まやかし屋敷ー真相編ー
「こんにちは。星川さんたちようこそ。【まやかし屋敷】へ」
「「「え……?」」」
・・・
何故、いきなり月の口から【まやかし屋敷】という言葉が出てきたのだろうか。
いや、3人はそれより……
「天城くんが喋った!?!?」
「いや普通に喋るよ」
普段学校では全く喋らない月が喋ったことのほうが驚いた。そして即本人によってそれを否定された。
玲奈はハッとなり月に謝る。
「それにしても……ここの屋敷がそう呼ばれてるの知ってるなんて」
「一応。学校でもよく聞くし。学校の近くで屋敷といえばここにしかないだろう?」
3人は「んー」と考え込む。
よく学校辺りを歩き回って何か事件はないかと毎日探している3人は確かに屋敷を見たことがないことを思い出した。
「たしかに天城の言う通りだな……」
・・・
応接間みたいに広い部屋に案内されリーンが淹れてくれた紅茶を飲みながら月から話を聞いていた。
「えぇっ!!ここ昔【まやかし一族】が住んでた屋敷なの!?」
月に改めてここが何か聞けばまずそれに驚いた。
「そうだよ。僕はここに昔【まやかし一族】が住んでいたことを聞いて来たんだ」
「へぇ……」
月は飲んでいた紅茶のカップを静かに置いてリーンの方を向き、そして3人のこと見る。
足を組んで不敵に笑って。
普段と全然違う月に3人は息を呑む。
「改めまして。僕は天城月。こっちは僕の執事のリーン」
リーンは改めてペコリとお辞儀する。
月は日本人なのになんで外国人のリーンが執事さんなんだろう。なんて玲奈は思っていた。
「僕はここずっとこの街がまやかしに被害受けてるって聞いたからここに来たんだ」
「あ。それじゃあ元々はこの街出身じゃないんだ」
月は紅茶を飲みながら「そうだよ」と言う。
玲奈は月がお茶を飲む様子をじーっと見ていた。さすがにずっと見られていたら気付くわけで
「なに。ずっと見て」
「え!えっと、なんか優雅だなぁって思って」
「それ女の子にいうセリフじゃないの?」
「で、でもそう思うの!」
むむむっとなる玲奈を見て月は少し息をつく。
そして太陽と輝を見て「よくこの子についていけるね」という顔をする。それに気づいた2人は苦笑いする他なかった。
・・・
「じゃあここがなんで新しくなったり古くなったりするのもわかってんの?」
「そう、だね。一応」
月は何故か困ったような顔になる。
何か不味いことを聞いたのかと思った太陽は「な、なんかごめん」と言う。すぐに月は「気にしないで」と答える。
「えーっ私たちで考えようよ〜!」
「れ、玲奈……あなたねぇ」
すると月は「ふっ」とふわりと笑った。
ここに来て……いや、学校でももちろん。ふわりと笑う顔など見ていない。そんな風にも笑うんだ……と3人して驚いていた。
「わ、笑われちゃったね」
「そうね…」
「ははっ恥ずかしいなお前」
3人がそういうと月はハッとしてさらにフードを深く被る。後ろに立っているリーンはそんな主人である月を見て少し嬉しそうにしていた。
玲奈はすかさず月の目の前に行き「隠さないで見せろー!」と月の脇を擽り始めた。
「!ちょ…っ…やめ…っ」
「ほらほらほら〜!」
玲奈は手を止めることなく「あははははっ」と笑う月の脇を擽り続ける。
輝は玲奈を止めようと動き、太陽はなんとなくリーンの方を見る。リーンは主人が酷い(?)目に遭ってるというのにジーッと見ているだけだった。主人が「やめろ」と言ってる。または危険な目に遭ってる時など。執事というのは止めに入るものだと思っていた太陽にはその光景が不思議に感じていた。
慌てることもなく。ただ月が擽られて笑っているのを見て嬉しそうにしていたのだから。
・・・
輝に言われても擽る手を止めない玲奈は目に写ったあるものに目を惹かれた。
今までフードに隠れて見えなかったが、深い赤い色の瞳と深い青色の髪の毛。その髪の毛の一部は深い赤色になっていた。
(日本人……じゃない?)
玲奈はそう思わざるを得なかった。
日本人特有の黒色ではないし、ましてや茶色でもない。こんな子がいるのだろうか?髪を染めている感じではなさそうなサラサラな髪。カラーコンタクトレンズが入ってるようには見えない綺麗な瞳。
ソファーの上で押し倒してしまった月の上に乗るような形になっている玲奈は目の前に映るその美しい光景に目を奪われてしまった。そして手も止めてしまったのだった。
・・・
「……で。この屋敷のことなんだが」
少し怒り口調で話す月に玲奈は頭が上がらなかった。さっきの出来事を反省している証拠なのだ…
「ここが綺麗な屋敷になったり古く傷んだ屋敷になったりするのは昔住んでいた【まやかし一族】のへいで間違いない」
「……【まやかし一族】……」
「一族については知ってるよな」
「ああ。『まやかし』という力を使って俺たちが見ることができる何かを嘘にするんだろ?」
太陽がそう言えば玲奈と輝も頷く。
「本物がにせものに。その偽物が本物になったらこの街は!ううん、この先もっと被害が広がったら日本中がパニックになっちゃうよ!」
「……そうだね。僕もそれを阻止したくてここにいるわけだし」
「ねぇ天城くん!私たちに教えて。あなたが知ってることを」
「……いいよ。リーンがああ言ってたわけだし」
・・・
【まやかし一族】
それは今から500年ほど前に出来たという。
『まやかし』という見えるものを偽物に変える力を使って人間界を支配しようと企み始めた魔界世界で生きる魔界人の集まり。
魔界人は人間界を好んでいなかった。
自分勝手だからこそいつも争いが起こる。人間界で何かあれば魔界世界もタダでは済まない。同じようなことが起きてしまうのだから。人間界で誰かが亡くなれば魔界世界でも誰かが亡くなるというように並行された世界だから。
そこで魔界世界を平和な世界にするために魔界人は人間界を支配して2度と逆らわぬようにしようと考え始めた。
[人間は真実を求めるもの。それが求められなければ。小さな事件でも解決しなければ人は人を責めるだろう。そこから小さな亀裂が入り一気に崩れるだろう]という魔界世界の王即ち一族のリーダーはそう言った。
その言葉をきっかけに魔界人…改め【まやかし一族】はありとあらゆるものに『まやかし』をかけ始めたのだった。
・・・
玲奈たち3人は言葉が出なかった。
全く知らない事実を知ったのだから。
「な、なんで天城くんそんなに詳しいの?」
「ああ…これはリーンが調べてくれたことだから」
「リーンさんすげーっすね……」
リーンは少し笑って「そんなことないですよ」と紅茶のおかわりを淹れた。
そしてこの屋敷については……
「ここ。何かの条件で新しい屋敷になるんだ」
「何かの条件で?」
「新しい屋敷になるってことは元々は古い館が正解なのか」
「流石に条件はわからなかったけど。元々古い屋敷で正解だ。所々傷んでるだろ?」
玲奈はこの屋敷に入る前の屋敷の様子を思い出して1つ月に質問する。
「偽物になるのは外見だけなの?」
「いや。中身も変える。小さなものなら掴んでも“そのもの”だけど。こういう大きいものだって中に入ってしまえば偽物ってすぐわかるだろ」
玲奈は「たしかに」となる。
けれどそうなると1つ疑問が浮かんでくる。
玲奈たちが入る前は綺麗な屋敷だったというのに今は何故こんなにも至る所が傷んでいるのだろうか。
それを月に聞くと答えはシンプルだった。
「君たちがここに入ってきた時にはもう普段の屋敷になっていたよ」
「私たちが入ってきた時には…?」
「僕がこの目でしっかり見たから間違いないよ」
一体何故玲奈たちが屋敷に入ったとき綺麗な屋敷が古い屋敷に変わったのか。その真実が明かされるのは……まだ先の話である。
事件File.1《まやかし屋敷》
内容:ある屋敷の見た目が変化する。
真相:昔、まやかし一族が住んでいた。なのでまやかしの力が残っていたのでは?
(最初の事件なのに。何かスッキリしないな……)
メモをしながら玲奈はそう思っていた。
そして【幻惑探偵団】に月が加わったのだった!
「え、僕許可してない」
加わったのだった!
「ちょっと!?」
あまりすっきりしない話となってしまいました。
んー…申し訳ないです。
徐々に明かされるんですきっと…多分
のんびりと明かされるのを待ってくれると嬉しいです!
次回から新しい事件を取り扱います。
おたのしみに♪