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4.アカデミーでの記憶③

 そこからさらに時間が経つと、私の周囲にはもっと多くの変化が現れた。


 エイベル様はどんどん冷たくなっていき、ミア様と揃って招かれたお茶会では、私の席はエイベル様・ミア様とは別のテーブルになってしまった。



 また、ミア様が得意とするアカデミーの錬金術の試験前には、こんなことがあった。


「フィオナ様! 今度の実技試験も……レシピと素材を教えていただけませんか!」

「レシピと素材ですか……。あの、今度の試験の内容は魔法道具と聞いているので、設計図も必要かなと。設計図をお見せいただければアドバイスができるかもしれません……」

「設計図ですかぁ。私、そういうの苦手なんです! いつものようにフィオナ様がやってくださいませんか!」


 それはさすがにできなくて、私は固まってしまった。設計図まで、となるとさすがにカンニングに近いものになってしまう。


「そうして差し上げたいのは山々なのですが……」

「私たち、お友達ですよね!? それなら、どうか! 大丈夫ですわ、私の魔力量で作ればフィオナ様が書いたものでもばれませんから! ……私がこのアカデミーで馴染めているのは、錬金術の成績があってこそだと思うのです……もし、それがなくなったら」

「わ、わかりましたわ。今回は私が」


 慣れてきたら自分でやるべきでは、と思ったけれど、ミア様のうるうるした瞳を見ると本音はいえなくて。結局、錬金術の一番大事なところ……設計図やレシピの選定をミア様がまともに覚えることはなかった。


 一連のことは、そんな私の姿勢が良くなかったのだと思う。


 そうやってミア様は私の設計図や素材を使い実技試験でトップの成績を取りつづけた。一方、事情により魔力を使った錬金術ができない私はなぜか彼女と比較されて落ちこぼれ扱いになった。……主にエイベル様から。



 友人もいつの間にか離れてしまった。


 一番悲しかったのは、違うクラスの友人に「エイベル様にお誕生日は何をもらったの?」と聞かれたとき。


 私の誕生日はまだ先だったので首を傾げると、彼女はハッとして愛想笑いを浮かべるといなくなってしまった。


 エイベル様からのプレゼントは、いつもスウィントン家宛てに届く。間違って手配しているのではとエイベル様に確認すると、彼は悪びれる風もなく仰った。


「休日にミア嬢と街へ出たんだ。彼女の誕生日プレゼントを選ぶためにね。そこで知り合いに会ったから、君のプレゼントを買いに行ったと誤魔化した。文句はないだろう。ミア嬢は君の友人なんだから」

「あの……エイベル様は……私と婚約されておいでです。ミア様の醜聞を防ぐためにも、ど、どうか軽率な行動は……」

「君はたまに面倒なことを言うな。いつもその美しい顔を動かさず静かにしていればいいものを」


 誤解を招くような行動は慎んでほしいとお願いしたけれど、こんな風に聞き流されてしまった。


 また、その日はミア様とジュリア様とドロシー様が三人そろって同じ髪飾りをしていた。なんとなく理由を聞けなくて濁していたら、二人きりになったタイミングでミア様が申し訳なさそうに教えてくれた。


「これはジュリア様とドロシー様からのお誕生日プレゼントなんです。お揃いだと聞いたのですが、……フィオナ様は貰っていないのですかぁ?」


 と。


 そうやって、私の居場所は次第になくなっていった。


 内気な私なりに楽しんでいた王立アカデミーの生活は味気ないものになり、ミア様が転入してきてからちょうど一年後の夏に私は婚約破棄を告げられた。


 あのとき、私の味方をしてくださったのはただ一人だけだった。


 その方に面と向かってお礼を伝えられないまま、私はアカデミーを退学した。

 


お読みいただきありがとうございます!

回想はここでおしまいです。


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