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第17話 魔眼と墓の話


あれから一週間の時が経った。


修業内容は至って、シンプルだった。

第一段階は、【融魔制御】で石を強化する。

次に、石よりも繊細に扱わないといけない、武器。

そして、最後は岩の破壊を目的にしている。


「もう一回・・・ふんぬっ!!!」


そんな黒杉は、未だに第一段階で、苦戦していた。

腕に魔力を込めて、石に魔力を込めると石が弾け飛び、壊れる。

魔素を取り入れれば、石が砂になっていく。

やはり、同じタイミングでやるしかなかった。


「ぐ・・・ぐあぁ!」


黒杉は腕の激痛を耐える。

その度に、石を落としてしまう。

今でも、痛みに耐えきれずに暴れそうになる、黒杉をユキが拘束して治療を始める。

直ぐに痛みは引いて、お礼をする。


「あ、ありがとう」

「・・・」


ユキはコクリと頷く。

一週間も立って、未だに激痛と戦っていた・・・そろそろ、やめたい。

だけど、生憎だが、諦めが悪いからな。

そんな、俺はアイリスを見る。

融魔制御は初めてやる事なのに、一回で出来てしまう、彼女は明らかに天才だ。

何か、コツとかあるのだろうか?


「なあ、アイリス」

「ん・・・なに?」


アイリスはキョトンした顔してる。

急に話しかけられたから、少しびっくりしたようだ。

そのまま、ゆっくりこちらに近づいてくる。


「アイリスは、どうやって融魔制御したんだ?あれから一週間、何度やってもうまくいかないんだ。アイリスはどうやったんだ」

「私は・・・ユキから"見える”魔力と、魔素の流れを真似ただけ・・・」

「「はい?」」


ユキも同じ反応だった。

確かに、ユキさんが魔力が強いのは肌に感じてわかるけど。

今回はの修業は融魔制御はスキルでもパッシブでもないため、魔法詠唱などしない限りは、魔力と魔素が"見える"って事はないのだ。

それこそ、月ノ城さんが洞窟で使った機械がない限りは数値化して確認ができない。

考えていると、ユキが口を開く。


「・・・【魔眼】」


ユキはそう言ったのだった。

その言葉に、アイリスは体がビクつく、顔を見てみれば、何かに恐れるような表情をしている。

この世界に魔眼という物があったんだ・・・ちょっとかっこいいと思ってしまう。

しかし、その浅はかな考えは後悔する事になった。

ユキはアイリスの目を見て話す。


「・・・魔眼、それを持つ者は疎まれる存在・・・」


ユキはそう言った。

アイリスの表情が暗くなっていく。


「魔眼は効果が強すぎる故、皆・・・その力に怯える・・・魔眼と分かれば、直ぐ晒され・・・処刑される・・・」

「なるほど」


俺はアイリスが何故、あの洞窟に閉じ込められていたかが少しわかった気がする。

多分、大体の理由は魔眼を所持していたからだろう。

ただ、それだけでもないの分かる。

だが、今は分からない。


俺はアイリスを見た、少し震えている。

きっと、魔眼のことを知られたからだろう。


「ヨウイチっ、ちが・・・」


震える声、小刻みに増えるからだ。捨てられた子犬のような

自分が魔眼を持っている、だからまた捨てられると思っているのだろうか?バカだなー・・・。


黒杉はアイリスの頭を手に置いて、そのまま撫でる。


「ヨウイチ・・・?」

「アイリス、何を怯えてんだ?」


怯える必要なんてないんだ。


「で、でも・・・私は魔眼を持ってて・・・だから、だから・・・」

「それがどうした?アイリスはアイリスだろ?」


そうだ、アイリスはアイリスなんだよ。

俺にとって、大事な存在で支えになってるんだ。

きっと、彼女がいなければ心が折れて、野垂れ死んでただろう。

魔眼?そんなもの知ったこっちゃねえな。

俺は、コイツを守るって決めたんだからな。

まあ、守られているのは自分なんだけど・・・。


アイリスは目を丸くして、見つめる。

その言葉を聞いて、安心したのだろうか?

こう、自分で言うのもあれだが、少し台詞が臭くて、照れ臭い。

そんな、彼女は涙を流してた。


「約束しただろ、一緒に旅をするってさ?俺もアイリスと一緒に、この世界を周りたいんだ。それに、この世界での価値観なんて、知らないからな。そのくらい気にすんな」

「う、うん・・・!」


アイリスは抱き着く。

服に涙でくしゃくしゃになっていた。

アイリスは強いけど、泣き虫なんだなあと思う。

結局のところ、普通の女の子に変わりないという事だ。


「あの・・・イチャイチャするのは構わないんだけど、修業しないの?」


ユキが話しかける。

アイリスはッハと我に戻りに顔を赤くして離れた。

取り合えず、気にしないでおこう。


俺はアイリスに魔眼で何が見えたか聞いた。


「アイリスはユキの魔力の流れをみたんだったな?」

「うん、そう・・・」


そう言って、いつものアイリスに戻り、説明を始める。


「なんて、表現したいいのかな・・・?」


どうやら、どう説明したらいいか困っているようだ。


「魔力は皮膚にくっ付くっていうより、血管の中を巡ってる感じ?魔素は吸い込むというより、皮膚くっ付いている?そこから、巡っている魔力は少しずつ分散させて、細かくさせる事で、魔力と魔素の衝突を抑えて、そのまま結合している・・・」


そう、黒杉の腕を触りながら、魔力がどうやって動いているを、指で線をなぞるように動かし、くすぐったい。


「ヨウイチの場合だと、無理に魔力と魔素をくっつけようとしてる感じがした。そのせいで、魔力と魔素の力が強いままだから、反発して、暴走してる感じがする・・・」


要は、磁石みたいに、同じ極だとくっ付かず、その反動で跳ね返って、魔力が暴れるって感じか。

ユキも黙って、頷く。


「なるほどな、アイリスありがとう。」


お礼を言って、もう一度やってみる。

目を閉じる。血液はどうやって、循環させている?


───心臓だ。


血液は心臓から、身体中に循環させている。

なら、魔力も同じように、自分の心臓を魔力を込めて、血液のように巡らせる。

なんとも、不思議な感覚だ。宙に浮かび上がっている感じがする。


次に空気の混じる、魔素を感じろ。

魔素はなんだ?自然のエネルギーだ。

植物と同じ様に、魔素が二酸化炭素なら、それを吸うんだ。

そのまま、ゆっくりで良い・・・吸い込む瞬間に、口を閉じ、引き寄せて、優しく肌にくっ付ける。


身体中に、巡っている魔力が散り散りになるように、外に側向って、魔素に引き寄せるのが分かる。

そうだ、集中だ。このまま、集中するんだ。

そのまま、一体化するように!


その瞬間、体の奥から全身から力が沸き上がってくる。

身体が羽のように軽い。

凄い・・・今までにない、感覚が襲って来る。

今なら、何でもできるような、そんな気がした。


「これが融魔制御・・・!!」


急に力がみなぎったせいか、集中力が切れ、全身に激痛が走る。

しかも、今までやってきた中で、一番痛い。


「イダダダダダダ・・・!?」

「よ、よういち!?」


アイリスは慌てて駆け寄った。

ユキは呆れた様子で近づき全身に魔力と魔素の調整をする。


「ゆ、ユキさん・・・ありがとう」

「・・・アホですね。集中力が切れれば制御ができなくて暴走する・・・」

「そ、それを早く言ってほしかった。」


ユキは慣れたのか少しずつ、毒を吐くようになってきた。

これも信頼されつつあるかもしれないと。

前向きに考えるようにした。




――――――――――「???」


崖の上から海が見える。

とても広く綺麗"だった"。


「よあ、久しぶりだな」


崖の上には墓が立っていた。

男は花を持って、そっと墓に上に置いた。

そのまま、懐から瓶を取り出し、瓶のコルクを抜いて、墓に聖水を掛ける。


"ミリア=ザムジード 此処に眠る"


男は月の明かりによって、照らされた。

正体は月ノ城 羽咲、フヴェズルングのリーダーだ。

月ノ城はその場に座り、いる筈もない相手に話しかける。


「俺は、お前のおかげでこうして生きてる」


その表情は何処か悲しげで、海が背景のせいなのか、雰囲気をいっそうに際立たせる。


「でも、俺はお前を守れなかった・・・ごめん」


ただただ、懺悔する。

胸に隠していた、十字架の首飾りを出し、月に向けて光らせる。


「お前にもう少し世界を見せたかったが・・・それは出来なくなった。今できるのはこの綺麗な海を見せることだけだ」


月ノ城は墓と海を見つめ、潮風を感じながら、立ち上がる。


「なあ・・・俺の選択は正しかったのか?ミリア・・・お前を救えたかもしれない、未来だってあったんだぞ?」


ただ、聞こえるのは風と草木が揺れる音。


「まあ、返事が返ってくるわけ・・・誰だ?」


月ノ城の直ぐ後ろに気配を感じた。

すぐさまに、腰に付けてた刀を手に掛け後ろを振り向く。

そこにいたのは・・・フィルネル王国の国王、ヨハン=ザムジードの姿があった。


「ヨハン、何しに来た?」


俺は憎々しそうに睨む。

しかし、ヨハンはそれに動じず、ミリアの墓に近づいた。


「そう、警戒するな」


ヨハンは近づいて、墓の上に花を置いた。


「今日は娘の命日だ。親が来てもおかしくないだろう?」


ヨハンは優しい口調で話す。


「俺はお前を許した覚えはない」

「あぁ、許されようとは思っていない。」


俺は拳を強く握りしめた。


「何故!あの時、ミリムを行かせたんだ!」

「・・・仕方なかったんだ」

「仕方ないだと!?ふざけんな!」


その言葉に、月ノ城は興奮する。

しかし、ヨハンは無表情で、それどころか、目の焦点がたまに合ってなかった。


「お前も何故分かってて、何故魔獣と魔王を討伐するんだ!答えろヨハン!」

「分かってないのは、お主だ」

「何!?」


次第に異様な雰囲気と禍々しさを感じ始める。

同時に、風が強くなっていく。


「・・・世界はもう腐ってるんだ。この世界は悪意に満ちている。救いも、希望も、何もかもだ。だから世界を・・・作り変える」


ヨハンの口調は少しずつ強くなる。

いや、本当にヨハンなのか?

明らかに、不気味に口角を上げて、笑う姿は見たことはなかった。


「そんな世界にもう希望が持てないんだ」


ヨハンは聖大剣を取り出す。


「ヨハン、お前は一体何が見えているんだ?・・・いや、お前は誰だ、応えろ。さもなくば、ヨハンと言えど、殺す」


月ノ城は我に返り、刀に手を掛けた。

殺気を感じる。


「ハハハ、何を言っている。私はヨハン=ザムジード本人だ。気にするな、時期にお前も娘の元に送ってやるさ」


ヨハンの魔力が禍々しくなる。

次第に聖大剣が黒く変色する。


「ヨハン・・・お前・・・既に・・・クソッ!」

「ククク・・・これが、かつて英雄と言われた慣れの果てだよ。絶望し、何もかも信じられなくなった。朽ちた姿ヨ」


ヨハンは不気味に笑う。


「ツキノギ・・・いいかい?神には勝てないんだ。滅びゆく運命なんだ」

「・・・やってみないとわからねぇだろ」

「いや、無理だね」


ヨハンは断言した。

しかし、月ノ城は自分が信じる道を信じ、刀をヨハンに向ける。


「ああ、そうかい!俺はそれでも抗って見せるさ!お前が絶望っていうなら、俺が希望を作ってやるさ・・・だから大人しく殺されろ。そして、希望ってのはな・・・待つだけじゃない、自分で作るもんなんだよ。アイツのようにな」

「ふん・・・では、我、英雄王ヨハン=ザムジードの力を、味わうが良い。さらばだ、ツキノギ」


同時に動き出す。互いの剣撃の音が、海に向って響く。

そして、聖水が掛かった墓は、月明かりに当てられ、泣いているよう見える。

好きな海の前で、ただ虚しく・・・泣いていた。

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