第20話
トンネルの中は暗闇であった。細いトンネルの壁際にところどころ灯された明かりをたよりに馬を引きながら進んでいく。
「もっと明るくすればいいのに。これじゃあ、少しずつしか進めないじゃない」
ヴィーが不満をいう。
「あんまり広くて明るかったら、攻め込みやすくなるだろう?いくら友好国であるとは言っても、国境があんまりすんなり通れてしまったら危ないよ」
アップルが相手をする。
それにしても、長いトンネルである。暗い細いトンネルは延々と続く。
「でも、この長さはさすがに辛いわね、ジルが怯えているわ。だいたい、閉所恐怖症の人は旅できないじゃない」
オリヴィアも、苦笑する。
トンネルの中の空気は、どこか濁ったようで、息が苦しい。
どれほど歩いただろうか。
遠くの方に、白い光が見えてきた。
ヴィーは、駆け出した。
「わあ・・・」
トンネルを抜けると、その向こうに巨大な峡谷があった。
東の国だ。
深い森。深い谷には川が流れている。
「ほら、この川の先にある湖に、東の国の王城がある」
アップルが、川の流れの先を指差す。
ヴィーはというと、久々の新鮮な空気を吸うのに忙しくてアップルの話を聞いていない。
オリヴィアが、ぷっと吹き出す。
「アップル、ヴィーなら目をつぶって深呼吸するのに忙しいから、聞いてもいないし、見てもいないわよ」
アップルは苦笑いする。
三人は、深い森の中を進んでいく。