第21話
森の中を進んでいくと、何箇所か分かれ道がある。
三人は、とりあえず、川沿いの道を進んでみることにする。
分かれ道に行き当たるたびに、とりあえず川に沿っているほうを選んで、進み続ける。
しかし、いくら行っても、森は開けない。
「道、間違えたんじゃないの?」
ヴィーが言う。
「でも、川が流れ込む湖に王城はあるんだろう?川沿いを通って行けば、着くんじゃないのか?」
アップルも、困ったように空をあおぐ。
しかし、三人の前に現れたのは、行き止まりだった。
もう夕闇も迫っている。
「今日は、ここで野宿するしかないわよ」
マリッサがつぶやく。
周囲には村はもちろん民家らしきものもない。
仕方なく三人は、枯れ木を集めてきて火を起こした。
火を囲んで夕飯を食べていると、急に強い風が吹いた。
「な、なに?」
マリッサが思わず立ち上がる。
その時、火の横に、一人の女の子が立っていた。
「だ、だれ?」
急に現れた少女に、三人は驚きを隠せない。
「私は、更紗と申します」
黒髪の少女が答える。
「東の国の巫女姫さまの先見によりまして、みなさまが来られることがわかりました。そこで、女王である美春さまが私を皆さまの道案内にとおつかわしになられたのでございます」
長い黒髪を後ろに垂らした少女は、どことなく肖像画でみた美月に似ている。
「どうやって、現れたの?」
マリッサでなくても、聞きたくなる質問である。
「美春さまが、風に乗せてくださいなした」
「風に?」
マリッサは目を見開いた。
マリッサも、シルヴィアから様々な魔法を教わっていたが、風の魔法を自分の目で見るのは初めてである。
「じゃあ、その風の魔法で、僕たちのことを王城まで連れて行ってよ」
ヴィーが言う。
「それは無理です。私には、風の魔法は使えませんし、美春さまは、皆様には旅が必要であるとおっしゃられました。私は、ただ案内をせよと」
ヴィーは、がっくりと頭を垂れて叫んだ。
「今日はベッドで寝れるかもと思ったのに、おばあさまの意地悪〜」