第27話
4人は肩をすくめると、居間へと入って行った。
居間に入って行くと、いつのまにか暖炉に火が入っている。
驚きはするものの、さきほどの水といい、この火といい、恐らくあの老婆は魔法使いなのだろうと見当をつける。
それぞれ、手近なところにあったソファに腰を下ろす。
春とはいえ、山の上は寒い。
暖炉の中でぱちぱちと燃える炎は、まるで踊っているようである。
勢いよく燃えている火のおかげか、4人の服は、みるみるうちに乾いてしまう。
「魔法が使えるんだったら、コーヒーも魔法で出しちゃえばいいのにね」
ヴィーがつぶやく。
「それじゃあ、楽しくないじゃないか」
突然、台所に通じるドアから老婆があらわれた。
ヴィーは、びくっとする。
「なんでも、魔法でやれば、楽かもしれないが、楽なのと楽しいのとは違うのさ」
そう言うと、老婆は手に持っていた大きなお盆をテーブルに置いた。
お盆の上には、この部屋と同じように、所狭しとカップやら皿やらが並べられている。
カップの中には湯気の立っているコーヒーが並々とつがれている。
お皿の上には、クッキー、ケーキ、サンドイッチ、チョコレート、冷製チキンなどが、これまた所狭しと並んでいる。
「まあ、ご馳走ですのね。これ、全部、おばさまがお作りになったんですか?」
更紗は嬉しそうに手をあわせる。
「ああ。料理することも、食べることも大好きなもんでね」
老婆は、にいーっと笑う。
「さあてと、まずはゆっくり食べるといいよ」
4人は、喜んでご馳走になることにした。