第20話名前
グロいシーンはありませんので安心してお読みください。
朝を迎え、皆朝食の準備をしていた。
俺は立ち上がり、周囲の見回りという名目で、魔物を狩り、朝食を行っていた。食べ終わると、口周りに血がついていたため、川の水で洗い流し。彼らの元へ戻った。
戻る頃には、飯を終え、片付けを行っており、支度をし始めていた。
10分すると、支度ができたようで、少女が走ってくる。
「...準備..できた。」
そうか、昨日みたく乗ってくれ。
次々と俺の背に乗り始め、最後の人間が乗り終えるのを、確認し立ち上がる。彼らの中に、何人か帝都出身者がいたので、その人達に案内をしてもらい向かうことにした。
道中は、振り落とさない様気おつけながら走り、休憩を挟みながら、進んだ。
2時間30分ほど、走りもう少しってところで、俺の下に魔力が集められる。
俺の左前脚は地面に、沈み込む。バランスを崩し、顔が地面につきそうになったが、持ち堪え起き上がろうとすると、草が急成長し体に絡み付く。背中にいた人間達が、その草を切ろうとしてくれたが、草は俺の体を締め付けていく。この拘束から出るのは簡単だが、振り落としかねないため、抵抗はしなかった。
俺たちを囲う様兵士が出てくる。その中に1つ特別な団体があった。
「この先は、我の大切な家族達がいる。どうか引き返していただきたい」
「やっぱり話し合いなんてできないですよ。エメラルド皇」
「いいから、お前達もやれ、まだ援軍も何もきていないのだ。なら、わかってもらうしかないだろ。こちらの要望を聞いていただけるなら、我が叶えられる物は、全て答える。」
家臣達は、諦めた様な眼差しで、皇帝を見ている。
まず...拘束を外せ...喋りづらい。
「....まず拘束を外せ...喋りづらい。...だそうです。」
囲んでいた者達が、目を擦り始める。夢なのかと思い、つねったり、叩き合ったりしている。それほどまでに、目の前で起きていることが信じられなかった。
「...人を乗せている...しかも...対話できる者がいるのか...」
皇帝は驚いた後、拘束を解くよう伝えた。
兵士は、躊躇しながら拘束を、解き始めた。
拘束が取れた俺は、しゃがみ、背中から下ろした。
「目的を聞いて、いいだろうか?」
預かって欲しい。一人前になるまで、面倒をみてくれ。
「⁉︎...この名に誓い、約束しましょう。その上で、我から要望があります。」
なんだ?
「実は、この南の大陸には...」
俺の言葉は少女が伝え。会話を成立させる。彼いわく、この大陸には、グウィバーという者が、縄張りにしているため、俺がいることにより、縄張り争いがおきてしまうこと。北の大陸に行けば、縄張りにしている者はいるが、グウィバーの様な強力な魔物がいない為、比較的に安全に暮らせることを、教えてもらった。
わかった。無駄な争いはしたくないたちだから、従おう。
「ありがとう、この大陸に生きている者の代表として、感謝を。」
俺は、顔を右下に向ける。無名の少女だ。昨日こいつらの話しを聞いていて、名前がないのは、この子だけということを知った。少女は、視線に気がつき、目を合わせる。
俺が、お前の名付け親に、なってもかまわんか?
「....うん。」
少女は嬉しそうに、頷く。
俺から贈る名は、アベリア
「...アベリア..大切にする」
そんな、幸せな空気を、吹き飛ばす声が、空に鳴り響く。
そこにいた者達は、上を見上げる。
「...遅かったか。...」
いやまだだ、姿が見えないし、気配もそこまで近くない。お前らは、帝都に逃げろ!
そう言い残し、北に向かい、全力で走る。
後ろを見ると。アベリアは、手を伸ばし泣いていた。
お互い、いや、俺が生きていたら、また会えるかもな。
また会える日を楽しみに、しているぞ。
アベリア、幸せに生きろよ。
他の奴らもな。
ここまで読んでいただきありがとうございます。