第14話 一方その頃は・・・の話
私はあれから、夢を見るようになった。
───楊一!!待って!!
一人の大切な親友を守る事が出来ない、最悪な悪夢。
───お願い!死なないで!!行かないで!!
私は、ただその夢を繰り返し見ていた。
顔の見えない、黒い鎧を着た男が、親友の胸に目掛けて、剣を刺した。
助けようとしても、黒い何かに拘束されて、身動きできず。
ただ、見る事しか出来なかった。
───待って!楊一どうするつもりのなの!?放して!放してよ!!
そして、彼は血の涙を流しながら、手を伸ばして、助けを求める。
床は血の池が溜まり、不気味な笑い声が響き渡る。
そのまま、胸に突き刺さった剣を抜いて、彼を引きずる。
───嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
徐々に、奥に引きずり、黒騎士と彼は闇へと誘う。
───動け動け動け動け!!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
身体強化しても、防御魔法も、攻撃技も、攻撃魔法も、全部全部全部発動しない。体が動かない、身体機能が停止してる、全てが止まっている。
助けたい、助けられない、そんな思考が言葉が交互に連鎖するように、繰り返し、追い付かなくなる。
間違っている、全てが間違っている、夢だ、これは悪い夢なんだ。
嫌な汗が止まらない、嫌な予感が、悪い出来事が、最悪な結末が。
そして彼は・・・。
───嫌ああああああああああああ!!!楊一!楊一いい!!!
奈落に落とされた。
途端に、周りは蒼い炎が消え、周りが暗くなる。
そして、何処からか声が聞こえる。
「守ると言ったのに」
───楊一!?何処!?何処なの!!
その声が徐々に反響する。
「嘘つき」
───楊一!違う・・・!違うの!
その言葉が彼女の心に深く突き刺さり、抉った。
嘘つき、裏切り者、許さない。その言葉が繰り返し、反響する。
守れなかったから、助けられなかったから、その報いを受けていると、自然に思ってしまう。
だから、私は謝ることしかできない。
───許して・・・ごめんなさい・・・。
そして、目の前に人影が見えてくる。
───ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ひっぐ・・・ごめん・・・なさ・・い
そして、人影はゆっくりと顔を揚げる。
人影の正体は、黒杉 楊一だった。
その目は、憎々しげに見つめた。
「さようなら」
その言葉を残して、黒杉は再び闇の中に消えようとした。
彼女は、闇の中に消えようとしている。立ち上がって追いかけて、肩を掴む。
ペチャ
触った時に、生暖かさを感じる。
思わず、自分の手を見ると、赤い液体を付着していた。
──血だ。
彼女は、血が付着した手を、拭おうとしたが、取れない。
黒杉は、振り向き、彼女の名前を呼ぶ。
「美空」
顔を上げる。
彼女が見た者は。
右半身がつぶれ、骨が剥き出しなり、肉が見え、血まみれになった。
黒杉の姿だった。
「嫌ああああああああああ!!!!」
美空は、勢いよくベットから、起き上がる。
今までにない、汗の量で、寝間着が雨に濡れたかのように、肌に張り付いていた。
「・・・また、あの夢」
自分の手に、血が付着していないかを、確認する。
付着はしていなかったが、手に雫が零れる。
「・・・っう・・・ひっぐ・・・ごめんなさい」
ただ、涙を流し、謝る事しか出来なかった。
あの日から、悪い夢を見るようになった。
いや、前にも似たような、夢を見ていた気がする。
それは、何時なのか、泡沫のように忘れていく。
「・・・訓練しなきゃ」
気持ちを切り替えて、濡れた寝間着を脱ぐ。
そのまま、シャワー室に入って、身体を洗う。
ふと、鏡を見る。
酷いクマだ。
悪い夢を見ないようにと、夜更かしして、良く訓練をするようになったせいかもしれない。
黒杉がいなくなってから、一ヶ月。
美空はシャワーした後、キャミソール姿で、ベランダの柵に寄りかかり上を向いて、青い空を眺めていた。
気分転換に、ぼーっとするだけで、あの時の光景を思い出し、再び涙を流す。
謎の黒騎士に、黒杉が殺され、そのまま、暗い闇の中へと落ちていく。
あの時の助けようとしても、動けず、落ちる瞬間・・・目があった気がした。
その顔が、今でも脳裏に焼き付いている。
美空は涙を拭き、口を嚙み締め、血の味を感じる。
「繰り返さない・・・強くならならなきゃ・・・」
もっと、力が欲しい、二度とあの悲劇を起こさない為に。
「楊一・・・」
美空は黒杉の名前を呟き、部屋に戻った。
そのまま、訓練の為に、鎧に着替え、椅子に掛けてある、剣を手に取り、部屋から出る。
「さて、やりますか・・・!まってて、絶対に助けに行くから・・・楊一」
自分の頬を手で叩き、気持ちをリセットする。
こうしないと、訓練に集中できないからだ。
「さて・・・訓練所は・・・」
広い廊下に出て、私はこのまま訓練所に向かう。
今日は一樹に戦闘を手伝ってもらう約束をしてから、遅刻はしないようにと10分前に行くようにした。
歩いていると、こちら側に歩いて向ってくる男がいた。
あの人は、板野だ。
楊一がいなくなってから、やたら絡んでくるようになってきた。
私に気づいた彼は、手を振ってやってくる。
口元が少しニヤついている。
その状態で近づいて来た。無性に腹正しい。
「晴渡さん!!今から訓練ですか!」
「ええ、まあ、そうだけど・・・」
「じゃあ、俺も一緒に良いっすか!!」
板野は訓練に行こうとすると、一緒について行こうする。
だけど、何故なんだろう?まるで底の見えない暗い穴ような、何だか嫌な予感がした。
だから、私は適当に言い訳をして、断ることにした。
「ごめんなさい・・・今日は友達訓練する予定だから、また今度にしてほしい」
「あぁ、そうですか・・・それは残念だ。」
断ると、すごく残念そうな顔なる。
気のせいだろうか、僅かに彼の口角が上がっていた。
目を擦って、再び顔をみるけど、先ほどと同じ、残念そうな顔だった。
正直、鬱々しかった。
クラスメイトが一人いなくなったのに、彼はいつも通りで平気でいたのが、腹立たしかった。
その腹正しい気持ちは何処にもぶつける事はできずに、心の中にため込んでいた。
なんで、平気なの?どうして?
楊一にいつもちょっかい出してる事は知ってた。
それを見てるだけでも嫌なのに、さらに気分が悪くなる。
これ以上、自分がもっと嫌な気分になる前に板野からその場から立ち去ろうした。
立ち去ろうとすると、後ろから「次は絶対ですよー!」って聞こえたが、無視する事にした。
気分を紛らわす為に、廊下に見える景色を眺めることにした。
高いところから見える町は綺麗だ。
この景色は、私にとってお気に入りでもある。
あちらこちらに人が見える、とても活気のある国だ。
下を見ると、今から向かう訓練所が見え、兵士達が訓練している姿も見えた。
訓練所の近くに町が見えるが、殺風景だ。
だが、良くも悪くも、自然豊かでもあって、空気が綺麗。
私は景色を眺めながら、歩いていると城の鐘がなった。
―――ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・。
「いけない!遅れる!」
景色に長く眺め過ぎたせいで、約束の時間が過ぎてしまった。
普段は遅刻しないのだが・・・この日は、嫌な事が重なり過ぎて、行動が遅れてしまった。
「っく・・・!仕方ない!奥の手!!」
私は近道をつかうべく、スキルを発動する!
足に魔力を込めて、そして窓から飛んだ。
「『跳躍』!!」
私は高く高く飛んだ、このまま、訓練所に向かう。
スカート?どうでもいい!私の見たって、何も得にならないし、超スピードで降りてるから、見られるわけがないからね。
高く飛んだ、私は風を感じる。
気持ちが良い。さっきまでの、嫌な気分が吹き飛ばされる感じがした。
跳躍飛んでいると、一樹達の姿が見えてきた。
それに気づく、一樹は周りの人に退避させる合図が見えた。
訓練所に着地まであと少し、私はスキルを唱える。
そして、ギリギリの所で地面に向けてスキルを唱え発動させた。
「『風圧』」
スキル発動させ、着地ダメージを相殺させた。
砂煙が舞いその砂煙が二人に向って振りかかる
一樹と佐野の咳払いをする声が聞こえる。
「ごめん!」
煙が晴れると、一樹と七海の姿があった。
一樹はちょっと叱るような口調で言う。
「おいおい!あぶねえだろうが!!」
「ごめんごめん!遅れそうになったからさ!」
「軌光石で念話すればいいだろ!」
正論である、っく・・・言い返せない!
「あー・・・ごめんね?」
「ったく、気をつけろよな」
「本当だよー、気づかなかったら大惨事だったんだよー?」
一樹と水樹はそう言って、そのまま、3人で訓練を始める。
次は約束しても、守れるように、がむしゃらに頑張ることしかできない。
待っててね、楊一。
必ず、向かいに行くから。
――――― 「板野の部屋」
板野は自分の部屋に戻る。
美空に会えて興奮する気持ちを抑え、笑いをこらえた。
その場で襲っても良かったが、今はその時ではないと事を、その欲望を抑える。
不気味に口角を上げ、呟く。
「イヒッ、ヒヒ・・・美空さン・・・は僕の物に・・・」
目ざわりの、アイツが消えたんだ。
「時間かかってしまったヨ・・・それも全部アイツのせいだ!!オレハ悪くない」
そうだ、全てはアイツだ、アイツのせいで振り向いてくれなかった!
だから、排除敷しなければならなかったんだ。
「でも・・・今はアイツはいない、そうだッ!!いないッ!!」
アイツはこの剣で刺して、殺したんだ。
奈落にそこに落ちたんだ!生きてるはずがない!
板野は、自分の剣を取り出し、恍惚な目で黒い剣を見つめる。
その剣は、血がべっとりとついていた。
あの日から、洗っておらず、記念品として、保管していた。
「運が良かったよ・・・皆、ケロベロスに夢中で、どんどん魔力を消費しちゃってさあ・・・ヒヒッ、簡単に拘束が、出来たよ・・・バカダナぁ」
運は僕に味方にしてくれたんだ!
"あの人"のおかげで、ボクの願いが叶ったんだ!
「あぁ~!晴渡さん!美空さん・・・!ハァ・・・ハァ・・・」
そう言って、ポケットから何かを取り出す。
美空の写真だ。
板野は、その写真を舐めながら、自分の唾液で美空に直接触れ合っていることを、想像して興奮する。
歪んだ顔が、さらに恍惚な顔になる。
「もう少し、僕のモノになるんだね・・・あぁあああああ!」
なんて、素晴らしいんだ!!
きっと、次は僕に振り向いてくれる筈!
部屋には美空の写真がびっしり埋まっていた。
「俺は忘れないよ・・・?君は私を助けてくれたんだ!」
写真には色々あった、笑ってる顔や、怒ってるかお、
入浴してる、下着姿・・・今まで彼が撮った写真のだった。
「我は君の事、何でも知ってるんだ。ヒヒ、イヒヒッ!」
板野は既に壊れていた。
愛し過ぎる、愛は狂気に染まっていた。
もう、戻れないだろう。
「あぁ、綺麗だなぁ・・・いっそうの事、犯して絶望させて、私の物に・・・、いやアイツの死体を取りに行って、その前で、犯すのも悪くないな!ああ、興奮してきた」
最初に汚すなら、俺が汚したい!
二度と逆らわないように、絶望を与えて、僕が希望を与えなきゃいけない。
「いや、私にはまだ早いだろう!もうちょっと距離を詰めてだな・・・」
そうだ、時間ならまだたっぷりあるんだ。
どうせ、この世界は・・・出られないんだから。
「それからじっくりと愛を育むんだ。君と板野でね・・・」
きっと、伝わる筈
「ボクは美空ちゃんを壊したい、彼女のもがき泣いて鳴き、そして堕ちて行く姿を・・・!」
あぁ、想像するだけでも興奮する!
「ねぇ、見せてよ、俺達に・・・、目、口、白い肌、髪、耳、足
まとめて愛してあげるかラサ・・・」
そう言って、壁に張り付いた写真を舐める。
一人、その部屋でブツブツと話す。
――――――訓練所
「ハァアアアアア!!!!雷閃光らいせんこう!!」
美空の剣が閃光の如く駆け抜ける。
その剣は、殺す勢いで一樹に向けて振った。
「遅い!!」
一樹は、その攻撃を肘と膝で挟みガードする。
そのまま、お互いに近接戦に持ち込む。
文武両道の彼女元の世界では格闘技も嗜んでい為、一樹程ではないが、身体強化で能力を向上させて応戦する。
一樹は、剣を抑えている為、片手で抑えているがその状態でもバランス保ちつつ攻撃を捌いた。
「やるわね・・・!」
「お前もな!」
二人はお互いを突き放し、距離を取る。
美空は剣を再び構える。
その時だった美空の背中からゾクッっ背筋が凍る。
そして、その嫌な方向を見ると、そこには高くそびえ立つ城だった。
その姿を見た、佐野は美空に話しかける。
「美空ちゃんどうしたの?」
「いや、何でもないわ」
僅かに感じた悪寒が、気持ち悪い。
何かの予兆?どうも嫌な予感がした。
悪寒を背負ったまま、訓練を続ける。
美空は心配させないと、いつも通り振る舞いを続けた。
「さあ!続きよ!私たちはもっと強くならなきゃいけないんだからね」
「おう!そうだな!強くなって早くアイツの所に向いに行こうぜ!」
そう言って、今日も剣を振る。
だが、美空は知らない、これから先、自分の身の危険が起こることを・・・。




