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ファミレスでうんこ漏らしたので、異世界転移します。

作者: jasper

 

 ファミレスでうんこ漏らした。


 嘘だとおもうけけれど、これが本当なのだ。

 先日、友達からサバゲーに誘われてウキウキしながらついて行ってしまったのが運の尽きだった。

 何もない平地で転んで、両脚を骨折した。

 全治三ヶ月の怪我である。お陰で車椅子生活である。引きこもりのクソニートなのに何やってんだよ、と親に笑われたが、本当にその通りだと思う。

 けれど、女の子から誘いだったのだ。行きたくなるのは当然だと思う。そんで、かっこいいところ見せたくなるのは当然だと思う。ゲーム開始の笛の音で緊張感から身体にいつも以上の緊張がかかるのは当然だと思う。その結果、試合始まって早々担架で運ばれてしまう二十代前半の男性がいるのは当然だと思う。

 そんなことがなんやかんやあって、可哀想だからということで親友にファミレスで飯を奢ってもらったのだが、そこで便を催し、車椅子を引いてトイレに急ごうとしたら、何を思ったのか急に親友が道を塞ぎだして、


 ファミレスでうんこを漏らした。


 そんで、遅いけれどトイレに入って残りを出した。

 夕方の4:44分に水を流して見たけど、地獄にも異世界にも飛べなかった。


 トイレから出ると親友が居た。パンツをくれて、300円の代金を請求された。「あ、俺が払うんだ」というと笑顔で「ずっと顔が暗かったから感情を取り戻してやった代」って言われた。大人しく払った。


 ここまでの流れで、普通の人間なら恥ずかしくて死にたくなると思うけれど、しかし、俺はあんまり忸怩たる気持ちにはかられていなかった。むしろ、清々しい気持ちになっていたまである。だって、世の中にはもっと恥ずかしいことがある。中学生の頃、うんこを漏らしたことを隠すためにパンツをジャケットの内ポケットに忍ばせるもあえなく友人達にバレて観衆の前で公開されたり。階段を上がっている最中に背後から干潮をされ、肺気胸になって未来永劫笑い話として語られたり、と。


 そんな俺にも一つだけ取り柄がある。それはゲームが上手いことだ。自分で言うのもなんだけど、そこそこできると思う。ジャンルはFPS。簡単に言うと、銃撃つゲーム。プロのチームにスカウトを受けて、プロゲーマーにもなった。そして、何度か大会にも出場した。自宅からでも参加できるオンラインの大会から、会場に出向くオフラインの大会まで、何度か優勝もした。そのおかげで、少しだけ知名度が上がった。


【いつも応援してます。僕は貴方のプレイが好きです。僕は病気でゲームはできないけれど、いつも配信を楽しませて見せてもらっています。ありがとう。今度の大会頑張ってください。

 このメッセージはお母さんに打ってもらってます】


 そんなメッセージが来たのは、俺がうんこを漏らした数日後、とあるゲームのオフライン大会が間近に迫る正午過ぎだった。ツイッターを開くとDMに届いていた。

 だいたい暴言メッセージで埋まる俺のDM欄に流石にこのメッセージは、泣いた。普通に号泣。その日、俺は勝つことを決めた。サバゲーに誘ってくれた女の子にはかっこいいところを見せられなかったけれど、この子にはかっこいいたところを見せようと思った。


 そして大会当日。

 負けた。

 普通に負けた。

 はい。負けました。完敗です。初戦敗退レベル。

 同じチームに所属する、同期チームにコテンパンにされた。

 意気揚々と【応援ありがとう。絶対に勝つよ。コンディションはばっちりさ‼️】なんて返信したおれのバカ‼︎ばっちりどころか、俺が一番最初にやられたよ。恥ずかしい。顔もあげられない。ツイッターも開けない。アンチが数日前の俺みたいに意気揚々とツイートしているところが容易に想像できるし、メッセージのあの子が悲しんでいるところも簡単に想像できちゃう‼︎このままだと羞恥心で死んじゃう‼︎と思って、帰り道のタクシーの中、目を瞑って悩んでいたら、突然大きな音に苛まれて目を覚ますと、


「what the fuck⁉︎」


 異世界にいた。

 いや、ガチこれマジ。

 だって、タクシーの中にいないんだもん俺。

 どこか学校の教室を思わせる空間の中にいた。数人の男女、それからタクシーのおっちゃんが俺と同じように驚いた顔で辺りを見回していた。いや、タクシーのおっちゃんって……アンタもいるかい……。それにしても、学校の教室に入ったのは何年ぶりだろうか?この歳でこの空間にいると、なんだか悪いことしてる気分になる。


「ああ?なんだよここは!?俺は仕事をしていたはずだぞ!家族を養っていかなきゃならないんだ!俺はこんなところにいちゃいけないんだ!」


 いきなり、タクシーのおっちゃんが発狂した。みんなはびくっと肩を跳ねてびびる。ちな、俺もびびる。

 タクシーのおっちゃんは慌てて立ち上がると、教室のドアをばたんっと開けて、廊下に出ようと足を踏み出した。

 直後だった。


「Oh my gosh⁉︎」


 おっさんの体が弾け飛んだ。

 と、同時、壁際にいた黒人の男性が驚いて転んだ。また、それに驚いた俺もつるんっと足を滑らせて転んでしまう。まるで、ドミノのよう。大渋滞だった。いろいろありすぎて、タクシーのおっちゃんが死んだのが霞む。てか、尻が痛い。


【ようこそ。転移転生部屋に】


 みんながタクシーのおっちゃんに(お前はスプラッタ映画で最初に犠牲になるパニックに陥りやすいモブキャラかよ)と思っていたら、今度は突然、教室の黒板に文字が浮かび上がってきた。

 その文字は一人でに綴られては消える。


【これから皆さんには自分の命をかけて、殺し合いをしてもらいます】


【ルールは簡単。貴方たちは振り分けられた能力を使って戦闘を行うだけです】


【能力の細工は意識を集中すると、確認できます】


「ハ?何言ッテンダコイツハ?能力ナンテアルワケナイダロ、バカナノコイツ?ハハッ!!」


 壁際で腕組みをしていた、猫耳メイド服を着た片言の少女が急に笑い出した。彼女は黒板の前にとことこと歩いていくと、その前にある教卓に掌をばんっとつく。黒板を睨みつける。


「テカ、コロシアイノメリットナニ?イキナリ目ヲ覚マシタラココ。モット説明please」


「メリットね。どうせ勝ち残れば、ここから出られるとかそんなとこでしょ?」


 そんな彼女に声を掛けたのは、黒板ではなく、彼女を背後から窺っていた車椅子に乗った黒髪の少女だった。彼女はここにいる女性陣の中でも抜群に目を惹く美貌だった。ので、面食いの俺は一瞬で虜になった。他の男性陣も俺と同じように鼻を伸ばして彼女を見ている。今夜のオカズは君に決めた‼︎と言っているようで気持ちが悪かった。そんな風に考えている俺が気持ち悪かった。


「オ前誰ダヨ」


「貴方と同じよ。目が覚めたらここにいた」


【メリット。それは異世界転移できるキップ。この中で生き残った二名だけが異世界に転移できます】


 片言メイドが車椅子の美少女に睨みをきかせていると、またもや黒板に文字が浮かび上がった。そのメッセージに片言メイドが眉を顰める。


「私別ニソンナノイラナイ。元ノ世界ニ帰ラセテクレレバイイネ」


【それは出来ません。貴方たちがいた世界では、貴方たちは死んだことになっています】


「ハ?ウケル。ピンピンシトリマスガナ」


 片言猫耳メイドが笑う。吹き出してケツに刺してあった猫の尻尾型ディルドが抜ける。汚な。そんな声が聞こえる。俺が言ったかも知れない。


【信じられませんか?ではこちらの映像を】


 そう綴られた黒板に映像が流れた。

 そこには誰もが見覚えのある人物が映っていた。

 そして、その人物たちが滑稽に死んでいく様が流れる。

 俺たちは自分たちの死に際を黒板によって見せられた。


「俺、タクシーで事故ったのかよ。あのおっちゃんやりやがったな」


「私はホームに落ちたみたいね」


「バイトノ帰リニ鉄骨ガ降ッテキテペチャンコ……」


 俺に続いて、車椅子の美少女と片言メイドが苦笑する。周りの人間は自分や他人の死に際を見せられて、青ざめて声も出さないようだった。


「死んだのは納得。それで、このゲームに参加して勝ち残れば異世界に行けるのも納得。だけど、死んだらどうなるの?」


【元の世界に新たな姿として転生します】


「どんな姿なの?人間?健康な体?」


【ランダムです。人間かも知れせんし、その他かも知れません。また、次の人生も『人間』に生まれ変わることができれば、人生を全うした時に再びここに戻ってくることができます。勿論ですが、その時はここにいる時の記憶はリセットされます】


「なるほどね」


 車椅子の美少女が一通り聞き終えて頷いた。

 それから、目を瞑ると、ふふ、と笑った。


「私の能力はなるほどね。どこまでも世界は理不尽ね。でも、いいわよ。此処でも何処までやれるか試してやるわ。受けて立つわよそのゲーム」


「ーーえ⁉︎」


 まさかやるの?と僕が訊ねると、車椅子の少女は「そのまさかよ」と黒髪をかきあげて言う。周りを見ると他の連中もなんだかやる気に包まれているようだった。


【では、ゲームを始めましょう。ここからは校内であれば自由に行動可能です。生存者が二名になった場合、ゲームが終了します】


 ゲーム開始の合図だろう。甲高いブザーの音が鳴って、いきなり教室のドアがばたん、と空いた。


(え、まだ俺自分の能力確認してないんだけど!?)


「ヒヒッ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ‼︎」


 と、俺が後悔していると黒板の前にいた片言猫耳メイドがいきなり高笑いを始めた。いや、笑い方キモ。厨二の俺でもそんな引き笑いしねーよ。


「ルールハ簡単ネ。コロシアイデ勝チ残レバイイネ。ソシテ運ノ良イコトニ私ノ能力ハーー」


 サッ、と風を切る音が鳴った時には、片言猫耳メイドの手に刀が握られており、それが車椅子の美少女の首元に当てられていた。

 車椅子の美少女の首元に光る刀身が当てられ、薄らと傷口が開き、鮮血が流れる。

 どうやら、片言猫耳メイドの能力は刀を具現化できるものらしい。


「なるほど。まずは弱者から殺そうって戦法ね」


「ソノ通リネ。反撃ハスルネ?」


「しないわよ。てか、できないわよ。こんな体だもの」


「ナラ、来世ハ健康ナ体デenjoyスルネ」


 片言猫耳メイドが刀を豪速球を撃ち返そうとするバットのように振り上げる。


「goodbye‼︎」


 それを勢いよく車椅子の美少女に振り下ろす直前、


「ちょっとまたあああああああああ‼︎」


 危機一髪。

 俺は車椅子の持ち手を掴むとそれをおもいきり背後に引っ張った。


「「ーー⁉︎」」


 驚くメイド。よろける美少女。その眼前を通り抜ける刀。またもや転んで骨折しかける俺。脳裏に焼き付く、引きこもりのクソニートなのに何やってんだよ、と親に笑われた記憶。

 色々カオスだったけど美少女は救えた。


「ナニヤッテンダヨ‼︎」


「何してるのよ⁉︎」


「what the fuck⁉︎」


「ちょっと、いっぺんに責めないで‼︎てか、最後のは誰だよ‼︎とにかく、逃げよう‼︎」


 最後の英語は、黒人のお兄さんだった。タクシーのおっさんが死んだ時に驚いてた人ね。

 僕は車椅子を押すと走り出す。教室を飛び出す。長く続く廊下を車椅子の車輪がガタガタと揺れる音を耳朶に聞きながら角を曲がって、背後をチラッと窺う。片言猫耳メイドはついてきていないようだ。よし。と僕はそこで息を切らして近くの壁によりかかった。


「なんで私を連れてきたの?」


「え?なんで?わからんけど、デートに誘いたかったからかな。でも、童貞だから女の子誘い方間違えたかも」


 車椅子の美少女に訊ねられたので、適当に濁して応えた。

 本当のところ、俺にも彼女を助けた理由はわからなかった。気づいたら体が動いていた。まるでヒーローだ。「顔がイケメンだったら惚れてたわ。きっと、王子様だったかも」と美少女にも褒められた。え?それ褒めてないやん。


「でも、私を助けてどうすんの?あんたにメリットないでしょ?」


「たしかにないけど。じゃあ、バイバイって言うわけにもいかないでしょ。どうするかはこれから考えるよ」


「あんたバカでしょ。後先考えずに行動するタイプね。私のタイプじゃないわ」


「そりゃ、どうも。一応、ゲームの中じゃオーダー役、リーダー役を務めていたけどね」


「ゲーム?それってポケモンとか?それなら私もやったことあるわ。あんたゴーストタイプ好きそうね。さっきの教室でもあんた幽霊みたいに目立ってなかったし」


「それは貶してる。いんきゃっていってるやん」


 君は傲慢タイプだねきっと、とは口が裂けても言えんかった。


「とにかく、この状況を打破しなきゃならない。車椅子の君を抱えながら、殺しにくる刺客を倒して……」


 え?俺が?

 俺がそんなことするの?

 引きこもりクソニートの俺が?

 サバゲーで両脚骨折した俺が?

 まじ?


「無理!!!!!!!最初から無謀だ!!!!」


「なに早くも諦めてんのよ?はぁ……」


「どうしよう!」


「どうするもなにも諦めたらいいじゃない。私を置いてあんた一人で頑張りなさいよ。それとも、私と此処で心中する?それもいいかもしれないわよ」


「それは結構あり」


「え?」


 俺が速攻返事をしたのが驚きだったらしい。車椅子の美少女は目を見開いて僕を見つめてきた。

 しばしの沈黙の後、


「本当にいいの?それで?あんたの能力もしかしたらとんでもないもので、もしかしたら勝ち残れるかもしれないのよ?死ぬのが怖くないの?」


「いい。多分それはない。それもむりだと思う。死ぬのは怖い。けど、最後に見られる光景が君のような美少女の顔だったらそれでいい」


「え、美少女?」


 美少女が不思議そうに顔を困惑させる。俺がうんうんと頷くと、彼女は「そう」と何故か笑った。


「こんな状況であんた私を口説いてるの?」


「いや、そう言うつもりじゃ……」


「いいわよ。全然タイプじゃないけど、やらしてあげる。私も最後ぐらいいいことして死にたいし」


「はい?」


 やらしたげる?

 なにを言ってるのか分からず、俺が小首を傾げると、美少女は「こいうことよ」といいながら唐突、自分の胸元に手を掛けて、着ているシャツのボタンを一つ一つ外し始めた⁉︎⁉︎


「って、なにをしてる?」


「だから、こういうことだってば」


 俺が狼狽している内にも彼女のシャツのボタンは外れていく。一つ。また一つと、黒色のブラが顔出し、胸元がチラつく。俺の脳内である有名な総統閣下が「und betrogen〈おっぱい〉 betrogen worden〈ぷるんぷるん〉と怒声をあげる。

 そして、彼女のそれはそれは大きなどんぶらこの桃味のマシュマロが二つ露わになった。


「触っていいわよ。あんた童貞だから触ったことも見たこともなんでしょ」


「は?ち、ち、ち、ちげーし、おっぱいぐらい見たことあんし!」


「あんた童貞って言ってたじゃない。もしかして嘘ついたの?」


「ママの……」


「はい?」


「小さい頃ママの見たことあんし……」


 小声で言うと、呆れられた。

 うるせぇ!


「とにかく、いいから来なさいよ。さっき私を助けたみたいに度胸みせなさいよ。ここまでしたんだから」


「本当に?本当にいいの?」


 俺が手を伸ばすと、美少女は目を瞑る。まるで、キスを待っているお姫様のように静かに頷く。頬を仄かに赤く染める。

 けれど、待っているのはズボンにテントを張った二十代前半童貞の嫌らしい掌だ。現実は残酷だネ。


 ドキドキムネムネ‼︎

 期待値が高すぎて、心音が変な音に聞こえる。


「…………」

「……早くしなさいよ」


 急かされて、俺は少しずつ彼女に掌を近づける。

 そして、掌が美少女の瑞々しい肌に触れるーー


「オ楽シミノトコロワルイネ‼︎」


 寸前だった。

 そんな片言が耳元で聞こえた。


「うわぁお。とっても嫌な予感」


 天国の時間かとおもったら一変だ!

 振り返ると、そこには血だらけの猫耳メイドがいた。

 誰かの血が付着した刀。それを何度も拭ったであろうエプロン。狂気に満ちた笑顔。爛々と光る双眸。

 どれをとってもサイコパスのそれだった。


「お巡りさんここです!ここ!今さっき女の子の胸を揉みしだこうとした変態とサイコキラーがあいまみれてます!捕まえてください!」


「ここまでのようね……」


 美少女が観念したようにふっと笑う。クールに見えるけどおっぱい丸出しなので全然滑稽。

 だけど、俺は血だらけ猫耳メイドに肩を掴まれて動けない状況。ツッコミもままならない。


「ヨウヤク見ツケタネ。観念スルネ。残リハ後ワズカネ」


「え?もうそんなに殺したんです?」


「私モ殺ッタケド他ノ奴モ勝手ニ殺リアッタネ」


「そうですか。みんなそんなに殺伐としてるんですね」


「オ前ラモ死ヌネ」


「……ひんっ‼︎」


 首元に刀を突きつけられた。

 横目でちらっと猫耳メイドを窺うと、彼女は「はぁはぁ」と息を荒げていた。いや、キモ。


「オ前ビビリカタキモイカラスグニ殺スネ」


「それはこっちの台詞ーーんぐっ」


 だーい。と言葉を続けようとしたけれど、それはままならなかった。

 何故なら、


「んぐっ、かはっ……」


 息が吸えなかった。

 喉元に穴が空いてしまったみたいに「ぜぇぜぇ」と声が霞む。

 苦しくなって蹲ると、床に赤色の液体が見える。


 血か?

 これは俺の血か?

 俺は喉を裂かれたのか?

 苦しみながら俺の前にいる美少女を見ると、彼女は青ざめた顔をしていた。彼女の表情を見る限り、その予想は当たっているらしい。


 段々と視界が霞んでいく。美少女の顔が見えなくなるのが名残り惜しい。耳元で片言の言葉が聞こえる。


「ナニカ言イ残スコトハ?」


「さいごくらい、おっぱいさわりた……かった……」


 床を這いずりながら掌を伸ばす。その先にはおっぱい丸出しの美少女。けれど、その掌はおっぱいに届くことなく彼女の足先に触れるだけで、やることやって萎れた息子のように力尽きる。


「まじ、ごめんーー」


「なんで謝るのよ‼︎私は私は私は‼︎ーーんぐっ」


 少女の苦しみにもがく声が聞こえる。彼女も喉を裂かれたらしい。


(嫌だな。最後に聞く声ぐらい。女の子が胸を揉みしだかれて喘ぐ声が良かった)


 そう思ったところで、俺の意識はぷつりと途切れた。


 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


 ふにゅん。ふにゅん。ふにゅん。ふにゅん。

 と、柔らかい感触が掌に当たって本能のままに系四回ほど揉んだと思う。


「……んっ」


 耳元で悩ましげな声が聞こえる。揉むたびに、それがどんどんと艶かしい吐息に変わる。


「ーーなにゆえ!?」


 驚いて目を覚ますと、頬を仄かに赤く染めた美少女がいた。

 俺は彼女の太ももに寝かされており、彼女の胸を掌で揉みしだいていた。


「あれ?俺って死んだんじゃなかったけ?これは夢ですか?」


 むにゅん。むにゅん。

 胸を揉みしだきながら訊く。

 死んだはずだけど、掌にはきちんとした弾力が感じられる。


「死んでないわよ。んんっ」


「あれ?なんで?」


「あんた言ってたじゃない。胸を揉むまで死ねないって。だからよ」


「だから?」


 俺が小首を傾げると、美少女が自分の胸から俺の掌を退けて咳払いする。シャツのボタンを一つずつ閉め始める。名残惜しい……。


「私の能力。治癒」


「治癒?それって傷を癒すてきな?」


 自分の首元を触ってみると、たしかに傷が癒えている。美少女の喉元を見ると彼女の傷も癒えていた。


「皮肉なものよね。転生しようとしていた人物が転移しかできないなんて」


「え?」


「このゲームの必勝法は私とチームを組むことよ。最初に能力を確認して、そして今能力を使って分かったわ」


「なにそれ?なんてライアーゲーム?」


「私の治癒能力は瀕死の状態でもかなりの確率で治癒ができるらしい。だから、私を殺すことはできない。この時点で、異世界転移のキップの一つは私のもの」


「なるほど。たしかに生き返った後だとそれも納得。他の人の能力はわかんないけど。多分現時点最強の能力だろうね。回数制限もないわけだしね」


「だけど、私は人を殺すことができない。こんな体だし。だから、仲間がいる。ある程度動ける人間が」


「なるほどね」


 うんうん、と頷く。ある程度動ける人間ね、と頷く。ある程度動ける人間?俺以外だねそれ?


「ちょっとまたまたまたまたじゃあ俺はなしってこと⁉︎」


「だれもそんなこと言ってないでしょ。あんたは少なくとも私より動けるし。それともなに?あんたも転生したい派?だったらあの片言メイドを味方につけるけど」


「ーー君は生きるんだよね。そのままの姿で他の世界に?」


「そうなるわね。本当は新しい姿になりたかったけれど。どうも世界は意地悪らしいわね」


「だったら、僕も君と行く。どうせ元の世界で人間になれてもまたゲーム三昧になるだけだと思うし」


「そう。なら、決まりね。これから私達はチーム。異世界転移しましょ。じゃあ、さそっくそこに転がる車椅子に乗せてくれるかしら?」


 少女が指さした廊下の先に、彼女の車椅子が転がっている。

 俺は頷くと、彼女の元まで車椅子を持ってきて、彼女を担ぎあげるとそこに乗せた。案外軽かった。


「貴方の名前、それから貴方の能力」


「え?」


「だから名前と能力を教えてよ。私は咲。能力は治癒」



「俺はーーだ。能力は……」


 俺は目を瞑って意識を集中させる。

 すると、自分の頭の中にあの黒板が現れて、文字を綴る。


【〇〇〇〇〇〇〇〇】


「なるほどね。僕にあった能力だよ」


 俺は右手に具象化されたマウスを握る。その軽さと触り心地の良さに懐かしさを感じると、それを上着のポケットしまって車椅子の取ってを握った。


「面白い能力ね」


 咲が笑った。



初めて異世界モノ書きました。

色々と読みにくい箇所や文章があると思いますが、多めに見てください。失礼します。

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[良い点] お尻から尻尾が抜けるシーン草
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