第34話
地下道を抜けて、3人は息をのんだ。
東の国の城は、南の国とはまったく違う。
南の国の城は、白い壁と赤いレンガ。
美しい塔が目立つ。
それに対して、東の国の城は平屋で滑らかな白木で出来ていた。
目の前には、門がそびえる。
門のところに幾人かの兵が立っていた。
「全然違うね〜」
ヴィーが、きょろきょろしながら嬉しそうに叫ぶ。
更紗は、きょとんとする。
「そうですの?」
アップルが、ヴィーをたしなめる。
「いくらなんでも、きょろきょろしすぎだろ。
確かに東の国は、南の国とは城も街も全然違うけど。
山脈を挟んでいるだけでこんなにも文化が違うなんて、面白いね」
アップルは、更紗に笑いかける。
更紗が、真っ赤になる。
「私、東の国から出たことがないんです。
今回、みなさんをお迎えに行ったのが、今までで一番の長旅でした」
更紗は、アップルからさっと目をそらして言う。
更紗は、3人を城の奥へといざなった。
白木の廊下からは、美しい庭が見える。
池には木の橋がかかっていて、赤や黒、金色の大きな魚が動いている。
松や躑躅が美しい。
地面には、玉砂利が敷いてある。
吹いてくる風が、心地よい。
「母さまも、この景色を見ていらっしゃったのかあ」
ヴィーは、立ち止まって庭を眺め、深呼吸する。
「よくあそこの橋の上で、鯉にえさをおやりになっていたそうですよ」
そんな更紗の言葉に、ヴィーは赤い橋を見つめる。
見つめていると、そこに幼いころの母 美月が立っている姿が目に浮かぶような気がした。
ヴィーは、いつまでもその橋を見つめていたい気持ちを振り切って、先に進んでいく更紗たちの後を追った。