第5話出会い
落ち着いた回になります。
安心して、お読みください。
「ヒィー」
近づいてくる俺に気づいたのか、男性は奇声をあげる。母親と娘は、父親の視線の先を見た。母親は娘を、抱き抱え大木に背中をつく。父親は、足が震えていたが、2人を守ろうと、前に立ち大の字をつくる。
武器を持っていないのか、構える様子がない...戦う意志は感じない。守る意志は感じる。俺は言葉が発声できない、行動で襲う意志はないと、伝えなければ。
俺は立ち止まり、お座りをした。頭を下げ、襲うつもりは無いと、示す。
その行動を見て、夫婦はお互いの顔を見て固まる。
そして静寂が訪れる。あるのは風の音だけ。
そんな静寂を、意外な人物が破る。
「きれー」
抱き抱えられた女の子は、少し興奮気味にじたばたしている。
「危ないからやめなさい!」
「そうだぞ、あれは魔物だ!」
「ゔ、ゔぇ〜〜〜ん」
「テューリー、泣かないで、ヨーシ..ヨーシ」
泣き出してしまった。母親は、背中をさすっていた。
そんな光景を見て、ゆっくり立ち上がり、その場を去ることにした。
先程まで晴れていたのに、今は雲がすっかりかかり、雨が降り始めてきた。まるで自分の心の様に...。
結局俺は魔物で、人と一緒に暮らすことが、できないのか。そんなことを思ってると、心が暗くなっていく。
俺は天を見上げて、大きく鳴いた。
「オーーーーン!オーーーーン!」
悲しげな声が、鳴り響いた。
それに気づいたのか、同種がゆらゆらと現れ始めた...
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
主人公には幸せになって、ほしいですね。
誤字・脱字ありましたら申し訳ございません。