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看護の道  作者: 蒼龍 葵
二章 贈られた有難い言葉
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「白衣を着たら仕事人」


 母が「看護師」として私に最初に送った言葉がある。それは「おめでとう」ではなく、「私達は白衣を着たら仕事人。プライベートは絶対に持ち込んじゃダメだよ」だ。

 勿論そんなことは理解していたし、恋愛とか浮いた話の全く無い私にとって仕事に持ち込む甘いネタなんてなかった。


 しかし現実として私が最初の病院で働けたのはほぼ9割は『親の七光り』というものだろう。

 私はコミュ障だったので、最初から忙しい救急や外科は向いていなかったので、穏やかな『死』と対面する呼吸器内科を志望した。当時クラスメイトのひとりも同じく呼吸器内科を志望していたが、私の要望が通ったのは多分母親のおかげだ。看護部長ですらうちの母親の話をするくらいで、副部長は母親をずっと買ってくれた恩人。その娘が就職したんだから少なからず……間違いなく影響はあっただろう。


 私立病院で就職した私は看護師400人を超える中のひとりとなった。大勢の中のひとり。企業に守られているから安心。私は最初そんな気持ちしかなかった。

 しかし現実はそれだけでは収まらない。

 

 たしかに私は大勢の看護師の中にあるひとりだ。けれども、そのひとりの行う事によって病院が傾くことだってある。よく巷で耳にする事件がそう。

 たった一人の看護師が起こした不祥事で病院は悪名が立ち火の車。そんなこと他人事じゃない。


 私は就職して改めて命の重さを知ったのだ。実習とは違う、責任感。天国に一番近い病棟と呼ばれた呼吸器内科の業務。

 大勢の中の一人だが、私がその患者を受け持ちしている間は自分に責任があるのだ。そんな当たり前のことすら働くまで気づいていなかった愚かな私だが、当時を支えてくれたのは二人の同期入社した仲間と、厳しくも優しいプリセプターのお陰だろう。


 母親が白衣を着たら仕事人と言っていたことに気づいたのは働いてすぐだ。私は元々おとなしい性格だったので、患者にキャピキャピ(死語)接することはなかった。反面、同期は一歳年上だが子供のように楽しそうに接するので患者からは「あの子新人よね」と言われる。

 何故か私は新人と思われずに、36歳三人の子持ちという謎のレッテルを20歳の時からずーーーっと言われ続け、複雑ながらも新人扱いされなかったお陰で患者に苦労はしなかったのは好き思い出です。

 つまり白衣を着ていると新人だろうがベテランだろうが、患者からしたら一緒なわけです。

 患者に「私は新人なので」という言い訳は通用しない。当時のおかんは私にそれを告げたかったのかな。今ではこの言葉の有難さを噛み締めて仕事をしております。

 

 これから看護師になりたい方へ。


 白衣を着たら仕事人です。理解していると思いますが、新人もベテランも、そこの病院で同じ白衣を着ていたら一緒なんです。病院を背負うこと、仕事に責任を持つこと、命の重みをもう一度振り返って考えてください。


 次は私が贈られたありがたい言葉について。

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