まやかし屋敷ー潜入編ー
「一体……どういうこと…?」
・・・
玲奈たち3人は放課後、クラスメイトが言っていた【まやかし屋敷】を捜査しに来ていた。見る時間によって見た目が変わる屋敷……そんな屋敷を捜査せずにはいられなかった。が。
「さっきまでボロかったよな?俺の目が悪りぃわけじゃねぇよな?」
「大丈夫。藍原の目は悪くないわ」
信じられないような口調で話す太陽に冷静にそう返す輝。それもそうだ。着いた時にはボロボロだった屋敷が月が屋敷に入った瞬間綺麗な…新築のような屋敷に変化したのだ。それを目の当たりにした3人はもう信じられなくてただただ呆然とするしかなかった。
「…どうするの、玲奈」
「どうするって…そんなの決まってる!」
玲奈はそう言うと屋敷の門がある所まで走って向かう。
「!ちょっと!玲奈!」
「追いかけんぞ!」
「え、ええ!」
玲奈のことは止めようとしても止めることはできないので2人はそう考えることさえ放棄して玲奈を追いかける。2人は玲奈より少し遅れて門に着く。3人は恐る恐る開けて入り、玄関のインターホンがあると思われる扉まで向かう。
さっきまで塀で囲まれ屋敷の上の方しか見えなかったが、中に入ればとても綺麗な庭が広がっていた。キチンと手入れされたガーデニング。綺麗な薔薇が咲いていた。
「アレさえ見てなければいいところよね」
「言えてる」
思わずそう零れた輝に太陽はすぐ肯定する。玲奈も「わああっ」と庭を見ており、当初の目的を忘れかけていた。
・・・
ーーーーーーーー屋敷内
窓ひとつ無い薄暗い部屋。
周りには大きな本棚が並んでいる。
部屋のど真ん中にある机。
そして机上には小さなランプ。
そこでは少年が1人座って本を読んでいた。
顔を見せないようにフードを深く被っている少年はパッと顔を上げる。
「リーン」
小さな声でそう呟く。
そうすると机上の上に置いてあるランプが揺れる。
「お呼びですか?」
さっきまでいなかった執事服に身を包んだ男性が現れそう言う。少年は「言わなくたってわかるだろ」というような口調で
「お客様だ。丁重にもてなせ」
窓ひとつない部屋にふわっと風が吹き少年のフードが取れる。フードの下に隠していた表情は不敵を笑みを浮かべていた。リーンは目を閉じ、少し笑って。
「承知致しました。“ユエ”様」
そう言ってリーンと呼ばれる執事は消えた。
ユエ様と呼ばれる少年はふぅと息をつく。
「今宵は少し荒れそうだね」
荒れそうだと言っている割には嬉しそうにそう呟いた。
・・・
扉の前まで来た玲奈たち3人。誰がドアノッカーを鳴らすのかとなったが、「ここは男である俺が行く!」という太陽の一言ですぐ決まった。
「こ、心の準備はいいか!?」
カタカタカタカタと震える手でドアノッカーを握る太陽。そんな様子を見ている女子2人は「こっちのセリフだよ」と思った。
「ちょっとー?そんな感じで私とひかるんのこと守れるわけ〜?」
「そうね。頼りない感じがしてたまらないわ」
「うるせぇなお前ら!!!」
・・・
気を取り直して。太陽は一度深呼吸してからドアノッカーを鳴らす。
コンコンコン……
静寂が辺りを包む。あまりにも静かで3人はゴクリと息を呑む。さっき月が入ったのだから留守では無い。わかっているが、やはりアレを見ては怯えずにはいられなかった。
すると、ゆっくりと扉が開く。突然のことで3人は「うわぁ!!」と悲鳴をあげる。
「おや。驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」
ふふ。と優しそうに微笑んでそう言う男性は執事服に身を包み、日本人には程遠い黄緑色がかかった長い髪を1つにまとめ眼鏡をかけている。眼鏡のレンズ越しから見える蒼色の瞳はとても綺麗で思わず見惚れてしまう。男性が困ったように「えっと……」と言う声が漏れると3人はハッとなって当初の目的を思い出す。
「あ、あの!私たち天城くんのクラスメイトなんですけど」
男性は少し驚いて「そうなんですか」と笑う。
そして少し考える素振りをしてからこう聞く。
そんな姿も絵になるような感じでまたまた見惚れてしまう。『この人はこの世に存在しているのだろうか』そんな謎の雰囲気を醸し出していた。
「何用でこちらにいらしたのですか?」
太陽と輝は「どうやって【まやかし屋敷】のことを説明しよう」と考える。住んでる人に「ここ【まやかし屋敷】って呼ばれてるんですよ!」なんて言えるわけがないし。ましてやこの男性がその噂を知っているかもわからない。とにかく失礼がないように(こうやって話しかけてる時点で失礼なのかもしれないが)話すしかない。2人…いや、輝だけはここまで考えていたが全く考えない人がいるわけで。
「ここさっきまでボロボロのお屋敷だったのに突然こんな素敵なお屋敷になった。それってどういうことなんですか?」
((そのまま言ったーー!?!?!?))
太陽と輝。心の声が初めて揃った日であった。
慌てて輝は玲奈を男性から少し離れた場所に連れて行き、太陽は「マジで玲奈がすんません!!」とペコペコ謝る。男性は頭上に「?」を浮かべていた。
・・・
「バカっなんであんな風に言うのよ!」
「なんでって……あれ以外なんて言えばいいの?」
「……」
確かに。確かにそうなのよね。と輝は思い、こうなるのならもう少し時間をかけてこの屋敷の変化を調べておくべきだったなと輝は後悔する。
「でもひかるん。あれ以外の言葉が見当たらないならあれでいいと思うんだ」
「……もう、勝手にして…」
結局、諦める他なかったわけで。
「それにしてもさっきの男性。天城と何か関係があるのかしら」
「?どういうこと?ひかるん」
輝は「はぁ」とため息をついて屋敷の方を見る。玲奈はその視線に気づき、輝と同じ方向を見る。
「簡単でしょ。私たちは天城がこの屋敷に入るのを見た。そして結構すぐに私たちもここに来たじゃない。その間、誰も屋敷には入ってない」
「そういえば、確かに。誰も見てないよね」
「ええ。そうなるとあの男性。天城より先にいたわけでしょ」
「!!この屋敷の持ち主…?」
「あの服、どう見ても執事服だったでしょ?」
玲奈は「うーーん」と頑張って思い出す。
出てきた瞬間はビックリしてあまり記憶にない。
けれど話しかけた時確かに男性は……
「……うん。執事服だった。お金持ちの人の家行ったらよく見たし。確信が持てる」
「そうなるとあの人、誰かに仕えてるのよ。その人に会うことができればこの屋敷のこともわかるんじゃないかしら」
「確かに!さすがひかるん!」
輝のその言葉に玲奈はパアッと顔を明るくして嬉しそうにそう言う。輝は「全く…」と少し呆れながらも少し笑う。1人置いてきた太陽のところに向かおうとしたとき
「おーいっ」
小走りで2人の元へやってきた太陽は「聞いて驚け!」と仁王立ちする。
「?太陽くん?どうしたの?」
「中、入ってもいいってさ」
「「!!!」」
玲奈と輝は「これは男性が仕える主人に会うことができるチャンスだ!」と思い、太陽に「ナイス!」と言い太陽を置いて男性の元へ小走りで向かった。
「ちょ、は!?俺を置いてくなよ!」
3人は男性の元へ行くとお礼を言い、男性について行った。
3人が屋敷に入った瞬間。屋敷は最初に見たボロボロの姿に変わったのだった。
すっごい投稿遅れて申し訳ありませんでした!
忙しくしてました…
第2話目です。読んでくださりありがとうございます!!
のんびり更新になってしまうこともありますが、頑張って書いていくので応援よろしくお願いします。
Twitterでも「#まやかし屋敷」で感想や応援コメントしてくださるととても嬉しいです!拡散もしてくれるともっと喜ぶ…
それではまた次回でお会いしましょう。