第7話
ロケットを開くと、そこには若い男女の肖像画が描かれていた。
若い男性は、栗色の髪に切れ長のエメラルドグリーンの瞳。背は高く、引き締まった体つきをしている。女性のほうは、色白の肌にぱっちりとした紺色の瞳。蜂蜜色の髪の毛は、ふんわりと肩から腰へと流れている。
二人は、このロケットと同じものを首にかけ、頭には小さな冠を載せていた。
「これは?」
マリッサが聞く。
「あなたたちのお父さまとお母さまですよ。あなたたちの目の色は、お父さま譲り、髪の色はお母さま譲りね。顔立ちは、二人ともお父さまとお母さまから少しずつ。でも性格は、アップルはお父さま似、マリッサはお母さま似かしら」
シルヴィアは、マリッサの手の中のロケットに手を伸ばし、その絵を優しくなぜた。
「このロケットと同じものを、二人が結婚した時に私からプレゼントしたのよ。この太陽と月の紋章は北の王家の紋章なの。二人にあげたロケットは、この紋章も、中の絵もまったく同じもの」
そう語るシルヴィアの目は昔を懐かしむように優しかった。
「まずは、南の王城に行って、南の王に会いなさい。南の王は、オリヴィアの弟にあたるオリヴィエ王。このロケットを見せれば大丈夫」
「もっと詳しく話してはくれないの?」
マリッサは、首をかしげる。
「今はこれだけ。色々な人に話を聞きなさい。いい話も悪い話もたくさんあるでしょう。それと、黒ずくめの集団には気をつけて。なるべく見つからないようにしなさい。王たちに名乗るときは、ソレイユとルナという名を名乗るようにね。あなたがたの旅が幸運と健康に恵まれますように。さあ、もう行きなさい」
シルヴィアは、言いたいことを言うと一歩後ろへと下がった。
アップルとマリッサは、馬に乗って、出発した。時々振り向く二人を、シルヴィアは、二人が見えなくなるまで見送っていた。