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2.衝撃の真実

 お兄様とエメライン様に会うためにモーガン子爵家の別荘までやってきたはずが、ついつい魔法や錬金術のことに思いを馳せてしまう。


 私たちは、モーガン子爵家の広いお庭に置かれた白いテーブルセットに三人で座っている。テーブルの上にはティーセット。ダージリンティーとレモンのゼリーといちごのタルトが色鮮やかでおいしそう。そこへ、春の穏やかな風が吹き込んでくる。


 少しだけ膨らんでいるように見えるお腹に手をやり、ゆったりとしたワンピースに身を包んだエメライン様に、お兄様がブランケットをかけてあげた。そうして、二人は微笑み合った。


「エメライン、少し寒い?」

「いいえ、大丈夫ですわ」


 ぼうっとしていた私は二人の仲睦まじい姿に我に返り、頬を染める。


 夫婦ってとっても素敵。お兄様はいつも私のことばかりを心配してくれていたけれど、これからはこうやってエメライン様と幸せな家庭を築いていくんだと思う。いいな……。


 幸せそうな二人を見ていたら、なぜかレイナルド様のお顔が思い浮かんだ。なぜ。どうして……! 幸せな家庭→王太子殿下、という普通では少しありえない連想をしてしまった私は、あわててぶんぶんと頭を振った。


 それに気がついたらしいエメライン様が気遣ってくださる。


「フィオナさん、大丈夫?」

「はっ……はい! これは、ちょっとこちらの話で、何でもありません」

「そう。では、そろそろ私は席を外しますわね。ハロルド様がフィオナさんに大切なお話があるというから」


 ……大事な話? 


 何かな、と首を傾げる私の前、エメライン様は侍女の手を借りてお屋敷の中へと戻っていく。それを見送ったお兄様は私の真正面に座り直し、徐に口を開いた。


「フィオナ。とても大事な話がある」

「はい、何でしょうか?」


「お前はずいぶん強くなったな。スウィントン家から出した時は正直不安で心配で仕方なかった。でも今では立派に王宮で働いて、錬金術師として商業ギルドに魔法道具も登録し、冬風邪の流行を防いだ。今ならこの話ができると思う。」


 お兄様の言葉は、私が王宮で働くようになってできるようになったいろいろなあれこれを褒めてくださるもので。


 お兄様のお荷物でいたくなくて、家を出て働くことに決めた私はうれしさに頬が緩む。


「お兄様が安心して暮らせるようになってよかったです。私のことはもう心配しないで、エメライン様と生まれてくる赤ちゃんのことだけを考えてあげてください」

「……エメラインに子どもができて、考えるようになったんだ。両親の気持ちを」


 すっかり父親の顔をしているお兄様に、私もくすぐったい気持ちになる。


 そんな私に、お兄様はとんでもない爆弾発言を投下した。そう、スウィントン魔法伯家が没落すると知らせてきたあの日のように。


「――フィオナ。お前が両親だと思っている二人は、本当の親じゃない。父の親戚で、育ての親なんだ。本当の両親はお前が0歳の時に死んだ。私は、生みの親と育ての親、どちらも失った記憶があるんだ」


「……えっ?」


 手にしていたカップが庭の芝生の上に落ちる。


「フィオナが魔法を使える理由は、もしかして生みの両親にあるのかもしれない。私の幼い頃の記憶――途切れ途切れな上に不確かなところが多いんだが、それを総合的に判断すると、私たちの母親はリトゥス王国の王族だった可能性がある」


 お兄様は説明を続けているけれど、あまりのことに私の頭は理解が追いつかなかった。


 カップが落ちた先に小石でもあったのか、カシャンと割れる音がした。


(一応、今回のお話の伏線になるハロルド視点は、書籍2巻で書いています。WEBでも書いたかなと思って探したんだけど見つけられず)



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