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いじめについて ー敢えて心を捨てて考察すればー  作者: 緑谷トンビ
実状の整理
4/13

第三項 いじめを制限する力の模索

さて、本エッセイでは被害者を変えるのでは無く、加害者の心情に訴えるのでは無く。いじめ行為にリスクを生じさせる事を目的とさせて頂きました。

言い換えれば、いじめ行為がしにくい環境作りです。

第三者にそれが出来るか?という視点から考えて行きます。


前回、例としていじめ加害者だと就職で不利になる等のアイディアを書きました。

アイディアと書くにはあまりに荒唐無稽で実現不可能な物ですが。

そういった外圧によりいじめの加害者になると損をする仕組みが有効だと提案させて頂きました。


では第三者にはどういった外圧を作る事が可能か?を考えて行きます。


先ず、雑多に書き上げて行きます。


・就職で不利になる。

・いじめ加害者への法的なペナルティーの増加、量刑の見直し。

・『いじめ加害者』というレッテルを張る。


軽く思いつくのはこの辺りです。

先に書きますが、どれも実現の難しいものが並んでいます。

順番に整理していきます。




・就職で不利になる。

これは前項で触れましたので省かさせてもらいます。



・いじめ加害者への法的なペナルティーの増加、量刑の見直し。

現状、子供同士のいじめも大人と同様な形で様々な罪に問われる場合があるようです。

暴力を振るえば暴行罪、怪我等させれば傷害罪、悪口も度が過ぎた物は侮辱罪、物を壊されれば器物損壊罪などです。


大人と同様と言っても罪の名前が同じなだけで、受ける罰は変わってきます。やはり未成年だからです。未成年であれば少年法が適用され、大人の様に懲役刑が課せられる様な事は無いようです。同時に前科も着きません。

ただ、度合いによっては家庭裁判所が「刑事処分が相当」と判断して逮捕される事もあるようです。(14才以上の未成年)

14才以下であっても少年院に行く場合があるそうです。


この部分は逮捕も有り得る、そして『少年院』と言う重いキーワードがもっと生徒達に認識されればいじめの抑止力として働く可能性がある様です。


判例を調べたところ2000年(平成12年)以降の判例ではいじめによって、

プロレス技をかけられた生徒が頸椎を骨折、身体に障害が残った事例で

3千万程の損害賠償命令が出されたようです。

2000年以前では7千万や、加害者3人に対して2億7千500万円の支払命令もあった様です。この辺りの数字もいじめの深刻さを子供に理解させる説得力を生むかもしれません。


いじめ問題を金額で語るのはやはり少し虚しさも覚えますが、

被害者当人としては手段を問わず助かりたいという気持ち、状況かも知れません。

そして、このエッセイでは感傷を極力無視して現実的なアプローチを模索しますのでご容赦下さい。


少し長くなりましたが、法的ペナルティーの見直しについては、

罰則の重さよりもその周知の無さが問題なのかも知れません。

ただし、罰則を与えられたのは言うまでも無く何割かの加害者であり、

実際には訴えても裁判によって棄却、却下されたものも多いみたいです。


ニュースで流れて来る事例を見て判決の軽さに驚き、不審に思う人も多いのではないでしょうか?「これでは被害者が救われない、あるいは報われない」と。

この辺りは法制度の見直しになりますので、法適用範囲、量刑のバランス等の見直しが難しく時間が掛かります。

ましてや本エッセイの目指すところは素人の第三者に出来る事に的を絞っていますので一旦選択肢から除外させて頂きます。




・『いじめ加害者』というレッテルを張る。

一番簡単なのはいじめの加害者を顔と名前付きで報道する事でしょう。

『いじめをした』という事実を大人になっても持ち歩く人間はいません。その事実が大人になれば損失を生み出す可能性が十分有り得るからです。社会人になった後にいじめで同級生を自殺や不登校に追いやった人物、となればどこへ行ってもある程度は白い目で見られる事になります。

就職、仕事、取引、接客、恋愛、家族仲、あらゆる場面で比較的に不利に働きます。


ですが、当然これも実現不可能であり、同時に罰則として適当か?の判断が難しくなります。




ここまで上げた例の問題点をまとめて整理します。


先ず、加害者も子供であり守られる対象であるという事実。

時にいじめが生み出す幾つかの悲惨な結果を見れば感情として強い疑問と抵抗感が有りますが、少なくとも理屈としては正しく、社会の仕組みとしては加害者の子供も守るという姿勢自体は妥当なものと思われます。

故に厳しすぎる罰則は起こりにくく、いじめ行為に対して甘い認識を持った子供が増える要因にもなっている気がします。前例にあげた物も時として不当な程重すぎるペナルティーになりかねません。



そして同時にいじめの罪の所在、程度の重さが大人の立ち位置から見えにくいというのも難題です。


いじめの現場とは大抵が学校や教室という閉鎖空間で起こります。

たとえ外で、公衆の面前であったとしても、子供の間の出来事、子供同士の戯れ、と言われればそれもある種の閉鎖空間と言えるかも知れません。流石に見て明らかな暴力等は止める事や人を呼ぶ事が出来ますが。


つまり、いじめは大人の手の届かない所で起きる事が多い。ここも第三者の介入が難しい部分です。


最後にこれらの例では外圧を作るのにどれも人手が必要です、沢山の個人、団体に実際に動いて貰う必要があります。

この時点で実行的かどうかの大きな壁になり、

第三者がいじめを無くしたいと願っても問題解決への遠い距離を作っています。





ここまでの本エッセイの要点をまとめます。



・いじめには線引きが必要であり、その線引きが曖昧なまま大人が論ずれば、時として的外れな物になる。

逆に線引きをすれば「この部分は社会問題であり絶対に無くさなくてはいけない物である」と明確化される。


・いじめ問題解決の手段として学校側に求めるのは時間が掛かりそう。

・第三者が被害者を変えて解決しようとするのは不毛である。(あるいは筋違いである)

・加害者の心情に訴えるのは効果が薄い。

(これらへのアプローチに意味が無い訳ではありませんが棚上げにさせて頂きます)


・そこでいじめにリスクを生じさせる手段、状況づくりを目指してはどうか?

・だが、法制度や仕組みを変えるのは難しい。そして人手のかかる手段もまた難しい。

となります。




では視点を変えて新たなリスクを生み出す外圧を模索したいと思います。


加害者の良心を当てにせず、人手が掛からず制度や仕組みを変える事無く生み出す外圧。

これが前提条件となります。


そして、ここからが筆者の本格的な提案になっていきます。


加害者にリスクを負わせる状況として筆者は『恥じ』の存在に注目するべきだと考えました。

『恥じ』とは時として誰にとっても脅威となり、行動に現実的な制限を生む力が有り得ます。次項で考察していくつもりです。




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