第33話
沈みこんだ雰囲気の中、更紗が口を開いた。
「あの・・・言いにくいのですが・・・」
「そっかあ、いないんだ・・・」
ヴィーは、がっかりした顔をする。
「いえ、すぐ隣りにいらっしゃいます」
「え、僕がこのお城に来たから?」
「というか、お城に来る前からずっと、時々側にいらっしゃいましたよ。もっとも、城に来られて霊力が高まられているのか、より一層くっきりしてますけど」
ヴィーは左右を見回すけれども、ヴィーの目には何も映らない。
「いないよ!」
悲痛な叫びが地下道にこだまする。
「御霊が見えるかどうかは、霊力に左右されますから・・・」
更紗は、気の毒そうに話す。
「そっかあ・・・。
でも、見えなくても、母さまは僕を見守っているんだよね?
ずっと、側にいてくれてたんだよね?」
ヴィーは、無理矢理明るい顔を作る。
「僕が落ち込んでいたら、母さまが心配しちゃうし。
さあ、行こう!!」
笑顔で進もうとするヴィーは、なんだか空元気という感じがして、痛々しい。
アップルとマリッサは、そんなヴィーを心配そうに見た。
更紗は、ヴィーを気にすることなく、前に向かってすたすた歩き出した。
「お城には、美月さまの暮らされていた部屋なんかも、残されていますわ。
ヴィーさまが来られたら、皆さま、お喜びになります」
ヴィーは、そんな更紗にほっとした様子で再び歩き出す。
地下道の終わりは、すぐそこだった。