44.傷跡
まどろみ、心地の良いまどろみにゼナはいた。白昼の空間に体を横たわらせる。できることならしばらくはこうして疲れを癒していたい。しかし、それを邪魔する者が現れる。
白い体をしている彼女はこの白昼夢では紛れて消えてしまいそうだった。けれどその輪郭ははっきりとしている。それはゼナが彼女のことをよく知っているからだろう。
「メイ……夢の中にまで出てこないでよ。まだ僕はねむい――」
「いいから起きろ。これからの動きについて……」
メイの言葉を筒抜けにゼナは二度寝に入った。
「…………おい、こいつの腹を殴れ」
「へぇ? ……ぐぅは!?」
メイの言葉にゼナは間抜けな声を出した。そして次の瞬間、鋭い痛みが襲いかかる。
「――!?」
ゼナは痛みで飛び起きる。
涙目をこすり、慌てて辺りを見回す。そこには苛立った顔を浮かべるメイと、困り眉で心配そうに佇むリーズがいた。
「ななな、何事っ!?」
腹部を抑え、痛みを堪えた声で聞いた。
「ごめんごめん! 軽く起こすつもりだったんだけど思ったより入ったみたいね……あはは」
「リーズ……おはよう、じゃなくてなんで部屋に? あとなんで僕の鳩尾に拳を?」
「お前がいつまでも惰眠を貪っているから目覚ましを私が呼んでやったのだ」
「惰眠て……」
ゼナは納得いかない顔で壁に掛けられた時計を見た。時刻は朝の七時を示している。普段、パシークで農作業をするには遅刻と言っていい時間だが……。
炎の魔人、魔王の魔力であるバーニンガとの死闘。その翌日の朝である。まだ泥のように眠っていたい気持ちがゼナの中に渦巻いていく。
しかし、その死闘を一番に繰り広げたリーズがこうして健勝的いる以上は、ゼナがどうこう言う権利も気力もありはしなかった。
昨夜、激しい戦いを終えた二人は町の救助隊に発見された。軽い検査の結果、二人に大事はなく町の宿に泊まることになったのだ。
ゼナは改めて右腕を動かしてみた。へし折れた腕はすっかり元通りだ。痛みも殆どない。
「そうだ。ありがとう、メイ。怪我を直してくれて。お礼を言いそびれていたよ」
「ふん、今更いらん。それよりもだ。今後の旅路について今一度整理しなければならない。こいつの為にな」
メイは親指でリーズを指し示す。
「説明……もしかして……!」
「そ、今日から私も仲間入りというわけ。よろしくね!」
リーズは笑顔で握手の手を差し出した。
ゼナはがっしりと掴む。こんなに嬉しいことはない。まさか旅の仲間が増えるとは……!
「……さて、どこから話そうか――」
メイとゼナは今日までの旅路とその目的、倒すべき魔王の存在を語った。疑問質問沸き立つ会話に刻はあっという間に過ぎていき、朝日は完全に昇った。
「つまり……話をまとめると、ゼナはお父さんを探すため、メイは報復の為に魔王を倒す旅に。その道中でバーニンガのような魔王の一部を倒して力をつけていってる訳ね」
リーズは長話を咀嚼して飲み込んだ。実に荒唐無稽な話だが、昨日の戦いを経験した彼女にはそれが紛れもない真実だと理解できた。
「炎の魔力をお前が吸収しなければこんな長話、必要なかったんだがな」
メイはお得意の嫌味で口撃し始めた。
「そんなこと言われても不可抗力じゃない。それは勝手なことしたこいつに言いなさいよ」
リーズは自分の胸を指差した。
「言ってどうにかなるなら百万回は言っている」
ゼナは言い争う二人の光景を微笑んで見ていた。
リーズは元から魔力の素養があり、さらには炎の魔力の一部が体に備わっていた。だからメイの存在を僅かに感じ取ることができた。
それが一部ではなく全てとなった今、メイの姿を視認し会話することは何ら普通のことなのだ。メイがどう思っているのかはわからないが、ゼナはそのことがとても嬉しいく思えた。
「いいだろう、今からお前の心臓を突き刺して魔力を奪ってやる!」
「あら、その体でどうするわけ? まあ、仮に実体があっても私には叶わないだろうけど」
メイは瞼と口元を引くつかせ、リーズは煽りの挑発顔を浮かべる。
「まあまあ、二人とも喧嘩はその辺に……」
ゼナが二人の間に割って入る。二人はしばらく互いを睨み、同時にそっぽを向いた。
現実主義で人間を下に見ているメイと理想と情熱に浮かぶリーズはどうにも相性が悪い。これからの旅路に不安が浮かび上がる。まあ、どうにかするしかない……。
「はあ、こんな言い合いしてる場合じゃないわ。ゼナ、一階でソフィーさんが待ってるの。あなたと話がしたいって」
「え!? じゃあ、大分待たせているじゃないか」
「私は先に降りてるから。着替えて、あとシャワーも浴びてきなさい。じゃね!」
リーズは部屋から退出しゼナは大慌てで支度を始める。
「お、お待たせしました!」
ゼナは階段を駆け下りながらソフィーとリーズが座る席に向かう。
「おはようございます、ゼナさん! 昨晩は眠れましたかな?」
「おはようございます、ソフィーさん。おかげ様でぐっすりでした。もう少し寝て……いや何でもないです」
体の内から嫌な気を感じたので余計な事を言わないよう口を閉じた。
「リーズさんから事のあらましをお聞きしました。お二人はこの町をお救いになった、まさに英雄です!」
「いや、そんな……ところでそちらの方は?」
ゼナはソフィーの隣に座っている男性に目を向ける。
身なりの良い格好と恰幅のある姿。顔立ちは柔らかい、けれどその瞳の奥には野心が宿っている。只者ではない男だ。
「紹介が遅れました。私はこの町の町長をさせてもらっているものです」
「町長さん!? は、初めまして、ゼナと申します」
ゼナは背筋をピンと立てて一礼を送った。
「ははは、そんなかしこまることはない。君はこの町の救世主なのだから。実に感謝しているよ」
町長は朗らかな笑顔で握手を求めてきた。その笑顔にゼナも肩の力を抜き、握手を返す。
「……それにしても、まさかあのバーニンガがこんな事件を起こすとは思わなかった」
町長は打って変わって顔を暗く落とした。
その時、ソフィーが背伸びしてゼナに耳打ちする。
「町長、というか町の方にはバーニンガの正体、魔王の事はつげていません。きっとパニックになるでしょうから」
ソフィーの言葉にゼナは納得した。ただでさえ町の一大行事から引き起こった大事件。そこに魔王という情報までもが加わればバテヴはより深い絶望に包まれてしまう。
彼女の気の利いた配慮にゼナは尊敬の念で返した。
「その、町長さん。町の方はあれからどうなりましたか?」
ゼナは一番気になっていることを聞いた。
「……それは実際に見た方がいいでしょうな。どうぞこちらへ」
町長は宿の外へ歩き出した。ソフィーがそれに続き、ゼナとリーズが少し遅れて歩を進める。
「私もそれが一番気になってた。昨日はすぐに病院に運び込まれたから。町がどんな様子なのか。私たちはよく目に焼き付けなければいけない。この町が戦いでどんな傷を抱え、誰が犠牲になったのかを」
リーズの言葉にゼナの記憶が呼び起こされる。
バーニンガが武舞台に火をつけた。あっという間に燃え広がり、それは人々へと伝播した。
灼熱に身をよじらせ絶叫を上げ、助けを乞う。それが何人も重なり共鳴した。けれどその音はすぐに掻き消えた。ゼナはそう記憶している。
それは炎の轟音故か、はたまた命が燃え尽きたからか。いや、違う。真実は……。
「僕は犠牲者から目をそらした。耳を背けた。あの嘆きの声を聞いていると自分もどうにかなりそうだったから」
「無理もないわよ。私はゼナ以上に怯えてすくんで……心を閉ざした。立ち向かったゼナは立派よ」
顔を暗くするゼナの肩にリーズはそっと手を置く。その手はかすかに震えていた。彼女もあの時の記憶を蘇らせていたようだ。
「ふん、くだらん傷の舐め合いしやがって。早く観光を終わらせてくれ」
メイの吐き捨てるような場壊し発言に空気が白けてしまった。
「……あんたには人の心ってものがないわけ?」
「人じゃないんでな……そんな冗長なもの持ち合わせていない」
メイは嘲笑った。
「メイ、あんたに実体があったら今頃フルでぶん殴っていたとこよ」
「おお、そいつは怖い。人間、じゃなくてよかったよ」
拳を握り凄むリーズにメイは戯けて返す。再び二人の間にバチバチとしたものが生まれた。
「二人とも、とりあえず行こう。町長さんたちが待ってるよ」
ゼナは嗜め、早足で逃げるように歩き出した。
「「……ふんっ!」」
二人はまた息ぴったりにそっぽを向いた。
ある意味では仲が良いのかもしれない……。
宿の周りの町並みは何ら以前と変わりなかった。それはこの周辺が町の中心地から離れた場所だからだ。火の手はここまできてはいない。しかし、闊歩する人々の表情は昨日の朝とは違う。皆顔を曇らせ、絶望と喪失を胸に抱いている。
「我が町の誇りでもあったバーニンガの兇行。今でもまだ信じられない、あの男が……町の象徴とも言えた男がなぜ……そう嘆いても黒焦げたあの男は何も語らない」
町長は悲壮に包まれた声で語る。先頭を歩く彼の表情はわからない。けどきっと……誰よりも絶望しているに違いない。
「……………………」
その後一向は無言で歩き連ね、バテヴの町のシンボルであるバテヴの戦場へと辿り着いた。
ゼナは渋い顔で見上げる。
威厳あった戦場は今や見る影もない。
威風堂々とした外壁は黒焦げ、今もボロボロと瓦解を続けている。輝かしい闘いの歴史は一夜にして消失した。
不幸中の幸いはがあるとしたら周りの家屋の被害が少ない事だろう。これはソフィーの指示が功を奏した。手に追えない元凶をゼナ達にまかせ、飛び火した炎の対応に向かった。おかげで”燃え移り”による負傷者は出ていない。しかし……。
「町長さん、あれは……」
「……今回の事件の犠牲者だ」
わかってはいた事だがいざ目の当たりにすると心臓が締め付けられる。背を向けないと決めたのに今すぐ踵を返してしまいそうだ。
「この場で構わない、どうか黙祷を捧げてほしい。哀れな彼らが良き場所へ旅立てるように」
町長は涙を堪えながら黙祷を捧げた。
ゼナとリーズ、そしてソフィーもそれに習い黙祷を捧げる。ただ一人、メイだけが腕を組みつまらなさそうな顔をした。
「……ありがとう、町の英雄二人に見送られて彼らも報われる」
「そんな……僕らは……」
ゼナはどうしても後ろめたくなる。
英雄なら誰も彼もを救うものではないのか。あれだけの犠牲を出しては英雄とは……。
「君たちは英雄だ。紛れもなく。君たちがいてくれたから多くの命が助かった。そのことをどうか誇りに思ってほしい」
ゼナの心中を察したのか町長は柔らかい笑顔でそう言った。
「だってさ。今は私たちは英雄でいようよ。それがきっとこの町の人々の支えになる。そうでしょ? 町長さん!」
リーズは底抜けに明るい声で言った。彼女の姿は目が眩むほど眩しく、そして頼もしい。
「ああ、私は君たちを語り継いでいこうと思う。いつまでも忘れないように」
「わかりました……僕も忘れません。この気持ちを誇りとして生きていきます」
二人は固い約束を結び握手を交わした。
「それでは私はそろそろ失礼するよ。やる事が山積みでね。ソフィー殿もこの度は大変助かりました」
「いえいえ、私は何も。当然の事をしたまでですよ」
ソフィーはそう言いながらも自慢げな顔を隠せていない。
「では皆さん、またいつか」
町長は一行から離れていった。
「さて、改めてまして……ゼナさん、リーズさん。昨日はお疲れ様でした。大変なご活躍だったと思います」
ソフィーの声のトーンが変わった。どうやら仕事モードに切り替わったようだ。
「そこでお二人の一夜の英雄譚を是非お聞かせください! 必ず良い記事に仕上げますから!」
目を爛々に輝かせてソフィーはゼナ達に躙り寄る。
「いいじゃない、それ! 町長さんの私たちの事を忘れないって約束にも繋がるし」
リーズはソフィーに負けじと浮き足を立ち込ませる。一方のゼナは二人とは対象的に微妙な表情を浮かべた。
「どうしましたゼナさん? あっ! もしかして魔王の事を気にしてますか? 安心してください、下手に民衆の不安を煽ることは致しません。これでもプロなのですから!」
「……いえ、そうではなくて……」
ゼナは気まずそうに視線を自分の横に移す。
「そんなくだらん戯れに付き合っている暇はないぞ」
ピリピリとした空気を発しながらメイは言った。
その時――。
「何よ、いいじゃないちょっとくらいさ。そんな心の余裕さえないわけ?」
あろう事かリーズはメイに話しかけた。ソフィーの目の前で……。
「?? リーズさん、どうしたんですか? 何もないところに向かって……」
彼女の困惑は当然だ。宿り主であるゼナとバーニンガの魔力を受け継いだリーズ以外にはメイの姿は認識できないのだから。
「……あっ」
そのことにリーズも気がついたらようで、どう言い訳しようか逡巡している様子だ。
「え、えーと! 彼女はどうも疲れているみたいで……昨日のあれは激戦でしたから。ねっ!?」
「そ、そうそう、あれは大変だったー。うん、大変だった!」
誰が見ても苦し紛れの演技だがソフィーは何かを察したのか、潔く、身を引いてくれた。
「……わかりました。もちろん無理強いはしません。残念ですが今回はあきらめましょう。その代わり、今度たっぷりお話を聞かせてもらいますよ! ……ところでお二人はこの後どちらに?」
ソフィーの質問にゼナは答えた。
「王都へ行くために港町シィフィムへですか……では次は王都でお会いしましょう。私も近々寄る予定でしたので。その際にはきっとお二人の武勇伝も増えていることでしょう。楽しみが増えました!」
「はい、次は王都で! ソフィーさん大変お世話になりました」
ゼナは感謝をこめて頭を下げた。
「いえいえ、それではゼナさん、リーズさん! ご武運を!」
「ふうー、あぶなかった……リーズ、気を付けないと変な目で見られるよ」
「ごめん……気を付ける」
「……それよりもお前たちは演技を学ぶべきだな。猿のほうがまだマシなものをするぞ」
メイのぐうの音のでない言葉に二人は肩を落とす。
「……気を取り直そう。この時間ならシィフィム行の馬車はまだまだすいているはず、切り替え切り替え!」
息巻いて足を動かしたリーズをメイが言葉で制した。
「まあ待て。それよりもまずやることがある」
「やること? なに、メイ」
「ゼナ、剣を出せ」
言われてハッとした。背中に背負った鞘から剣を抜き出す。それは刀身が半分までしかなかった。
「お前が無茶したせいで、武器がこれだ」
「…………」
ゼナは悲壮の目で剣を見つめた。
「その剣、そんなに大事な物なの?」
「うん……親友が旅立ちの時に授けてくれたものなんだ。けど、これじゃあ剣としては死んでいる」
不甲斐なさが立ちこみ剣を握りしめる。あの時の攻撃は結果として意味はあったが、フィートの剣が犠牲になってしまったことをゼナは悔いている。
「メイ、つまり新しい剣を用意しろってことだね」
メイは頷く。
「こいつとはお別れか……」
「誰もそいつを捨てるとは言っていないぞ」
「え!?」
「それはそれなりの使い方があるのだ」
メイはにやりと笑った。
「一体何をしようっての?」
三人はなるべく人気のない場所へ移動した。
「まあ、お前は見ていろ。ゼナ! この剣の形を覚えているか?」
「形? それはもちろん。忘れるわけがないよ」
「なら、創造しろ」
「創造……そうかっ!」
ゼナはメイの意図を読み取った。握り締めた剣を見つめ、空白のその部分にかつての姿を想像する。
すると……半分しかなかった刀身が完全な刀身に戻り変わった。
「剣が……これが創造魔法……」
リーズは驚愕してゼナの剣を見る。今し方現れた刀身は微かに白い光を放っているが破壊される前の剣を完全に再現している。
「で、できた……! フィートの剣が復活した」
「これがあれば新しい剣なんていらないんじゃないの?」
リーズの言葉にゼナも同意する。フィートの剣は魔力で構成され、その力を誇示している。今なら何が相手でも戦えそうだ。
「そうもいかん。それはゼナの想像力から生み出されている。剣を維持するには集中力と魔力を常に消費しなければならない。だから戦闘で使うなら短期決戦、もしくはとどめの瞬間に使うべき代物だ。ゼナ、少しその剣のイメージを外してみろ」
メイに言われたとおりにする。その次の瞬間、創られた刃が揺らいだ。そして、イメージを打ち消すと比例するように剣も元の形に戻った。
「なるほどね……強力ではあるけど手放しではどうにもならないわけだ」
「みたいだね……おとなしく買おう。リーズも買いに行こうよ」
「私?」
突然の呼びかけに素っ頓狂な声を出す。
「……その、今まで腕に包帯を巻いていたでしょ。それが炎で燃えて、今は何もない。宿から出て、町を歩いているとき自然と腕を隠しながら歩いていた」
「……気づいてた? まだこの傷を晒して歩くほどの勇気はないの。傷跡っていうのは簡単には癒えない。この町と同じように……」
リーズは腕を後ろ手に組んだ。できることならゼナにもそれを見せたくはないのだろう。今回の戦い、一番の功労者はリーズだ。その彼女がこうして暗い顔をしているのは似合わない。
ゼナとリーズは武器屋に赴き、装備を購入した。ゼナはフィートの剣とさほど大差ない大きさの剣を手に取る。さすが新品、刀身が磨きかかれて鋭い切れ味を発揮しそうだ。
「なかなかいい感じよ、ゼナ!」
リーズは手を振る。彼女の腕には肘まで覆う深紅のガントレットが装備されていた。拳を主体に戦うリーズにはぴったりの物だ。炎を連想させる色味を選択したのは、彼女なりの決意の表れと過去への反抗だろうか。
「これでこの町でやることはもうない。では行くぞ」
メイの言葉で一行は馬車乗り場に移動した。
「……ええと次のシィフィム行は30分後だって」
「微妙な待ち時間だね、まあゆっくりしていよう」
二人はベンチに腰掛け、しばしのんびりとした時間を享受した。メイは無駄な時間にイライラとしている。
それは十分ほど時間が経過したときに起こった。一台の馬車が停留所に侵入した。なんの変哲もない普通馬車だ。メイはその馬車を狼狽と好奇の目で見つめていた。
「どうしたのメイ?」
「……あの馬車に乗るぞ」
「え? あれってシィフィム行なのかな」
隣のリーズに意見を聞く。
「あそこに停まるのは違うわよ。シィフィム行はこっちだもの」
「だってさメイ、待ち時間がつらいのはわかるけど……」
「あれがシィフィム行かどうかなんてどうでもいい」
「えっ?」
メイの言葉の意図が読み取れず二人は困惑する。
「あの馬車から感じる。微かだが確かなもの。あそこに同法の魔力を……」
「それって……」
「ああ、魔王の魔力。次の敵はすぐそばにいたようだ」
炎の戦いは終わりゼナ達は束の間の休息を得るはずだった。しかし魔王の悪意は彼らを休ませることなく次の戦場へと導く。




