第30話 戦略的な楊一と食い意地を張るクレナの話
黒杉は腕に刺さったナイフを痛みに耐えながら抜く、その個所は赤く染まっていた。
血が付いたナイフを、そこら辺に投げ捨てた。
傷は深く、自動回復で治るには時間が掛かりそうだ。
「っく・・・はぁ・・・!」
「ご主人様!大丈夫か!?」
クレナは短刀状態を解除して、話しかける。
腕に大量の血が噴き出している姿を見て、心配していた。
そんな顔を見て、不安にさせないように強がり、頭を撫でる。
そのまま、緑の丸薬を取り出し、齧る。
「大丈夫だ、問題ない」
「で、でも・・・」
と俺はクレナに言うが・・・さっきから、腕の痛みが酷い。
自分の腕を見てみる。回復してる様子はなく、それどころか、出血が酷くなってる事に気が付く。
血が流れ続けていて、身体が重くなっていく。
その様子を見て、紅嘉はクククと悪魔みたいな顔をする。
「気づいたみたいだな!オレの能力【不死殺し(ウンステア・トゥトン)】、このナイフで刺されたものは、一時的の回復無効にする!回復ばっか頼ってると死ぬぜぇえええええ!!!」
厄介な能力だ。村人は貧弱ステータスだから、自動回復を縛られるとなると、ここから先は一発でも、食らえば死ぬことは確定だろう。
それに、さっきから、出血が酷い、これも紅嘉の能力だろう。
そういえば、最初に紅嘉が投げた顔の擦り傷は治るのに時間が掛かった。
まさに、不死殺しだな。自分が吸血鬼なら、相手にしたくない相手だ。
今でも、相手にしたくないのは変わりないけど。
「まぁ!気づいても遅いんだけどな!!」
「・・・!クレナッ戻れ!」
そう言って、再び動き出す。クレナは短刀状態に戻り、そのまま戦闘態勢になる。
紅嘉は手に持っていたを、ナイフを顔に目掛けて振る。
黒杉は、後ろにバックステップして、避ける。
だが、紅嘉はそのままナイフを、地面に深く突き刺す。
「だから、逃がすわけねえだろおお!!!」
「なにぃ!?」
しっかりと刺さったナイフを掴んだまま、体ごと振り回すように大剣を横に薙ぎ払う。
その追撃を、クレナで防ぐ。
遠心力を乗せた大剣は、今までの攻撃と比べて段違いに重い。
「っぐ!!」
俺は何とか、紅嘉の横に振った剣を防ぎ、飛ばされそうになったが、後ろに向って地面を削られつつも、持ち堪える。
しかし、攻撃は終わらなかった。
2撃目は横で薙ぎ払った後、ジャンプして、そのまま真正面でそのまま縦に振り下ろす。
腕の傷が癒えずに、防いだ時に、激痛が腕から、全身へと響くように巡る。
それでも、ここで耐えなければ、自分の死が訪れると頭の中で過る。
唇を噛み、腕の痛みを堪える。
「アハハッ!!ずっとガードしてたんじゃ!オレを倒せないぞ!!」
「ふざけんな!レベル差を考えやがれ!!防ぐことに精一杯なんだよ!!」
紅嘉は笑う、それは純粋な子供のような笑顔でだ。
しかし、その純粋な笑顔で殺されかけているのだ。これが、人を躊躇わず殺すことに慣れている証拠なんだろうか。
無意識に、足が竦んだ。
このままだと、本当に殺されかねないので、その場を凌ぐ為に【残影】を使う。
「へぇ・・・」
紅嘉は【残影】で増えた黒杉を見て、先程と違って、冷静な目で分析するように見る。
その隙に回復の丸薬を食べて、回復をしようとするが、未だに回復が遅い。
だが、腕の痛みが少しずつ引いていくのがわかる。
紅嘉は攻撃するが、攻撃がすりに抜けることで、残影だと気づく。
「随分、珍しい残影を使うねえ」
そう言うと、大剣で残影を薙ぎ払い、突っ込む。
黒杉は複数のナイフを持って、【極限投擲】を発動させる。
無数の閃光を紅嘉に襲う。しかし、そんなのお構いなく切り伏せる。
まるで、触れれば傷をつける、カマイタチのようだ。
「おいおい、マジかよ。」
思わず声に出してしまう程に。ナイフは【万能】の能力で、強化されている上に、投擲スキルで投げたのに"全て"切り伏せたのだ。
俺は常時スキルを発動させた状態で、投げ続ける。
その度に、閃光のように放たれる攻撃は、更に細く切られるのだった。
また一歩、また一歩と、世紀末な声を出して、近づいてくる。
そして、目の前まで近づいたところで、剣を振る。
食らうわけにいかない。【収納】から黒煉丸を取り出して、大剣の攻撃を防ぐ。
そして、紅嘉はもう片方の手にナイフで腕に刺そうとした。
「同じ手に、そう何度もかかると思うな!」
「っお!?
流石に二度目は無い。
クレナを、その場で手放し、地面に落とす。
ガラ空きになった、片方の手で、紅嘉のナイフを持った腕を掴みスキルを発動させる。
「極限砲撃!!!」
俺は紅嘉を奥に向って投げる。紅嘉は勢いよく壁に叩きつけられる。その衝撃で、洞窟が崩れ、岩の下敷きになる。
一か八かと思って、発動したが、うまく発動して良かった。
しかし、大丈夫だろうか?流石に岩に下敷きになっていたら、無傷ではいかない。
というか、普通の人なら死んでる。死んでないよね?
上手くいったことに油断していると、紅嘉のいた場所から埋もれていた場所からが粉々になり、笑い声が聞こえる。
「今のは流石に効いたねぇ!!まさか投擲スキルで、人まで投げれるとは思わなかったぜ!」
そう言って、何事もなかったようにケラケラと笑う紅嘉。
というか、頑丈過ぎないか!?シルクさんが逃げ出すぐらいの威力だと思って、現状で一番だせる大技を叩き込んだけど、何、清々しい顔してるの、この人は!!
クソ!これもダメなのか!俺は、どうしたらいいのか考える。
現状は何しても勝てないのは確定だ。なら、今取れる行動は一つしかなかった。
「仕方ないな、俺のとっておきをみせてやるよ!!」
俺は構える、そして警戒する紅嘉
今度は、何してくれるか楽しそうな顔をしていた。
俺は構えて、後ろに向って"走った"。
紅嘉は、何が起きたのが分からず、ポカンとした顏している。
それもその筈、黒杉が"背中"を見せて走ってるだけだった。
思考停止した紅嘉はようやく気付く。
黒杉は"逃げ出した"。
「あ、てめえええええ!逃げるな!!」
後ろから紅嘉の声が聞こえてきた。
振り向くと、物凄い剣幕で迫ってくる紅嘉がいた。
再び前を向き、そしてお決まりのセリフを言う。
「逃げるんだヨオォォォ!!!!」
とはいってもこのまま追いつかれるのは時間の問題。
そこで、俺は一つのカプセルを取り出して、投げる。
そこに出てきたのはバイク。初めて乗るのだが、パッシブの『千手』の効果でなんな乗りこなすことが出来た。
「あ、ずるい!オレはまだもらってないのに!!」
そりゃ!世紀末な声で、暴れまくる問題時には乗せたくないもんな!!
そのまま、バイクに乗って走り出させ、逃げ出した。
その遠くに響く紅嘉の声は次第に遠くになっていくのだった。
─────【しばらくして20分】
「風が気持ちがいいですね!!!」
クレナは、後ろの後部座席にしがみつきながら乗っていた。
ヘルメットは一つしかないので、クレナに装着させておいた。
さて、逃げたのは良いがこれからどうするのか・・・。
このままだと、攻撃してもダメージを与えることができない。
幸いにもここには、魔物がいるし、しかも、ご丁寧にレベルに見合った、魔物が配置されている。
ならやる事は一つだった。
「レベル上げかあ・・・」
そして、黒杉は目の前にいる、魔物を次々と轢き殺しながら、進んでいった。
―――――――――???
「やっと見つけた!」
セヌーア達は立ち止まる
そこには一人の影があった。
影は立ち止まる。
強い風が吹き、フードは捲れ、顔が剥き出しになり、見える。
アクレアは前に出た
「ウサさん、やはり貴方だったのですね。しかしその姿は・・・」
「うーさん・・・その姿は!」
そこには月ノ城の姿があった。
しかし、顔は左の側に向って黒く浸食されたいて、その姿は半分化け物の状態だった。
見てて、痛々しい姿はどこか苦しそうにしてた。
「ああ、お前たちか・・・」
目は虚ろだが、月ノ城は意識はあり、どうやら会話はできるようだ。
アクレアたちは、会話を試みる事にした。
「うーさん!その姿は何ですか!?何があったんですか!!」
「シルクさん・・・あまり刺激しないほうが・・・!」
その姿を見て、シルクは興奮する。
しかし、月ノ城は刀を構える、その瞬間目の前からいなくなり、シルクの後ろに周る。
「すまねえな、死んでくれ」
「・・・ッ!?」
そう言って、シルクの首に向って刀を振る。
しかし、シルクの首に刀に届くことはなく、アクレアの剣が月ノ城の攻撃を防いだ。
「ウサさん!本当もどうしたんですか!私たちが分からないのですか!?」
「・・・」
アクレアは訴えかける。しかし、その滲み出る殺意は、言葉に傾けることはなかった。
お互いの武器が、火花を散らす。
月ノ城は、アクレアの剣を振り払い、一瞬で元の位置戻った。
そして、見渡すように、一瞬だけだが、優しい眼に戻った気がした。
「ああ、分かるとも、セヌーア、アクレア、そしてシルク・・・か」
「何故、意識はハッキリしているのに攻撃をするんだ?」
セヌーアは問いかける。
月ノ城はため息しながら、持っていた刀を納め、話はじめる。
「ちょっとした、挨拶だろ?そんな怒るなって」
嘘だ。あれはどう見たって殺そうとしてた、だって"殺意"見えていたのだから。
シルクは涙目になっていた、無理もないだろう。今まで相棒として活動していた人が、意思と殺意を持って”初めて”殺し来ていたのだから。
「まあ、なんだ、やられてしまってな」
月ノ城の話す姿は普通だ。しかし、禍々しい魔力は隠しきれて、いなかった。
アクレアは誰にやられたのかと思い話す。
「じゃあ、いったい誰に・・・」
「それは言えないな」
「何故?」
月ノ城は罰悪そうに話す。
「呪いのせいだ。言えば俺が死ぬようになっていてる。生憎、死にたくないからな、このままだ」
「なるほど、つまりあんたの呪いを解けば聞けるってことだな」
セヌーアの魔力が膨れ上がる、何倍、何百倍にも。
その魔力に当てられた、シルクは慌てた様子でセヌーアに話しかける
「セ、セヌーアさん!?うーさんに何をするつもりですか!?明らかに人を"殺す"ぐらいの魔力を放出してるじゃないですか!?」
「あ、ああ?今更、何を躊躇ってんだよ。殺すぐらいじゃないと勝てないし、私たちが死ぬってこと分かってんの?シルル、今は、その甘さは捨てろ」
セヌーアは悟っていた、あれは今までの月ノ城じゃないということを。
普通にやってたら死ぬ。殺意の塊の相手に、今の状態じゃ"殺意"だけで殺されてしまうのだから。
月ノ城は不気味に笑いだす。その笑いは高らかになっていく。
「クク・・・クハハハハ!!いいねぇ!あぁ、たまらないね!あの頃を思い出す!お前たちの、その血で心地よくさせてくれよ!」
月ノ城の殺意がさらに膨れ上がる。
その殺意は、周りの"魔力も魔素"殺されていた。
アクレアとシルクも武器を取り出す。
空は薄暗く、ポツポツと雨が降る。
月ノ城の浸食されてない右側の目から、雫が落ちていた。
それは、雨のせいなのか、それとも本当に流しているものなのか、分からなかった。
だけど、その姿を見て、助けを求めているような気がした。
シルクは前に立ち、互いに見つめあう。
「うーさん、苦しいのですね」
シルクは、静かに【変身】をする。
しかし、その心の中では、決意、信念が一層を強くさせ、燃え上がらせた。
そして、やる事は一つ。
"笑った"のだ。
「アーッハッハッハ!あれは誰だ?鳥か?猫か?いや私だ!」
シルクは、相変わらずの意味不明な台詞を言って、震えを抑える。
「好きな言葉は猫まっしぐら!!」
シルクの紅い瞳はまっすぐ羽咲を見つめる。
「キャットうーにゃん参上!!」
そして、シルクは言う
「うーさん!貴方は少々暴れすぎです!なので・・・これが終わった金貨2枚を要求します!!」
「・・・強くなった・・な」
月ノ城は何か言った気がしたが、雨のせいで聞き取れなかった。
そして、微かに笑った気がした。
しかし、それは一瞬だった、殺意は再び膨れ上がる。
だけど、シルクは怯まなかったなぜなら
「貴方は、僕を救ってくれた。だから、次は貴方を救うヒーローなる!」
シルク達は武器を構え、圧倒的な相手に立ち向かう。
そう、他でもない、自分の仲間に。
―――――――1ヶ月後
俺とクレナは何とか、4姉妹の3人の攻撃をから逃れながら生き延びていた。
そして、かなりが上がった。
【黒杉 陽一】
職業 村人
LV52
HP7000
MP10000
SP6500
攻撃 5000
防御 5000
魔力 10000
精神 6700
素早さ 2000
器用さ 9000
運 16
フヴェズルングの人達と比べて、ステータスは劣るが
前よりは大分マシになった。
それと、毎日の筋トレと融魔制御のお陰で、体力と魔力が上がっていた。
しかし、ここの魔物は思ってた以上に強い。
ここの環境がいいのか、ゴブリンでも苦戦した。
というか、頭良くないか?普通に奇襲とかしてくるんだけど。
ゴブリンなのに陣形が完璧だったりしてて苦戦してしまった。
他にも、オーク、オーガだったり動きが無駄がなかった。
そのおかげか、成長スキルによって、ステータスがどんどん上がっていくのだった。
「ふいー・・・、クレナ飯だぞ」
「わぁい!!」
俺はクレナと一緒に朝ごはんを食べてた。
クレナはガツガツと食べていた、うんだらしない顔して食べてんな。
「やはり、ご主人様のごはんは美味しいね!!」
「それは良かった」
食事をしていると、どこから何か音が聞こえる。
その音は次第に大きくなっていく、風が強くなっていく。
「ギャオオオオオオオオオ!!」
ドラゴンだ。あれ?こっちに向って・・・って、こっちに向って来てるじゃねえか!おいいいいいいいい!
「おいいいいい!クレナこい!」
「え、ごはんが・・・」
「いいから!!」
俺達はその場から逃げ出す。
その瞬間、ドラゴンが俺達のご飯食べたたころに降りた
クンクンと匂いを嗅いで、食べ始める。
「ああああああ!私のご飯がああああ!!」
「クレナのアホ!!大声出すな!!」
ドラゴンは、俺たちの声が聞こえたのかこっちに振り向く。
その瞬間、咆哮を放つ!肌がピリピリと痺れる。
流石に、最強の種族と言われるぐらいで、凄い威圧だ。
そうして、俺たちは、翼が蒼く燃える黒い竜と、クレナの食い意地のせいで戦うことになってしまった。




