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帰る手段無いじゃん……

何とか日付が変わる前に投稿できました……

(くっそ!こんな事になるならもっと真剣に魔法を学んでおけばよかった……)


 両肩を小柄なドラゴンの前爪に掴まれ、洞窟の中を運ばれている情けない姿のルシファーは、後悔の念に駆られていた。

 このあと窯の火付け材にされる前にアザゼルが助けに来てくれればいいが、助けに来ると一言も言っていない事からその可能性はルシファーから排除された。

 

(何とか自分一人で解決しないと……)


 今まで魔神や魔将達に頼りっぱなしであったことを思い出し、自分の無力さを痛感する。

 しかし、いつまでも後悔していては助かる命も助からない。

 そう自分に言い聞かせ、ルシファーは頭を最大限働かせる。


「俺の名前はルシファーというんだが、君の名前は?」

「……」


 まずはこのドラゴンの懐柔からだ。

 仲良くなる、弱みを握る、何でもいい。

 このまま黙って犬死するのだけは避けるのだ。

 ルシファーは上を向き、ドラゴンの顎を下からのぞくような形で問う。


「ここにはどれくらいの数のドラゴンが住んでいるんだい?」

「お父さんやお母さんと一緒に暮らしてるの?」

「鱗がきれいな色をしてるね。きっと立派なドラゴンになるんだろうな。ちなみに好きな子はいる?」


 など、複数の質問をしたが一切の回答はない。

 審議に落ちた者からの質問には答えるなとでも言われているのだろうか。

 

「そういえば、ここに来る前に君たちが守護しているという湖を見てきたんだけど、とても美しい場所だったよ。」

「……美しくなどない。」

「ん?」


 だが湖の話題を出すと、ドラゴンが初めて口を開いた。

 独り言を呟くかのようなか細い声で。


「とても水が澄んでいて奇麗に見えたけど、違うの?」

「……俺たちがここに閉じ込められているのはあの湖のせい。全然奇麗なんかじゃない……」

「コラッ、ヒュゲル!!そんなことを言うんじゃないの!!」

「っ!?」


 ルシファーからはその姿は見えないが、どうやら自分をつかんでいるドラゴン(ヒュゲルと言うらしい)の後ろにいる別のドラゴンからの声のようだ。

 声は太いが話し方からして雌のドラゴンらしい。


「でも……」

「でもじゃない!!ヤリラガ湖を守ることは大切なお役目なんだから!天罰が下るよ!」

「……」


 あの湖がヤリラガという名前であること、そしてそれを守ることをよく思っていないものがいること。

 新たに二つの情報が追加される。

 しかしこの状況を打開するにはまだ足りない。


「ヒュゲルはどうしてヤリラガ湖のことが好きじゃないの?」

「審議に落ちた奴は口を開くんじゃない!!ほらヒュゲルもさっさとそいつを連れて行きな!」

「……うん。」

 

 それ以降、彼は口を開くことはなかった。

 そうしているうちにすぐ、洞窟の中に不自然に空いた横穴にルシファーは放り投げられ、ヒュゲルの魔法によって作られた透明な壁で隔離された。


「俺はこの後どうなるの?」

「……山の栄養となるまでそこにいる。」

「燃やされたりしない?」

「……?燃やされはしないと思う。」

「良かったぁぁ。ありがとな、ほっとした。」


(アルスヘヴンめ、嘘つきやがったな?火あぶりされないじゃねぇか。)


「……変わってるね。」


 静かにそう言うと、ヒュゲルはどこかへ行ってしまった。


(山の栄養……餓死させるってことだよな。それなら落ち着いて考えられるな。)


 自らの命の寿命が予想より伸びたことで、ほんの少し心に余裕ができた。

 考えるべきことを整理しよう。


 パッと彼の頭に思い浮かんだのは三点。

 一つ目はこの空間からの脱出。

 二つ目はメリアの安否、可能なら彼女との合流。

 三つ目はアザゼルの目的の解明。


 一つ目のこの牢獄からの脱出に関してだが、ルシファー個人の力では無理だ。

 先ほど作られた透明な壁は音こそ通すものの、落ちていた石ころで殴ってもびくともしなかったからだ。

 人並みの腕力しかないルシファーでは岩を壊すことはできないらしい。

 どうにかして話術で突破するしかないようだ。

 

 二つ目のメリアの安否についてだが、あの審議の結論から見てメリアは無事だろう。

 里への滞在、というものが餌になるという意味でなければだが……

 もしメリアを餌として食おうものなら、餓死した後にあいつら全員を呪ってやるところだ。


(いや、餓死しないから!!諦めない、諦めない。)


 そして、彼女とどうやって合流するかだが、まずルシファー自身がこの牢獄から抜け出さなければならないので今は後回しだ。


 三つ目の考えるべきこと、アザゼルの目的の解明だが、こればかりはあまりにも情報が足りていない。

 何かをこの地でさせたくてルシファーたちを送り込んだのか。

 あるいはバベルから二人を排除するためか。 

 後者は考えづらい。

 何か問題を起こしたわけでもないし、ルシファーを消すタイミングならいくらでもあったはずだ。

 今になってわざわざバベルから離れた遠くの地で殺す意味があるとは思えない。

 とすると何か、それもアザゼルができない事をさせたいのだろうか?


(いやそれならメリアも一緒に来る意味はないはず……)


 メリアが鍵なのか、考えたくはないがルシファーの行動を促すための動力扱いという可能性もある。

 

(あいつの目的は後だ。最優先はここからの脱出、次点でメリアと合流して即時バベルに帰還……帰還?……あっ!!)


 そこでルシファーは大事なことを思い出した。


「俺たち、帰る手段無いじゃん……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それで君のお気に入りの彼は元気にしているかね?」

「お気に入り?あぁうちの魔王様のことかい?元気だよ。今頃ドラゴンの里で楽しんでいるんじゃないかな?」

 

 青年はお菓子の入った包みを、ロッキングチェアに座った老人に手渡す。

 二人の周りには何もない丘が広がっていた。

 植物や動物は一切存在せず、ただ地面の上に不自然に椅子が一脚あるだけだ。


「はいこれ。おじいちゃんでも食べれるように、やわらかいクッキー作って来たよ。」

「儂とそれほど年も変わらんくせに……グミは入っていないだろうね?」

「まさか。僕が年寄りにそんな酷い事をするような人間に見えるかい?」

「前回パウンドケーキと言いながら、中にガム入れていたのはどいつじゃったかの?」


 そう小言を言いつつも老人は青年、アザゼルから包みを受け取る。

 既にいつもの髪色である白色に戻っているアザゼルと同じく、老人も髪や髭などは真っ白だった。

 手入れなどは一切されている様子はなく、無人島で生活しているような姿をしていた。


「それにしてもドラゴンの里といったか。遂にバベルの悪魔で制圧しに行ったのか?」

「いいや、それでは回避できない問題が発生するからね。彼と人間の女の二人だけさ。」

「回避()()()()?君にできないことはないはずだが?」


 老人は旧友からでた思わぬ言葉に目を少し見開く。

 

「全てを僕の能力で解決したら世界は面白みを失うだろう?そうならないよう適度にストレスを与えるのさ。」

「確かに……君はそういうやつだったな。儂と同じく過干渉は良くないと考える君だからこそ、その力を宿したのかもしれない。」


 老人ははるか昔のことを思い出す。


「それにしても二人だけであの問題を解決してしまうような人物なのかね。」

「解決はしないよ。」


 そうきっぱりとアザゼルは言い切り、そして続ける。


「破壊しか方法はない。そしてそう仕向けたのは君自身だったはずだよ。」


 老人はフゥとため息をつき、やがて笑顔を見せる、


「……彼とこの先の未来、そのどちらも楽しみにしているよ。おや、もう来てしまったようだ。ゆっくり話すこともできないとは……仕方ない、私はバレないうちに戻るとしよう。」


 見た目とは裏腹にすっと立ち上がり、老人はアザゼルに手を振る。


「また会おう、友よ。」

「うん、また。次会うときにはきっと面白いことが起きるはずさ。期待してて良い。」


 アザゼルは老人にウインクをする。


「そうか。楽しみにしているよ。」


 そう言い残すと老人はまるで初めから居なかったように、消えてしまった。


「さてと……」


 アザゼルは両腕を上にあげて、伸びをする。


「今日はどんな能力の天使さんだい?」 

 

 その直後天から、アザゼルの目の前に五本の光が降り注ぐ。

 やがて光は収縮し、そこに羽をはやした天上の存在・天使がいた。


座天使スローネラファエル様の命により、貴様をこの世から滅する。」

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