第18話
次の朝、二人が食堂の間に行くと、ぶすっとしながらパンをもそもそ食べているヴィーがいた。
隣りに座っているオリヴィエ王は、それとは対称的に晴れやかな顔である。
二人が席につくと、ミアが二人のカップにコーヒーを注いだ。
マリッサは、そのコーヒーにホットミルクをたっぷり注ぐと、フーフーしながら口をつけた。
アップルは、ブラックのまま、何も言わずにコーヒーの香りを楽しんでいる。
「ルナ王女は、やはりオリヴィアにそっくりだ。オリヴィアも、猫舌のくせにホットミルクたっぷりのコーヒーが大好きでねえ」
オリヴィエ王はご機嫌である。そんな父親を見たヴィーは、ますますぶすーっとなって、口も聞かない。王は、少し真剣な顔になった。
「次は東の国に行くとよかろう。東の国の王城は、ここから比較的近い。それに、ヴィーの母ミヅキの出身地でもあるからね。ただ、東の国も西の国も、北の国に近いぶん、この国ほど安全ではない。闇の集団には気をつけて、慎重に行動しなさい」
そう言うとアップルに白水晶を渡す。そして、マリッサに、白水晶のついた指輪を渡した。
「これは、オリヴィアのもので、南の国の紋章が彫られている。言ってみれば南の国からの身元保証みたいなものかな。みんな気をつけて行くんだよ」
そして、ヴィーに何か言うわけでもなく、また会議に行ってしまった。
ヴィーは、ご機嫌斜めである。
「オリヴィエさまも、ヴィーさまを愛すればこそ、厳しくなさるのですよ」
見かねたミアがとりなす。
「父上は、僕が邪魔なんだ…」
ヴィーがいじけだす。
「とにかく、時間だ」
アップルは、さっさと立ち上がる。しぶしぶヴィーも付いてきた。
城を出てから、三人が振り返ると、塔の上にオリヴィエ王らしき人影が見えた。
ヴィーは、大きく手をふり、父親に別れを告げた。