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41.レイナルドとクライドの部屋

 ◇


  国王陛下との謁見を終えたレイナルドは客間に戻り、身支度を整えていた。


 今夜はレイナルドたちを歓迎する夜会が行われるらしい。下界のハリボテの城でもてなされたような晩餐会ではなく、立食形式のパーティーである。


(おそらく、出席する人数が前回とは比較にならないほど多いのだろう。俺たちを歓迎する夜会ではない。慕われていたというシルヴィア王女の娘であるフィーネをお披露目するためのものだ)


 身支度をお手伝いしますという女官たちの申し出を断ったおかげで、この客間にはレイナルドとクライドの二人きり。


 しかし、騎士団の訓練や短期遠征に同行した経験があるため、手伝いがなくても着替えは問題なかった。


(突然深夜に訪問したせいで、クライドと同室になったのも幸運だったな。これで、怪しまれることなく相談ができる)


 シャツに袖を通しカフリンクスをつけながら考えていたところで、クライドが諦めたように話しかけてくる。


「さっきの国王の話。思ってたよりずっと厳しい話だったよな。どーすんの、これ」

「……ああ。それを今考えていた。リトゥス国王は『ここに留めて帰さないという暴挙に出ることはあり得ない』と言っていたが、そんな甘い話ではないだろう」


「だよな。ずーっと秘密にしてた空の国だもん。国王はちゃんと帰してやるみたいなこと言ってたけど、俺らだって国王の一存では押し切れないこともあるってわかるじゃん? フィーネちゃんが見つけてきた絵本の内容からしても、すんなり出してもらえるわけがないんだよな。はー」


 つい先刻まで行われていた国王陛下との歓談の場で、リトゥス王国についてのあらゆることが明かされた。ずっと秘密のヴェールの中にありどんなに調べても出てこなかったあれこれがぼろぼろと語られ、驚くばかりだった。


(王妃陛下が集めた手記の内容にも合致していた。上部が黒塗りになった塔の絵。心臓にバツが描かれた人体の図。あの手記を描いた人間は国に帰れたのだろうか。一体、どんな交渉をしたのか)


 この使節団を束ねる地位にあるレイナルドにとって、全員が無事に国に帰ることは絶対だ。昨日まで剣を握り、訓練を重ねてきた自分の手のひらを見る。


(俺の役割はこれではないが。フィーネだけは俺が守りたい)


「――クライド。心の準備はしておけ」

「はいはい。優秀な王太子殿下の腕の見せ所か」

「茶化すな。足手纏いにならないようにするので精一杯だ。それに、魔法を使う人間と戦うことなんてこれまでに考えてこなかった」


 クライドから「それだよね」という軽い相槌が返ってくる。十分に危機感は持っているが、緊張しすぎないように振る舞うという点で、レイナルドとクライドはよく似ていた。


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