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君たちにはドラゴンたちの里へ行ってほしい

次回は明日に……アップできたらいいなぁ(遠い目)

「お……俺だって好きで振られてるんじゃ……ひっく、ないんだもん……」


ルシファーは六十層の最奥に向かいつつも、まだいじけていた。


「だ、大丈夫です、ルシファー様!きっとルシファー様にふさわしい方は現れますから!!」

「そうですよ!ほら、それに私が来たじゃないですか!!」

「いや、メリア様は聖騎士の方の命を奪わない代わりの交換条件でいらしたのでは……?」

「しーっ!!それを言っちゃ……」

「うわーーーーん!!!どうせ俺なんか誰も相手にしてくれないだぁぁぁ!!」


 ロノウェとメリアは先ほどからルシファーを勇気づけているが、中々本人は立ち直りそうにない。

 

(こんな魔王が聖騎士の人たちを殺したなんて、何か信じられないなぁ……)


 メリアはトボトボと隣を歩く人物を見て、そんなことを思う。

 気性は荒くなさそうだし、話せば分かってくれるというルシファーの印象が彼女には付いていた。

 というよりむしろ、何も出来なさそうというレッテルが貼られかかっていた。


(はぁ……死ぬ覚悟でここに来た私が馬鹿みたい……)


 そうして歩いていると、次第に大きな扉が近づいてきた。

 薄暗いせいか扉が見えるまで気づかなかったが、この階層は他の層に比べて天井が高かった。

 それに気づき上をきょろきょろと眺めながら歩き、扉との距離が短くなるにつれて、得体のしれないプレッシャーがメリアを襲う。

 思わず足が止まりかけるが、ルシファーとロノウェが何事もないかのように進んでいくので、それに続くことにした。 


「ルシファーさん、ここにはどなたがいるんですか?」

「ん?あぁもう着いたのか?全然気が付かなかった……この六十層・轟圧の間にはバベルで最上位クラスの存在、魔神アスモディウスがいる。」

「魔神……」


 そういってルシファーが開けた扉の先には、アリエルからの斬撃を真正面から受けきったあの岩石の巨人がいた。

 どこか聞き覚えのある名前だと思ったが、メリアそしてルシファーとともにあの場に転移した時の悪魔だったのだ。

 そんなアスモディウスであったがこちらには気を止めず、現在複数の悪魔から攻撃を受け続けている様子を見てメリアは自分の目を疑う。

 悪魔が時々仲間同士で争うことがあるのは知っていたが、どうも様子がおかしい。

 彼が傷を負わないことも不思議だが、なにより一切の反撃をしないのだ。

 それどころか時折、直前に彼の周りにいる悪魔がした斬撃の速度と腕力を上げたものを披露し、そこから何かを得た悪魔が再びアスモディウスに攻撃を食らわせ、先ほどとは違う音を立てた様子を見て、うなずいている。


(悪魔に指導しているの?)


 悪魔に師弟関係はないと思っていたが、目の前には人間と同じく師匠と弟子のような関係があった。


「あいつとは初対面じゃないよな。他の魔神や魔将と違ってあいつは純粋に力が強い。能力や魔法を発動する必要がないから、多分接近戦ならバベルで一じゃないか?」

「接近戦でも僕の方が強いよ?」

「きゃっ!!」


 ルシファーが解説をしていると、メリアに後ろから抱き着くようにして青髪の青年アザゼルが現れた。

 以前ルシファーがあった時は白髪だったはずなのだが、髪でも染めてきたのだろうか?


「おー、びっくりした!今までどこに行ってたんだ?聖騎士が攻めて来たときお前も呼ぼうかと思ったけど全然会えなかったぞ?」

「ん?あぁごめん。ちょっと天使の皆さんとお茶をしに行ってのさ。」

「……言いたくないなら良いけど、もう少し嘘はバレないようなものにした方がいいぞ。」

「嘘じゃないって。ほんとほんと。」

「まぁどっちでも良いけどよ……それより髪どうした?色変わってるけど。」

「いやぁ、天使の皆さん、天界に白髪の男が現れると大騒ぎするから青く染めたの。結局バレちゃったから意味なかったんだけど。」

「素直にイメチェンしたかったって言えよ。」

「もー、信じてくれないんだから……それよりこっちのお嬢さんは……メリア・イスラフィールさんね。よろしく!」

「へっ?あ、よ、よろしくお願いします!」


 突然見知らぬ者に後ろから抱き着かれたうえ、名乗ってもいない名前を呼ばれ、メリアは驚きを隠せない。


「あ、あの、ルシファーさん、こちらは?」

「こいつは九十層・華楽の間にいるアザゼル。魔神の中では一番強いんだそうだ。普段は会えないから今はラッキーくらいに思えばいいぞ。」


 アリエルでさえ全く歯が立たなかったあの岩石の巨人よりも強いと知り、メリアは今までの気が抜けた状態から極度の緊張状態へと変化した。


「は、初めまして!メリア・イスラフィールと申します!」

「うん知ってる。」

「あっ……」


 メリアはルシファーに助けるよう目で訴える。


「はいはい、イジメないイジメない。それより何の用だ?」

「君に彼女ができたっていうから見に来ただけだよ?」

「なんだよ野次馬かよ。」

「寂しいんだって。僕のもとから離れてしまうんじゃないかって。」

「離れるも何も元から近づいてねぇから。」

「えぇ~?僕と過ごした日々を忘れてしまったのかい?」

「やめて!俺はそっちの気はないから!変な誤解を生むようなことは言わないで!メリアもそんな目で見ないで!」


 ルシファーに彼女ができないのはもしかして……とメリアは思ったが本人が否定する様子から見るに違うらしい。


「冗談はさておき……ここに来たのは君にお願い事があってね。」


 そういってアザゼルはメリアに抱き着くのをやめる。

 そしてニヤリと笑って突飛なことを言い出した。


「君たち二人には正体を偽って、ドラゴンたちの里へ行ってほしい。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

(拝啓、元の世界の友たちへ。

 私は……生まれたばかりの赤ん坊のように無力になってしまいました!!)


「終わったぁぁぁぁ!!!もう無理、絶対死ぬ。」

 

 ルシファーは地面に膝をつき、天を仰いでいる。


「ほらそんな落ち込まないで!立ってください、ルシファーさん!」

「いやドラゴンとか無理だって!火を噴かれて丸焦げか、一飲みされてドラゴンの糞になる未来しかないよ!!」

「大丈夫ですって。きっと何かアザゼルさんには考えがあったんだと思いますよ?」

「ないない!あいつ絶対なんも考えてないから!きっと俺が苦しむところを遠くから見て笑ってるんだって!なんたってそう……悪魔だからね!!!」

「もう、ほかの魔神の方に襲われないようにしてくれたのがアザゼルさんなんでしょう?ならきっとルシファーさんのことを大切に思ってますって。死にそうになったら助けてくれますよ!」


 ルシファーとメリアの二人はアザゼルによって、バベルから遠く離れたドラゴンたちが住む里の近くに転移させらてしまった。

 周りの悪魔は護衛につくといったが、アザゼルの『一匹でも助けに行ってごらん?助けに外に出た瞬間にそいつを存在ごと消すからね。』という一言で誰もルシファーについていこうとする者は現れなかった。

 

(せめてバフォメットがいたらなぁ……)


 バフォメットは頭が切れるし、何か折衷案を出してくれただろう。

 それをアザゼルが飲むかは別問題だが……


 そんなわけで、ルシファーたちは四方を山に囲まれた湖のほとりへとやって来たのだった。


「ほら、ドラゴンさんたちを一緒に探しましょう?」


 メリアはルシファーの手を取り引っ張る。


「メリアさん……どうしてそんな元気なの?不安じゃないの?」

「バベルに連れてこられた時に比べれば全然平気です!!」


 予想外の解答にルシファーは、はははと乾いた笑いが出た。

 もはやメリアに怖いものはないらしい。


「そしたら、とりあえずドラゴンの顔だけ拝んですぐに帰ろうか。」

「何もせず?!」


 そんなやり取りをしていると、頭上から鳥の鳴き声のようなものが聞こえた。

 二人が見上げると雲の向こうに、どうやら羽の大きな鳥がいるようで、その影だけが見えた。


「ほらこれだけ奇麗な場所へ来たんですし、バードウオッチングでもしながら向かいましょうよ!きっと楽しいですよ!!」


 メリアはそういってルシファーの手を取り前へ進もうとしたが、彼は一歩も動かない。


「もう!いい加減諦めて……」

「ねぇ、メリアさ……あれって鳥じゃなくね?」


 そう、雲の上にいるはずの鳥の影など本来見えないはずなのだ。

 地面からでも見えるほどの大きさの影が雲にあるという事は……


ギィアァァァァッァ


 先ほど天高くから聞こえた鳴き声がどんどん大きくなる。

 そしてやがて雲の下に出て、その姿を現した。


 それは赤茶色の鱗に覆われた翼の生えたトカゲ……つまりドラゴンだった。


 さらにまずいことにそのドラゴンは一直線にこの湖に向かってきていた。

 

「やばいやばいやばいやばい!!!!早く逃げないと……ってあ……」

「えっ、ちょっ、ルシファーさん何膝ついてるんですか!早く離れましょ!!」

「いや、恐怖で足に力が入んなくなっちゃった……てへっ!」

「てへっ!っじゃないですよ!死にたいんですか!?」


 先ほどまで威勢の良かったメリアですら慌てている。

 膝を急に地面について動かなくなったルシファーをみて、さらに焦っていた。

 しかしそんなことはお構いなしにドラゴンはどんどん近づき、やがてルシファーたちはその陰にのまれ、視界は暗くなった。


「「あっ!」」


 二人は目を合わせたのち、すぅーっと顔を上げる。


 そこには愚かな者たちを見下ろす一匹のドラゴンがいた。


ル「最近アップする頻度戻ったね」

作「少し時間ができたので」

ル「あー、コロナだもんね」

作「いえ、彼女がいな……」

ル「あっ……(察し)」

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