よく見ろ。海の上で戦う。それを可能にするのは――ゴレムだ」

 メイの言葉に一同は目を丸くする。


「ゴレム、もといゴーレムは土を体として命を宿す。逆を言えば土がなければ活動できない、そうだな? ルセン」

「ああ……その通りだ。魔石は心臓で土は胴や手足だ。……なあ、メイ。どうやってゴッちゃんを海の上で活躍させる気だ? ゴーレムってのは水に弱いんだ。海水に触れればグスグスになっちまう」

 ルセンの言葉を聞いてゴレムが身震いする。かつての水に苦しめられた記憶に恐怖しているようだ。


「ただのゴーレムならそうだな。だが、ゴレムはそうじゃない。私が奪うはずだった! 土の魔力が宿っている。これを使えばゴレムは海の上でも体を構成することが可能なはずだ」

「つまりはゴッちゃんを島として造り、そこを足場に戦うわけか」

 ルセンの言葉にメイは景気よく指を鳴らす。


「早速軽い実戦だ。魔石を海に投げ入れ、ゴレムを島として構成してもらおうか」



 初めて聞いた時は非現実的な作戦と思っていたが現にこうして十分な広さを持った島の上にいると目を瞑っても現実だと思わされる。


「じゃ、あとは頼んだわよ、ゼナ!」

 リーズが気合いを入れるように肩を叩いた。ゼナは緊張した面持ちで頷く。


 島を造り足場を確保するのはルセンの役目だ。ゼナの役目は別にある。


「足場を作ったとて我に敵うと思ったか!」

 触手のような水流が襲いかかる。が、しかし、すぐさまそれは凍りついた。


「…………なっ!?」


 宙に投げ出された際にそのまま空に羽ばたいたレシュアが氷撃を放ったのだ。


「リーズっ!!」

 レシュアが叫んだ。


「わかってるわよ! 派手にやってやろうじゃない……!」

 リーズは左の掌を後方に開き、勢いよく炎を噴射させる。彼女の体はその推進力で持ち上がり、氷漬けの水流に向かっていく。そしてその勢いのまま右拳を勢いよく振った。


 氷が盛大な悲鳴を上げて砕け散り、海へ落ちていく。


 だが、その攻撃で彼女は海上に投げ出された格好になった。このままでは砕けた氷と同じ運命を辿ってしまうだろう。


「……そうはさせないのが僕の役目だ!」

 ゼナは地面に掌を抑えつけイメージした。

 創造の魔力が想像を具現化させる。


 海に落ちるはずだったリーズは小さな島に両足をつけていた。


 土魔法と創造魔法の合わせ技でリーズに足場を造り落下を阻止する。これがこの戦いでのゼナの役目だ。


「……上手くいったけど、これは……」

 ゼナは神経がキリキリと刺激されるのを感じた。この作戦、口にするのは簡単だが実行するのではまるで違う。

 リーズの落下軌道を見て確実な足場を形成しなければならない。失敗すれば立て直しは容易ではない。


 ――わかっているとは思うが焦るなよ。


 身体の内から声が響いた。彼女のいつもと変わらない物言いにゼナは却って精神を落ち着かせられた。


「……大丈夫だ。やってやる!」



「ちょこざいな策を思いついたものだ……ならばお前から息の根を潰す!」

 素早い水流がゼナに向かって襲いかかる。


「――させるかよッ! ゴッちゃん、防御だ!」

 ルセンがゼナの前に立ちはだかり拳を突き上げた。すると、地面から岩が生えゼナを守る壁になった。


「リーズを支えるゼナ、それを守るのが俺だ!」

「邪魔だっ! どけ――うおっ!?」

 オーゼは右腕と呼べる部分を振り上げるが瞬時に凍らされた。そして、すぐさまリーズという弾丸が発射される。


「くそっ……鬱陶しい蝿が!」

 宙に羽ばたくレシュアに向けて五月雨をお見舞いするが、銀氷の翼は華麗に避けていく。さらに回避しながら氷の楔を打ち込み凍結させた。


「――もらった!」

 三射目。氷は砕け散る。


「――はあっ!」

 弾丸の着地先をゼナが造る。


 もはや完璧と言っていい連携がオーゼを追い詰めていく。


「なるほど……伊達に土の魔力を倒しただけはある。だがな、我はこの程度では倒れんぞッ!!」

 オーゼの失われた部分が瞬く間に再生した。


 オーゼを倒すには魔力が宿っている海洋スライムの核を露出させなければならない。つまり核を覆い隠せないほどに体積を削る必要がある。


 消耗戦に持ち込まれればこちらの敗北は免れない。体力と魔力が失われる前に核を日の元に晒さなければ……。


 レシュアの冷気がオーゼの体を凍らせ、リーズの拳が砕く。そのリーズの足場をゼナが造り、そのゼナをルセンが守る。確かな連携から生まれた陣形はオーゼを追い詰めていく。だがしかし、やはりというべきか……全員の疲弊が無視できなくなっている。


 常に飛び続け攻撃していたレシュアが最たる例だ。攻撃と回避を同時にできるほどの体力ではなくなっいる。今やオーゼの攻撃を避けるのに精一杯だ。


 レシュアの攻撃が入らないということはすなわち、リーズの攻撃も入らないということだ。水を相手に炎は無力だ。そしてそんな彼女をオーゼは執拗に追い立てる。当然、彼女も回避行動を取るのだがそれはこちらの首を絞める行為だ。


 リーズが攻撃を避けるために足場から飛び立てば必ず次の足場をゼナが造らなければならない。次の足場に着地した瞬間、また攻撃が来て、リーズは避けざるを得ない。そんなことを繰り返せばゼナの魔力は著しく減る一方だ。


 ゼナを守る役目があるルセンも下手に動けない。いや、そもそも物理攻撃しか持ち合わせていない以上、レシュアの氷が不可欠になる……。



 確かな連携による攻撃。だがそれはリズムが乱れれば崩れ去る脆きもの。追い詰めるはずの盤面が逆にこちらを追い詰める。


 足りないのか!? この手では……!


 メイは一人ゼナの身体の中で虚しく叫んだ。


「ふははははっ、どうしたさっきまでの勢いは!? 思い知ったか? 我を甘く見積もった代償がこれだ。竜モドキが何もできなければ、我に触れることすら出来まい!」

 レシュアに向かって豪雨の如き攻撃が放たれる。レシュアは必死に羽ばたきながらどうにか攻撃をしようと目論んだ。


「……っあ!!」

 攻撃をまともにくらった。しかしこれをチャンスと踏んだ。レシュアは氷の楔を穿つ。それはオーゼの腰部分に当たり凍結させた。


「――今!」

 待ち焦がれた隙にリーズは飛び込む。が、しかし!


 バキッ! 


 氷はすぐさまに内側から破壊された。がむしゃらに撃った攻撃は完全な凍結には至らなかったのだ。


 水流がリーズを殴り、そのまま海に叩きつけられようとしている。


「……っ!!」

 ゼナは落下地点を予測して創造魔法を使う。だが、それは読まれていた。


 吹っ飛ばされるリーズを別方向からの水流で殴りつけ軌道を変える。ゼナはすぐに対応できず、リーズは青い海に落ちていった。


「まずはお前から処刑してやろう……」

 オーゼが腕を上に上げると泡の中に閉じ込められたリーズが宙に浮かんできた。


「……ごぼ……ぐ……」

 リーズは泡の中で溺れ苦しんでいる。


「今回は逃してくれると思うな? このままじわじわと嬲り殺してやる!」


 リーズを助けようとレシュアは羽ばたく。しかし、

「大人しくしてろ!」

 凝縮して放たれた水砲がレシュアの右翼を貫く。氷の翼を砕かれ、真っ逆さまに落ちていった。かろうじて水面を凍らせて水没は避けられたが、これではリーズを助けられない。


「くそッ!!」

「そうやって指を咥えて見ているんだな。お前たちも、自分の愚かしさを仲間の絶命で理解するといい!」

 ゼナとルセンに振り返り、笑みのような波紋をつくった。


「――さあ、死は近いぞ!」


「べぼう……びぐぶ……」


 苦しげに溺れる声と共にそれは確かに聞こえた。そして次の瞬間――。


 リーズを捕らえていた泡は赤みがかると、破裂した。


「……はあ……はあ……」

 ずぶ濡れになりながらもその腕に金色の炎を宿したリーズが現れた。ゼナが咄嗟に足場をつくるとその上に膝をつく。


「我の泡から逃れるとは……だが――」

 すかさずオーゼは攻撃に入る。激流がリーズに遅いかかるが、彼女は避けようともせずその流れに向かって拳を構えた。


「――蒸発せし(デューヴィス)一撃(シュターク)

 リーズの詠唱を伴った拳とオーゼの水流がぶつかる。打ち負けたのはオーゼだ。青い水が瞬時に赤くなりそして気体へと変わった。

 リーズの一撃はその詠唱通りオーゼを蒸発させたのだ。


「馬鹿な……!?」

「炎が水に敵わないなんてのは戯言だったわね。私の炎はあんたなんかには消せない」

「あり得んこの我が――!?」

 狼狽するオーゼの背に氷の楔が刺さる。


「悪かった。ガラ空きだったんでな」

「鬱陶しい蝿が……!」


「メイ! 聞こえてる!? ここからはアドリブで行くわ。作戦を無視する。説教はあとでなんでも聞いてあげるから私たちをサポートしなさい!」

 リーズは返事も聞かずその炎でオーゼを蒸発させることに決めた。


「あのじゃじゃ馬が……。だが、まあいい。奴の狼狽具合、勝利の天秤はこちらに傾きつつある」

 メイはゼナの体から顔を出し、眉を顰めながらもニヤリと笑う。


「ゼナ、お前はトドメの魔力を温存しつつ二人のサポートだ。ルセン、お前もゴレムと攻撃に参加しろ」

「あの戦いに身を投げろってか!? そいつは無茶な相談だぜ」

「いいか、よく聞け。お前が立っているこの大地はゴレムなんだ。オーゼはあの二人、特にリーズに御乱心だ。つまりゴレムという島が最強の伏兵になっている。後はわかるな?」

 メイはそう言うと返事も聞かずにゼナの中に入って行った。


「最強の伏兵か……」

「メイがそう評するのは珍しいよ。きっと本心で言っているんだと思う」

「そいつはありがたいね。なら、お前の相棒に恥かかせないように俺と俺の相棒で頑張ってみるか! ゼナ、おいしいとこちゃんと持っていけよ!」

 ルセンは歯を輝かせたサムズアップを贈る。ゼナも真似をして返した。

 彼らの反撃が今、始まろうとしている。



「調子に乗るなよ、人間が――ッ!!」

 リーズに向かって荒れ狂った水流が襲いかかる。


「……っ!?」

 リーズは進火の力で打ち返そうと一撃を穿つ。両者の攻撃が拮抗する。その時……!


 ザバァっ!


 彼女の背後から水柱が飛び出た。

 あくまで真正面の攻撃は囮だった。オーゼは背後からの挟撃を狙っていた。


「馬鹿正直で助かったよ、死ねぇ!!」


 この攻撃は避けられない。そう悟った。


「させるかよ! 行くぜ、ゴッちゃん!」

 高らかな声が聞こえた。それと同時にリーズの足場から腕のようなものが生え、水柱を握りつぶして消滅させた。


「なんだと……!?」

「どうよ、オーゼ! これがゴーレムと土の魔力の合わせ技だ。もはやただの足場すらお前の敵なんだよ!」

「いい気になるなよ……っ!?」

 オーゼは背に冷たいものを感じた。


「また、お前か竜モドキが!!」

「背には常に細心の注意を払うべきだ。俺からの最初で最後のアドバイスだ。……ルセン!!」

「おうよ! 砕け、ゴッちゃん!!」

 ルセンの足場から大地の腕がメキメキと生え、拳を握り込んだ。そして凍結した部分に向けて打った。


 氷が砕け散りオーゼは衝撃でよろめく。リーズと拮抗していた水砲があらぬ方向へ逸れた。


「リーズ、今だっ!!」

 確かな好機を察してゼナが叫ぶ。


「最大火力でぶっ飛ばすわよ……(エボル)(イグス)――!」

 リーズの炎が白い輝きを見せる。炎の魔力、バーニンガとの戦いで見せた彼女の最大火力だ。


蒸発せし(デューヴィス)貫く(ペネトレート)一撃(シュターク)――!!」

 両腕を突き出して放たれた白き炎が鋭い一撃となって突き進み、青い海を貫いた。


「くそっ……こんなことが……! 体の再構成をしなければ……」

 貫通した体を再生させようと蠢いたところでオーゼは気が付いた。体の再生速度が著しく低下していることに。

 これはゼナたちの戦いの成果だった。もはやオーゼの容量は海面に浮かぶ人の姿しかなかった。


「おい、あれを見ろ!」

 ルセンが指をさす。

 リーズが貫通させた穴の上、人で言う胸部に一際目立つ青い光が見えた。あれがオーゼの本体、核、水の魔力そのものだ。あれをゼナの剣で吸収することでこの海の闘争は終わる。


「よし、やっちまえゼナ……なんだ?」

 その時ルセンの頬に水が伝った。上を見上げる。空に灰色の雲が差し掛かっていた。


「あれは……雨雲か……?」


「ふははははっ、どうやら運は我に味方したようだ。お前たちはよくやった。だがここまでだ!」

 雨が降る。それはオーゼの体に吸い込まれ、失われた体が少しづつ再生していく。


「まずいぞ……おい、どうする!?」

「……いや、大丈夫だよルセン」

 慌てるルセンにゼナが落ち着いて答える。どういう意味か聞こうとしたその時見上げた空に答えはあった。


「ふはははは……は?」

 オーゼも気が付いたようだ。体に当たる雨がどうにも少ないことに。


「この雨はお前への恵みではない。お前を破滅へと導くものだ」

 レシュアは銀氷の息吹を空気中にばら撒き。降りしきる雨粒を凍らせて無数の氷針に変えていた。


「そんな……い、いやだ……やめて……」

 命乞いをしたところでもう遅かった。レシュアが腕を指揮者のようにおろすと氷針が一斉にオーゼに遅いかかる。

 オーゼは本体である核以外の部分が凍結した。


「ゼナ、今だ」

「やってしまいなさい!」

「ゴッちゃんであそこまでぶん投げてやるぜ」


 仲間の声援にゼナは立ち上がり背中の剣を抜いた。刀身を創造魔法で造り上げ、構える。


「行くよ……メイ」

「ああ、これでいよいよ魔力は私のものだ」


 ゼナは大地から生えたゴレムの腕に向かう。腕ががっしりとゼナを掴み、オーゼの元へと投擲させた。


「――みんなの海を返してもらうぞ、オーゼ!!」

 剣先を突き出し核に差し込む。眩い青い光がゼナとオーゼを飲み込んだ。




「どうなっ……た……」

 眩んだ目を開けると……そこにはオーゼもゼナもいなかった。


「まさか沈んだなんて言わないわよね……」

 リーズは深淵のような青い海を覗き込んだ。


「……来るぞ!!」

 レシュアが叫ぶ。

 海から水柱が湧き出る。三人はオーゼの再来かと思った。しかしそれは要らぬ心配であるとすぐに知ることになる。水柱の上に立つ一人の少年の姿で。


「水の魔力オーゼは吸収した。僕達は勝利した!!」

 

 少年の勝利宣言が響き渡り、青い海にようやくの平和が訪れた。

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