表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

第1話

15年前までは、この大陸は四つに分かれていた。

それぞれの国は、険しい山々が連なる山脈によって分けられていた。

それぞれの国の間には長い長いトンネルがあり、それぞれ独自の文化を発展させていた。文化が異なる国々…と聞くと、戦争が絶えないように思える。しかし、これらの国々の王家の間では、永きに渡る有効関係が持続し、王家の誰もが四つの国のすべての血を多かれ少なかれ引いているというふうであった。


15年前、北の国の王家が消えた。北の国は闇におおわれ、国境にあったトンネルは固くとざされた。北の国に住む親戚の消息を知りたいと、残された王家も貴族も庶民もみな北の国を探った。しかし、何もわからなかった。ただ、北の国の王家の人々がみな行方不明であるという知らせだけがもたらされた。


それから15年。北の国の消息は何も伝わってこないままである。



そしてここは南の国。その片田舎の村のそのはずれである。巨大な岩山にくっつくようにして建てられた小さな家。周囲は高い生け垣に囲まれて、目立たない佇まいである。

ここは、高名な魔女 シルヴィア・ダージリンの邸宅である。一見、高名な魔女には似つかわしくないように見えるが、実は岩山の洞窟にも数多くの部屋が存在し、中は意外と広いのである。

高名な魔女の住まいというと、落ち着いたミステリアスな雰囲気を想像しそうだが、そのような雰囲気は欠片もない。


小さな片田舎の農家。そんな佇まいである。なんといっても、ミステリアスをなくしているのは庭から聞こえてくる子供たちの笑い声である。林檎もぎをしている子供たちは、明るく輝いてある。


よく似たエメラルドグリーンの瞳にきらきらした蜂蜜色の柔らかそうな髪が波打っている。違うのは髪の長さだけ。男の子の髪が首筋あたりで無造作に切られているのに対して、女の子の髪は腰のあたりまで垂れている。二人とも、華美ではないものの、こざっぱりとした服を着ている。


二人から少し離れた庭先のベンチには、ゆったりとしたドレスを着たふくよかな女性が座っている。この人こそが魔女シルヴィア・ダージリンである。

そして、シルヴィアが見守るこの二人こそが15年前に川に流されていた赤ん坊たちであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ