第七項 いじめ後遺症と働き手の減少
あらすじに筆者のいじめ遍歴を付け加えました。
前項に文章を加筆致しました。中盤の「この作業に依っていじめ行為が巡り巡って第三者達にとって~
の部分になります。
前項までがいじめはどうしたら無くせるか?減らせるか?という作者なりの考察になりました。
その結論として『いじめが社会に及ぼす作用の整理』を提案させて頂きました。
今回の第七項からいじめ行為が社会に対してどの様な作用を及ぼしているのかを、
考察しながら並べて行きたいと思います。
今回は一つの作用について考察していきます。
作用一、働き手の減少
になります。前もって書きますがヒューマニスティックな話とは程遠い物です。
理由は前項でも書かせて頂きましたが心情に訴えるのでは無く、
あくまで実害となり得るかどうかで考察を進めて行きます。
作用一の考察の前に整理したいものがあります。
いじめ被害者が大人になった時の話です。
社会とはそもそも人材が成す物でありその『人材』とは社会全体から注目されている人物達だけを指すのではなく、その時、社会的に成功している者達だけを指す訳でもありません。
つまりいじめ被害者が大人になった時に人材として見立てた場合、社会はこの部分の人材も頼りにする事になります。いじめ被害者の子供達も貴重な人材の卵という事になります。
その貴重な卵はどの様に羽化するのでしょう?いじめ行為は羽化にどの様な影響を与えるのでしょうか?
いじめは『いじめ後遺症』と呼ばれる影響を生み出します。
いじめ後遺症とは、いじめ被害を受けてから時間が経っても消えない
精神的な傷であり分かりやすく言うと一種のPTSDです。
症例としては
・対人恐怖症
・自己否定観、自責の念
・過度な不安
等があります。
・対人恐怖症
抗い難い状況の中で理不尽な苦痛を強要してくるのはいじめ加害者であり、つまりは『人』です、周りで助けてくれない傍観者も人であり、助けてくれない教師も人になります。(それぞれの事情や状況もあり、それらの人々を責めるつもりはありません。あくまで被害者からの視点、認識を想像した物です)
人が信じられない、人が怖い、という感覚が強く植え付けられるのはある種必然的な結果の様に筆者は感じます。
・自己否定観、自責の念
いじめ被害者を肯定しながらいじめる人間も居ないでしょう。
第四項でも書かせて貰いましたが、加害者は被害者が悪い奴だと、必要以上に主張、強調します。第三者からすれば「そんな言葉は気にしなくて良い」という至極当然な判断になるでしょうが、いじめ行為では加害者に沢山の賛同者が付くものでありその賛同者達も被害者を否定し続けます。(というかそんな状況で気にしない、平気でいられる人ってどれくらいいるものなんでしょうか?筆者はは凄く稀だと想像します。)
そんな逃げ場の無い状況で絶えず続く否定の言葉の中に身を置き続ければ、
知らずと染み込んでしまう言葉もあり、被害者自身もその否定の言葉を否定し続ける事が困難であり、同時に疲弊しても行きます。
いじめが終わった後もその否定の言葉達は被害者の中に残り、
子供時代のそう多く無い『他者からの自分への評価』、そのサンプルの一つとして
時には大きな声となって残るでしょう。それはそのまま悪い意味での自己評価の参考になってしまいます。
・過度な不安
先にも書きましたが、いじめ加害者は被害者を必要以上に攻め立てます。
往々にして否定しながら暴力や意地悪をするものだと思われます。
「これはお前に協調性が無いからだ」「これはお前がダサい奴だからだ」
被害者を全否定するかの様に。
これを被害者視点で見ますと被害者は何か動く度に、何か言う度に悪い事が起こり、同時に何をしても自分が否定され、
結果として自分に自信が持てなくなっていきます。
これら、いじめ被害による被害者への継続的な影響を踏まえていじめの社会への作用を考えて行きます。
作用一、働き手の減少
日本の現在の人手不足について考えて行きたいと思います。
厚生労働省のデータによると日本の有効求人倍率(働き手の募集数と応募数の比較数値)は
2009年の0.47倍から徐々に上昇し続けて、2019年には1.60倍に至ります。
これは数値が高ければ高い程働き手が不足しているという事を表しています。
因みに日本の人手不足の象徴と言っても良いでしょうバブル期(1990年)では1.40倍だった様です。現在はそれを上回る人手不足という事になります。
一応数値を書かせて頂きましたが、敢えてデータを提示するまでも無く人手不足と言うのは今の時代、どの業種も言われずとも実感している所が多いのではないでしょうか?
筆者の身の周りでは建設関係の知り合いから「力仕事だけど人手不足で身体の線の細い子も採用している」と言う話を聞いた事があります。
別業種である筆者自身の仕事場でも常に人手不足に悩まされています。
人手不足の原因は色々あるようですが、一番大きな理由は人口減少だそうです。
それに加えて興味深いデータがあります。それが日本の引きこもり人数です。
現在内閣府の調べに依りますと日本の引きこもり人数は中高年で61万人、
若年層も含めれば100万人に上る試算だそうです。
(内閣府の調査に関しては正確性に疑問の声もありました、より正確だと思われるデータをご存知の方は教えて頂けると助かります)
平成27年度の調査ではひきこもり該当者の36.7パーセントがいじめ被害の経験者でした。(最新の調査にはいじめの項目が無いので27年度の物になります)
36.7パーセントという結果ですが自分がいじめ被害にあっていた、という事実は人に話しにくく中にはいじめを自分のせいだと思い込まされる子もいるようです、この数値より多くなる可能性がある様に思います。
では引きこもりといじめの関連性について考えていきたいと思います。前述しました『いじめ後遺症』の症例と併せて考えてみます。
・対人恐怖症
多くの仕事は基本的に一人で出来る者ではありません、人に教わって人と協力して
人を助け、人に助けられ成り立ちます。そう考えれば対人恐怖症は大きなネックになる筈です。
・自己否定観、自責の念
仕事に失敗はつきものですし、若い内は先輩に怒られるのも当然です。
ところが自己否定観が強すぎると失敗や叱責を必要以上に重く受け止めてしまいます。
・過度な不安
自身の無さから積極的な行動もコミュニケーションも生まれにくく消極的になりがちです。すると評価もされ難くなるでしょう、そうすれば仕事も楽しく感じ難いでしょう。(勿論楽しいばかりが仕事ではありませんが)
そして誤解しないで欲しいのですが、これらの症状は一般の人とはかけ離れたレベルでの症状だという事です。PTSDという言い方もされる様に、非日常的な暴力や精神的な苦痛によって形成されたものであり、気持ちの持ちようではどうにもならない部分です。
そもそもいじめの経験から外に出ようとするだけで吐き気や眩暈がする人もいるようです。『いじめ後遺症』にはフラッシュバックというものもあり、イジメられた記憶が思い出されるようです。
日本の労働者人数は約6000万人だそうです。(総務省統計局2020年1月調べ)
その中で働き手にならなかった引きこもりの人数は決して少なく無い人数に思えます。当然そこには自殺者の人数も入ります。
働き手の不足はこの社会全体に生きる全ての人間を苦しめます。
只でさえ自殺者を出す程の日本の過酷な労働環境をより困難な状況に追いやります。その『実害』からは誰も逃れようがなく、大人になったいじめ加害者もそこに含まれます。
これが一つ目の作用『働き手の減少』になります。
次項からもいじめの及ぼす作用を考察していきたいと思います。
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第三者へのアプローチとしていじめ被害を心情抜きで考えて『実害』を訴えて行くのが本エッセイのコンセプトです。
ですが、実際に進めていくといじめ被害者を軽んじている様な気持ちになり筆者自身、精神的にキツく感じます。(自分の考えで始めたのに勝手な事を言うようですが)
読んでいる方の中に同様に痛たまれない気持ちや筆者に対して怒りを感じる方がいらっしゃいましたら、お怒りのお言葉で構いませんので活動報告や、人に見られたくなければメールで筆者に送ってください。
筆者なりに熟考して行きたいと思います。