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31.不思議な塔へ

 晩餐会を終えた私は、レイナルド様、クライド様、ミア様、そして数人の護衛の方々と一緒に王城のはずれにある塔へとやってきていた。


 白亜の王城の一角にある、古びた石造りの不思議な塔。


 さっきまでいた華やかな大広間とは全く違った殺風景な景色に、何とも言えない不安を感じる。


「普段は使われていない場所なのかと思ったが、そうでもないようだな」

「……はい。よく手入れされていて、人が日常的に出入りしている雰囲気があります」


 レイナルド様の言葉に同意しつつ、塔の長い長い階段をぐるぐると登っていく。手すりには埃はたまっていない。触ると手に馴染んで温かみがある。たくさんの人々が利用している証拠だと思った。


 さっき使わせていただいた図書館とは完全に真逆の印象に首を傾げたくなる。そして、この階段が地味にきついです……! 少し前の私だったら絶対に上れなかったと思う。というか、もうそろそろ限界かもしれない。


 緊張を和らげたくて思考の方向を思いっきり変えたところで、踊り場のような場所に辿り着いた。まだまだ階段はぐるぐると上に続いているけれど、ルカーシュ殿下はその踊り場に私たちを案内する。


「どうぞこちらへ」

「これは……エレベーターでしょうか?」

「よく知っていますね」


 驚いた表情のルカーシュ殿下の前、緊張しているはずなのに口が止まらない。


「異国から取り寄せた、世界の魔法道具カタログに載っていました……! どこの国のものなのか載っていなかったので不思議だったのですが納得ですね。リトゥス王国のものであれば資料を提供した人も隠したいでしょうし、でも素晴らしい魔法道具の存在や構造や生成方法の一部を知ってほしいと思う気持ちもよくわかります……! 素材もですが設計図の方にとても興味があります。どのような方がこの魔法道具を生成なさったのでしょう。やはり宮廷錬金術師の方でしょうか……!」

「フィオナ王女……?」


 ルカーシュ殿下が顔を引き攣らせているのを見てしまったと思ったけれど、私の隣にいらっしゃるレイナルド様もエレベーターを見て「俺もこれそのカタログで見た。すごかったよね」と夢中になっていらっしゃる。


 仲間がいて心強いです。


 エレベーターというのは、人を乗せて上下に移動できる箱のこと。動力には魔石が使われているみたいだけれど、現物を見たのは初めてで。状況を踏まえた上でもなおワクワクが抑えきれない。


 そんな私たちを見て、ルカーシュ殿下は意外そうに微笑んだ。


「錬金術や魔法に魅入られるのは私たち一族の運命のようなものだと思っていました。ですが、まさか下界にもそんな方がいらっしゃるとは。フィオナ王女はともかく、王太子でいらっしゃるレイナルド殿下まで」

「ちっともおかしなことではない。な、フィーネ?」

「はい、レイナルド様」


 レイナルド様と微笑み合うと、ルカーシュ殿下の「さすが……婚約者ですね」という声が聞こえた。私の頬は赤くなった。


 ……そうでした、私はさっきレイナルド様の「彼女は私の婚約者だ」を否定しなかったのでした……。


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