第35話
どれくらい角を曲がっただろうか。
3人が更紗に連れていかれたのは、城の奥。
庭に面した小さな部屋。
そこに、女王はいた。
白髪のその髪は、長く背にたらされている。
白髪でありながら、その顔立ちはすっきりと美しい。
藤色の着物がよく似合う。
「お連れいたしました」
更紗がお辞儀をする。
「あなたが美月の子ですか?」
女王は、不躾なほどにヴィーの顔立ちを見つめる。
「は、はい。
初めまして、おばあさま」
ヴィーの声がうわずっている。
「そう・・・」
女王は、アップルとマリッサに目をやる。
「失礼。
北の国のソレイユ王子とルナ王女ですね。
ようこそ東の国へ。
私が東の国の女王 美香です」
アップルとマリッサもあわてて挨拶をする。
ヴィーは、チラッチラッと女王のほうを盗み見ている。
気になってしょうがないのだろう。
「長旅でお疲れでしょう。
湯浴みなどなさって、そのあとお食事でも共にいたしましょう。
私は、仕事がありますので、失礼します」
それだけ言うと、女王はさっさと出て行ってしまった。
3人は顔を見合わせる。
「もう少し、感動のご対面になるのかと思ったのだけど・・・」
マリッサがポツリともらす。
ヴィーは泣きそうになっている。
「美香さまは・・・女王陛下は・・・照れていらっしゃるんだと思います・・・」
「はあっ?!」
更紗の言葉にヴィーが声をあげる。
「あれは・・・初めて会って、嬉しすぎて泣きそうなのを隠したかったのでは・・・
実際、ヴィーさまから声をかけていらっしゃいましたし・・・」
考え考え絞り出すように言われたその言葉は、ヴィーには意外すぎる。
「まさかヴィーの涙腺の弱いのって、おばあさま似??」
アップルとマリッサの頭の中にはそんな考えが浮かんで消えなくなってしまった。