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看護の道  作者: 蒼龍 葵
三章 私が心掛けること
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「下を守れない上司はダメ」


 私の看護師15年人生の中で尊敬している上司がたった一人だけいます。

 その上司は身体を動かす仕事はそこそここなすが、パソコン業務になるとそこから動けない程遅い。お世辞にも仕事ができる上司ではなかった。正直スタッフがいない時にナースコールも出ないし、昼食前のケアや配膳も手伝ってくれないし、とにかく何もしない。行動もおっとりしているせいか遅くてスタッフの間では「歳とコネで所詮上がったお払い箱」と言われておりました。


 とは言え、その上司は当たり前ですが沢山の資格を持っており、何よりも私が尊敬できた部分はでかいミスをした部下を守る為に医者と対等に戦ったこと。


 『おじいちゃん医者』は頭でっかちなので、昔ながらの「看護師風情が何をいう」「お医者さまさまだろ」という考え方の人が殆どです。

 そんな中でも私達は患者を守る為にたまに居るアホな医者と戦わないといけません。


 医者は神ではないし、言うこと全てが正解ではありません。確かに長年の経験、症例もこなして知識も医者が上ですし、高い給料を貰っている分やることが多いのは当然。

 中にはしっかり患者に説明しなかったり、言ったつもり論や話がこじれて伝わりそこからクレームに繋がることも一度や二度ではありません。その尻拭いに追われるのが我々看護師なのです。


 そんな中、うちの後輩がとある患者家族に訴えてやると激怒された事件がありました。

 当時彼女はリーダーになって間もない年頃で、医者からの口頭伝達を復唱しないまま間違って伝えたのです。


 ダブルチェックはミスを防ぐ為に行うものですし、どこの病院でも100パーセント行うはず(やってないところはかなりヤバイ)

 しかしその時は雑談に花を咲かせていた後輩と医者でチェックをして済ませてしまい、スタッフとのダブルチェックが抜けたのです。

 結果、薬は倍量違いのものを投与し、あわや大惨事になりかけたところ。医者は「俺はこう言っただろう!」と怒鳴り散らし、彼女もダブルチェックを怠った事を散々別のスタッフに叱られました。

 ミスというものは人間、誰しもあるものです。みんなが彼女を責めるか無視する中で私の尊敬する上司はふんわり声で医者を宥め、声も出なくなっている後輩を別の部屋に連れて行き、30分程話しを聞いておりました。

 この上司はメンタルカウンセラーの資格も持っており、バーンアウトしかける若い後輩らの悩み相談に長けている人でした。私もなかなか難しい中年のおじさま患者と上手く合わなくて悩んでいた際にも助言をくれ、仲介に入ってくれたのてす。

 確かに一般の仕事は出来ない。でも、彼女はどんなに忙しくても必ず朝の病室を周り、患者一人一人を自分の目で確認し、異常の報告がない時は「なんか変わったことなかった?」と言う人だったのです。

 どうして彼女が看護師業務をしないのか。それは病院のシステム的なものが原因なのです。

 残念なことに、主任より上の立場になった看護師は事務仕事や教育がメインで、人員が少ない時しかナースコールやトイレ介助には入りません。このシステムはどう考えてもおかしいんですよ。だって同じゆうしかくしゃなんですよ。先にも述べた通り、患者から見たら「白衣を着ている人間は新人だろうが師長だろうと変わらない」はずなのです。

 私が東京に出て一番愕然としたのは「副師長に排泄介助させるなんて、ヘルパーは何やってんの!」と大声を出した師長です。

 

 ナイチンゲールは何をしていたかおぼえてますか?

 医学の発展に伴い、看護師としての基礎を忘れた残念な師長が増えないことを望みます。


 スタッフを守れない上司は要らない。私らはロボットではないのだから。


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