第6話
翌朝、二人はシルヴィアに起こされて目が覚めた。
三人は、いつもどおりの朝食の並ぶ食卓を囲んだ。誰も旅の話はしなかった。みんな黙々とパンを食べ続ける。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。
「そろそろ行こうか」
アップルが言う。
誰かが言わなくてはいけないことなんだ。そう解っていても、マリッサはアップルのことを恨めしげに見つめた。
アップルの旅支度は簡単だった。着替えの入った袋を馬の背に垂らす。鼻息の荒い黒に近い焦げ茶色のこの馬は、アップルのお気に入り。子馬のころから一緒にいる。今度の危険な旅にも、一緒に行かないなんて考えられなかった。
マリッサの馬は淡いグレー。名前はジル。すらりとした美しい外見のわりに、スタミナのある馬である。
マリッサは、ジルの背中にアップルの倍ほども荷物を載せる。
「荷物は少なめにって言われただろ」
アップルが呆れたように言う。マリッサは、ふんっと鼻をならす。
「半分は、薬草だもん。必需品でしょ!」
よく見れば、袋からぷつぷつと緑色のとげのようなものが飛び出ている。
「まあまあ、旅にでる前から喧嘩していては上手く行くはずもないわ」
シルヴィアがなだめながら、二人に二つずつ袋を渡す。
「これには食べ物が。こっちにはお金と手紙が入っています絶対になくさないこと。」
そして、二人の首に小さなロケットのついたペンダントをかける。ロケットには、太陽と月が複雑に組み合った美しい紋章が彫刻されていた。